第3話

scene3 ランチはシチュー


「今日の日替りランチはホワイトシチューだけど、いい?」


「はい、お願いします」


「はーい、パンとご飯どっち?」


「パンでお願いします」


「じゃあ、ちょっと待っててね」


厨房とカウンター越しの会話です。

しばらくして。


「お待ちどうさま」


シックな塗りのお敷きに載ってランチが到着しました。


ホワイトシチュー、サラダ、バターが添えられたロールパン


ホワイトシチューは、見た目からも分かるゴロゴロ具材です。

白磁の深鉢もお洒落。


ハフハフー、フーフー


熱々のシチューにスプーンを挿れます。

ゴロゴロの大ぶりな野菜は、さつまいも、じゃがいも、にんじん、かぼちゃにブロッコリー。

根菜類には皮もついたままです。

ベースの白いシチューに、野菜の赤や緑が色鮮やか。

大ぶりなのは野菜だけじゃなく。

角切りベーコンや繊維に沿って解れる鶏肉もゴロゴロ。

どれも食べ応えのある大きさ。

やさしいクリーミーな甘さも私好みです。


とってもお腹が空いていたのを差し引いても、びっくり。

すごく美味しい!


焼き直しされた温かなロールパンとも相性抜群です。

炭水化物はカロリーが高いんだけど、これは白ご飯のお供でも良かったのかも。


「このシチュー、とっても美味しいです!」


思わず、お店の人に美味しいですって言ってしまう私。

私、初対面の人には口下手なのに。


「ありがとう。お世辞でも嬉しいわ」


「そんな。お世辞じゃなくって。こんなにおいしいシチュー、生まれて初めて食べました!」


思わず力説気味に言った私。


「・・・はい・・・ホントにおいしかったんです・・・」


自分自身の勢いの良さに、とたんになんだか恥ずかしくなってしまうのでした。


「まぁ」


コロコロと笑う女性。


「うちのシチューは、女性でもたくさん食べられるように、豆乳でカロリーを抑えてあるのよ。

鶏ガラからブイヨンを引いてるから、意外にコクもあるでしょ。

野菜とか具材も大きいから、食べ応えもあるでしょ」


「はい!」


おいしくて、なんだか幸せな気持ちになれるシチューです。

ほんとうにおいしいなぁと、じっくりと味わいながらスプーンを運んでいると。


カランカラン


扉の鈴が鳴りました。


「いらっしゃーい!って先生!お帰り〜」


「ただいま」


扉を開けて入ってきたのは、スーツに着替えたものの、あの白衣の先生でした。

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