エルシィの感想その9
「本当にすいませんでした」
宿のベッドに腰掛け、寝起きで賢者モードのエルシィが深々と頭を下げるよ。
お日様の光を吸ったような長い髪が、頭の動きに連動してサラサラ流れるよ。
「まあ……お酒は節度を守って……と言いたいトコだけど、あんな少量であそこまで暴走されるとどうしようもないね」
「はい……」
先にも言ったけど、アルコール代謝の強さは両親からの遺伝に依存する。
……とは言え、それは地球人基準の話なんだけど。
って話をして見たら、
「そこはエルダーエルフ……というか、この世界の五種族みんな同じですよ」
やっぱり、そうなんだ。
ちなみに親の片方が酒に強く、もう片方が弱い場合は、その中間の耐性の子が生まれるんだっけな。
ってことを考えてて思い出した。
彼女と出会ってほぼ最初に言われたこと。
「キミとボクで子供作ったら、どうなるんだろうね。酒の強さ」
そこそこ付き合いが長くなった今でさえ、ちょっと無いわーって質問だけどね。これ。
このコ、同じ台詞をほぼ初対面でボクにぶつけたんだよ?
まあ、それには“人間族”と言うこの世でほぼ唯一のサンプルを保持するための目的があって。
他のヒト巻き込めないし、その場で超演算したら、ボクとデキ婚しても何とかなりそうって言ってたけど。
今思い返しても引くわー。
「レイさんは、そうしたいんですか?」
エルシィが、意外そうな顔で小首をかしげた。
そうしたい。
って答えたら……多分、この場で作る事になるんだろうね。
このコ、基本的にボクに反対しないし。
殺し合いとかには参加しないあたり、何でもかんでも賛成もしないけど。
けど、元々は何を計算ミスったか、彼女から持ちかけてきた話だ。
「わからないよ」
だから、正直に答えておく。
「はい。わたしも、今となっては……やめといたほうがいいと思います」
でも、と、またいたずらっぽく笑うよ。
「少し、前と返事がかわりましたね」
その笑みが、少し寂しそうに見えたけど。
まあ、ベロンベロンに酔ったあとだし、少し弱ってるのだろう。
うん。
ボクにヒトの親なんて無理だよ。
前にも言ったろう。
赦し方がわからない。
そんな親に育てられた子がどうなるか……考えるまでもない。
第一、この世界でも、もうボクにまともな人生なんて望めないんだし。
話は本題に戻って。
「でも、わたしの場合は極端すぎですけど……ダンジョンのポーション、恐ろしいですね」
ああ、ボクは滅多に潰れないし魔法使い1の解毒もあったから、体感しにくかったけど……エルシィは結果的に身をもって知ったみたいだね。
アンデッドのアレコレについては、もはや語る事もないのだろう。
そう言う世界なのだと、彼女も充分に理解している。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます