第8層

第22話 ポーションに蝕まれる戦士たち

 ボクが戦士1のパーティを選んだもうひとつの理由。

 攻略ペースがずば抜けて速い事だった。

 これも士気の高さにあるのだろう。

 恐らくは、仲間を喪い、ロレンツォへの憎悪が最高潮に達した時期から。

 7層までしか行けなかったボクに合わせて攻略し直すのだって、本当はもどかしく思っているはず。

 それくらいのハイペースで、置いていかれないようにするのがやっとだ。

 さて。

 そうは言ってもHPと言う現実的な問題がある。

 自然回復するとは言え、上層フロアではもはや、基本的に全快を維持しながら進まないとまずい。

 9割を切ったくらいでも、何かのアクシデントで次の犠牲者を出しかねないのだ。

 ジャイアント・ロード戦自体は危なげなく、無傷で済んだけど、それは一撃でも貰えば“物理死”しかねない相手だったから、逆に感覚が研ぎ澄まされていた結果だった。

 むしろ、そこに至るまでの雑魚戦で結構なHPを削られていた。

 その無理を通す秘訣とは?

 まあ……ぎんこうのバックパックに大量搭載された“ポーション”だよね。

 慣れって恐ろしいもので、みんな、水みたいにガブガブ飲んでるの。

 で、魔法使い1が、アルコールを魔法で解毒する。

 ……とは言っても、完全に消えるわけでは無いようだね。エルシィの解毒と違って、ね。

 ボクも体感的に、軽く酒が残っている感じがしている。

 アルコール代謝は両親からの遺伝に左右される。

 幸い、ボクのそれは一番強い部類なのだろうが、それでもウォッカのショットグラス一気飲みを強いられ続けると綻びも出てくる。

 で、戦士1たちの言動も少しずつ雑に、乱暴になっていってるのがわかる。

 ロレンツォ憎しの気持ちと連帯感が相乗効果を起こしているのもあるだろうね。

 流石に、悪くともほろ酔い状態はキープされている。

 身に染みた死闘のセンスが現実的に鈍る事はほとんど無いようだ。

 だが、恐らくボクだけだろうが、ジリ貧を感じている。

 この調子だと、戦士1たちは今日、最上階まで一気に駆け上がるつもりだろう。

 最低限の統率が、そこまで保てば良いのだが。

 

 策はもう考えてある。

 ロレンツォだけであれば、恐らくボク一人で殺せる。

 とにかく、たどり着く事に専念しよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る