第2話

scene2 カフェ神楽坂


八雲先生との初めての出会い。

とはいっても。

志望大学への入学式に浮かれるわたしは、そのときのこともすぐに忘れてしまったんですけどね。


入学式が終わったあと。


神楽坂から、最寄りの路線を目指します。


神楽坂


大学からも近いんですが、ここはレトロな雰囲気と迷路のような細道が好きな町なんです。

上京してまだ日の浅い私は、都会的な町には気後れしがちなんです。

ハイセンスな町よりもレトロな雰囲気が漂う町がしっくりと合うようで。

大学への行き帰りに、この神楽坂を歩くのを楽しみにしていました。


坂道から一方奥に入ると、入り組んだ先にさらに町があったり、細い路地の先には緑豊かな神社があったりと、見飽きないんですよね。

どこか江戸情緒っていうか、落ち着ける懐かしい雰囲気が良いんですよねー。


仕送りも心許ないから、この神楽坂で何かアルバイトでもしたいなぁと思いつつ、今日もはじめて歩く小さな路地。


すると。


ちょっと素敵な雰囲気のカフェを見つけました。

隠れ家カフェって名前がぴったりとくる感じです。


カフェ 神楽坂


お店は木と煉瓦から成るシックな外観がお似合いのカフェ。

かといって、なんだか可愛くもあります。

シックで可愛くって。

落ち着いた雰囲気もあるんです。


あゝついに見つけた!


なぜかそんな気持ちになった私です。


カランカラン


扉につけられたレトロなドアベルが鳴ります。

店内も落ち着いた内装。

ステンドグラスに春の日差しが柔らかく映ります。

お店はこじんまりとした広さ。

カフェなのに、なぜかちゃんとした神棚もありました。


「いらっしゃーい」


「お好きな席にどーぞー」


カウンターの奥に見える厨房から、美人さんが迎えてくれました。

思わず見惚れるような美人さんです。

カウンターのいちばん端に座ったわたしに、彼女が和やかに言いました。


「あら、南都大学の学生さんね」


入学式にもらった大学やサークルのリーフレット類を携えていたわたしを見て、美人さんがいいました。


「はい、今日入学式でした」


「おめでとう。今日から晴れて大学生ね」


「はい」


思わず笑みがこぼれる私。


「で、新人大学生さん、何にする?お茶?それともランチ?」


「えーっと、ランチをお願いします」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る