エルシィの感想? その8
某ワーキャットの都市。市場の食品エリアにて。
ホールチーズだとか、壺いっぱいの蜂蜜だとか、吊り下げられたソーセージだとか。漫画のような世界で、目にも美味しい光景だね。
ここの薄く伸ばしたカツレツのサンドイッチは名物グルメだと聞いて、お昼ご飯がてら立ち寄った。
ワーキャットの肉料理は全体的に美味しい。
猫=お魚って、それしかない土地で根付いた偏見だからね。本来の彼らは肉が好きなの。
「でありますからぁ、おそらく、巨人みたいなおっきなのを、テレポートさせてるとなるとぉ、マヌエル法を採用してぇ」
呂律の回らない調子で講釈を垂れるエルシィ。
その側には、エールが一杯。日本人の感覚からしたらかなりの大ジョッキだけど、それにしたって半分も減ってない。
たったこれだけで、ご覧の有り様だよ。弱すぎるだろ。
「レイさんの話を聞く限り、バーンズ効果の応用もされていて、あとはおそらく、超マテリアル的なマゼンタベクトルがぐしゃぐしゃーってなってぇ、ずどーん! いーっひっひっひっ! 今の! 今の! 悪い魔女っぽくなってましたぁ? ねぇねぇ!」
最悪だ。
なまじアタマの良い奴が出来上がると、これが面倒なんだよ。
こちらの理解が及ばないインテリ談義と、アタマの悪いたわごとが奇跡のコラボレーションを果たすんだ。
うーん。
「ちょっとぉ、レイさーん? ちゃんと聞いてますぅ? なんか、上の空っぽいですけど! しつれーじゃないですかぁ、せっかくわたしが不慣れなりに説明してるのにぃ! ぷんすこぷんすこ!」
もう絶対、彼女には一滴たりとも飲ませまい。
ボクは固く誓った。
ああ、エルシィがボクにエリクサー飲ませたくない気持ちも、これに近いのかな。
「エルシィ、悪いことは言わない。すぐ魔法でアルコールを解毒しな」
「げどくぅ? なにそれ、おいしーんですか?」
ウソつけ、絶対知ってるだろ。
あのダンジョンでボクが組んでいた魔法使い1ですら、それやってたからね。HPを瞬時に回復させる唯一の手段が、ポーションと銘打たれたドギツい蒸留酒なんだから。
と言うかそもそもだけど、エリクサーにはショック死しかねないほどの副作用もあって、ボクがそれに見舞われた時にちょちょいのちょいで解毒したのを見ているからね。
で、まあ。
テーブルに突っ伏して、すやすや寝ちゃったよ。
はぁ……とりあえず背負って、適当な宿を取るか。
何か背中越しに、安らかな寝息と無秩序な寝言が聞こえるよ。
……隠し事とか、ポロリしてくれないか少し期待したけど、結局、わけわからんひけらかしが優先されてしまったか。
第7層の話はまだ、特筆事項は無かったから別に良いか。
彼女の記憶力なら、泥酔してても覚えてるだろうし。
それか「素面で生の話を聞きたいからもう一度」ってアンコールされるのかな。
うわー、めんどくせー。
いずれにせよ、第8層の話は大事な所だから、素面で聞いてもらうよ。
と言うか、頼むからもう絶対に飲まないでくれ。
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