エルシィの感想その3
エルシィは一言たりとも喋らない。
ボクと目を合わせようともしない。
けど、食事はいつも通りボクの分も用意されていたので、何のわだかりもなく、遠慮なく頂くよ。
こんな態度の奴から出された食事なんて、気分悪くて食欲もでないしさ、本当なら突っぱねてやりたいけど……じゃあどこで外食するよ? って話。
この世界、食べログだとか、あーいうの無いし。
うまい・まずい以前に、安全性すらわかったものではない。
やっぱり、知力:146の器用:115が作る料理は味も安全性も確かなわけで。そこは認めざるを得ない。
これが、感情に左右されずに実を取る、大人の態度ってやつだよ。
モッツァレラみたいなチーズを練り込んだハード系パンと、ポトフみたいな具だくさんスープ、そしてザワークラウトみたいな酢漬けキャベツだった。
ポトフのソーセージもこれ、太い腸詰めに粗びき肉がぎっちり詰まった自家製だ。
全部、ノーブル・ビレッジの実家で作り置き保存してあるのだろうか。
はじめこそ、エルシィの料理……と言うかこの世界の料理には不馴れだった。
あのダンジョン内の酒場でも、意外とそこそこ以上のものは出てきたけど……やっぱ、現代日本人の感覚からしたら、突拍子もない味のものも少なくなかった。
ボクにとって不味いものでも、この世界のヒト達にとっては普通なんだよね。
そして、ボクの方に好き嫌いばかりと言う烙印が一方的に押される、と。
で、エルシィの料理も、何かわけわからんハーブの風味が最初は苦手だった。
しかし、回数を重ねるごとに、癖が無くなっていくのがわかった。
ボクが慣れたのではない。
明らかにエルシィの方が、毎回、匙加減を変えているのだ。
そして最近、特にエルシィの料理がボクの味覚に擦り合わされているのを感じる。
旅の間に少しはステータスも成長してるのかな?
ボクは、ほとんど文句を言っていない。
これは誓って本当だよ。疑わないでくれ。
だけど、雑多な一言コメントを全部拾って、多分ボク本人ですら自覚していない領域まで超演算してるんだろうね。
冷戦状態の今も、その味に変わりは無かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます