第5話

scene5 クロワッサンサンド


カフェ神楽坂のアルバイトは朝8時からと、お昼から夕方まで。

授業のある日や時間は、もちろん授業優先にしてもらっています。


朝のアルバイトも、アルバイトとは名ばかり。

お店の掃除を少ししたら、賄いという名前の朝ごはんを食べさせてもらっているだけなんです。


カランカラン


今朝も店内へ。


「おはようございまーす」


「瑠璃ちゃん、おはよー」


二礼二拍手一礼

店奥の神棚にもご挨拶をしてカウンターの中へ。

ナナさんが用意した朝食をテーブルに並べます。


「はい、瑠璃ちゃん。座ってー」

「先生もご飯だよー」


お客さんが来る前に。

先生とナナさん、私の朝ごはんです。

先生とナナさんはブラックコーヒー。

酸味のある、大人味のコーヒーです。

私は同量のミルクで割ってガムシロを入れたお子さま仕様のカフェオレ。


クロワッサンサンド、ゆで卵、サラダ


今朝はクロワッサンサンドのリーフサラダ添え。

オレンジとイチゴのカットフルーツも付いています。

横半分にスライスされたクロワッサンが2個。

メインはスモークサーモンと生ハムの2種。

クロワッサンの上にサニーレタス。その上にはスライスしたレッドオニオン、スモークサーモン(生ハム)、スライスアボカド、スライスグレープフルーツ。粒胡椒と岩塩がアクセント。

ヴァージンオリーブオイルも少々。

スモークサーモンにも、生ハムにも、グレープフルーツの甘さと苦みがクロワッサンサンドの全体をマイルドにしています。

今日も素敵でおいしいモーニングです。


「ナナさん、今朝も最高のモーニングです!」


またまた宣言した私です。


「ありがとねー」


ナナさんが和かに応えます。



先生が尋ねます。


「瑠璃子君、どうだい?お店には慣れたかい?」


「はい、ナナさんのご飯はとってもおいしいし、お店のお仕事も楽しいですし、なんだか申し訳ないくらいです」


ナナさんも尋ねます。


「瑠璃ちゃん、学校は慣れた?」


「はい。慣れてきましたけど、私口下手なので、まだともだちができなくて」


「えー!瑠璃ちゃん口下手なんだ!でも、たしかにちょっと緊張しやすいのかな」


冗談っぽくナナさんが笑いますが、やっぱり初対面の人には緊張しちゃうんですよね。


「まぁ、焦らなくてもいいわよ」

「すぐに友だちもできるだろうし」


「はい」


いつのまにかカフェ神楽坂で朝食を食べて学校に行くのが、習慣になっているのでした。

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