第4層

第13話 死にたい

 食欲不振。

 真っ黒な血便。恐らく、腸の上の方か胃のあたりで出血・酸化したのが混ざってる。

 暑くもないのに汗が止まらない。むしろ、寒気も止まらない。

 常に吐き気が止まらない。

 一番ショックだったのは……右後頭部に、10円玉くらいの円形脱毛症が出来ていた事。

 拠点の病院での診断結果は以下の通り。

 胃潰瘍と、自律神経失調症。いずれも、心因性。

 ……。

 これさ。たった数日のことだよ?

 思考が魔法として実体化するこの世界。

 こうした心因性の病気って、即、身体に現れるものみたい。

 回復魔法よろしく、魔法思考が、一瞬にしてこれらの症状を運んできてしまうんだよ。

 

 とにかく、病状自体は処方されたポーションと、ボクの回復魔法【緩慢な治癒】で進行を遅らせる事にする。

 で、ストレス因子が何なのかって……。

 言うまでもないよね。

 “仕事”が原因だよ、ガッデム!

 まずリーザ。

 あからさまに、ボクとの関係の進展が無いならまた、風呂場で男漁って身体売っちゃうよー? それでいいの? ねえ、そんなことないよね!? みたいな構ってちゃんモードで寄ってくる!

 これに関しては、内心で奴に対してムカついてる感情を、さも自分の気持ちを信じてもらえない事への怒りのようにカモフラージュして乗り切ったさ!

 で、ナターリアさんからは、一緒にお店やる具体的なプランを詰めていきませんか? ねえ、ねえ! 実はこーいう話を見つけてきて、うんたらかんたら。 

 と、しつこく迫られる。

 カリスはまあ、あれから特に何かアクションがあったわけではない。

 けど、居るだけ何かこう、プレッシャー感じるんだよ!

 これについては、関係性上、仕方がないんだけどさ。


 これくらいは覚悟していた。

 地球における詐欺の、どの仕事よりもメンタル的に過酷なものであろう事は……。

 それにしても、あんまりだ。

 唯一救いなのは、アルフ含めたこいつら同士の横繋がりが思ったより希薄なため、ハーレム維持はすこぶるやりやすい点。

 複数の女の子とダブルブッキングになっちゃって“修羅場イベント”……ってリスクが無いので、多分、辛うじて成立してるのだろう。

 ボクとしては助かるんだけど……どういう事なんだろうね?

 年数もわからないけど、奴らの話しぶりを見てると、そこそこ長い付き合いの運命共同体であるはず。

 

 とにかく、この世界におけるメンタルヘルスが地球以上に大事なのは身をもって知らされた。

 冗談抜きで、何とかしないとボクは死んでしまうよ。

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