続3話 雪代と杏子の人生ゲーム


 杏子の家の倉庫部屋を片付けていたらテーブルゲームが出て来た。


 この家の倉庫部屋には、買ったまま放置されている物が沢山あって、多分その中の1つだと思うんだけど。


「人生ゲーム?」


 何と出て来たのは人生ゲームだった。


「なんか……ボードゲームが出てきたんだけど?」


「ホントだ―なつかしいじゃん?っておたるんやったことあるの?」


「え?無いけど?」


 そもそもうちにはゲームが無かったし、友達もいなかったのでやったことも見たことも無かった。


「じゃやってみる?」


「……うん」


 ボードゲームって広げると結構場所を取る。


「ええ?これって、このゲームってこんなに大きいの?」


「ちょっと、二人で何してんの?え?ゲーム?」


 雪ちゃんが来たので、雪ちゃんもゲームに参加する事になった。


「雪ちゃんはやった事あるの?」


「少しだけ、昔……あるかも」


 じゃんけんの結果、順番は杏子、雪ちゃん、僕の順番になった。


 どうやらこのゲームは車を運転するゲームみたいだ。あれ?杏子と雪ちゃんは自分の車に人を乗せないで始めたよ?無人運転大丈夫?


 最初に5000円配って始めるみたい。え?自動車保険はいらない?自動運転で運転しないから?そうなんだ?


 ということで保険は不要で始まった。次は職業を決めるらしい。


 僕は堅実にビジネスマンかなぁ?雪ちゃんと杏子は違うコースを選んだようだ。


 杏子がルーレットを回して駒を進めると、医者のマスに止まった。でも杏子は医者を選択しなかった。給料いいのに?やっぱりあのトラウマが原因かな?


 雪ちゃんの番で駒を進めると、お嫁さんのマスに止まった。え?そんな職業あったの?お嫁さんには給料出ないよ?


 雪ちゃんは自分の駒を捨てて、僕の駒にピンクのピンを刺した。


 え?どういう事?雪ちゃんの駒消えたんだけど?まだ僕結婚してないのに一人増えちゃったよ?


「私はおたくんのお嫁さんになったからよろしくね?」


「あ、ゆきよんずるい!」


「だって私の職業はお嫁さんだもん」


 次は僕の番で、ビジネスマンのカードを引いて堅実に給料を貰った。


 杏子はまだ就職していない。杏子の番で駒を進めると、まだ就職していないのに給料日になってしまった。えっとこういう場合はどうするの?え?フリーター?

 フリーターはアルバイトか、お小遣いなのか、給料は少なかった。杏子の給料は2が出たので2000円だけだった。医者なら良かったのにまぁ仕方ないか……。


 次は雪ちゃんの番だけど、雪ちゃんの駒は既に無くなっている。僕の駒に雪ちゃんが乗っているから、当然雪ちゃんが進めるのは僕の駒になる。本当にそれで合ってるの?


 雪ちゃんが止まったのは、声優さんに認められ20000円もらうだった。


「やった20000円下さい」


 えっと、なんで僕の駒で雪ちゃんがお金を貰うのかな?僕の分は?


 ……無いらしい。半分くらい分けてよ?


 僕の番だけど雪ちゃんが進めちゃったから、杏子に回した。僕は進めないの?


 杏子が次に止まったのは結婚マスだった。


 杏子も結婚しちゃうのか……と寂しく思っていたら、杏子は自分の駒を捨てて僕の駒にピンクのピンを一つ追加した。


 え?杏子の駒も消えちゃったよ?僕の駒に乗せちゃったよ?


「私が結婚するのは、おたるんだけだから」


「うん、嬉しいよ?」


 嬉しいけど合ってるの?これ?


 僕の駒には雪ちゃんと、杏子が乗っている。


 次は雪ちゃんの番で駒を進めると結婚マスで止まった。


「もう結婚してるからいいよね?」


「そうだね?」


 それは、僕の駒だからね?


 家を買えるみたいなので3人でお金を出し合って一番大きい家を買った。お金が足りなかったから借金したよ?


 次は僕の番だ。ルーレットを回す手に緊張が走る。


「頑張って稼いでね?あなた」

「お兄ちゃん、頑張って稼ぐんだよ?」


 雪ちゃんと杏子の応援が緊張感を高めてくれる。

 借金を背負った僕は責任重大だ。


 僕が駒を進めると止まったマスは……。


 欲しい物をいっぱい買った。散財して50000円払うだった。


「あなた、あれほど無駄遣いはダメって言ったのに……いったい何を買ったの?」


「ごめんなさい」


「おたるんには、その分しっかりと稼いで貰わないとねぇ?」


「はい……頑張ります……」


 次は杏子の番でルーレットを回すと、駒を進めなかった。


「パス!」


「ええええ?」


 このゲームパス出来るの?それは、僕の駒だけど?


「ゆきよん頼んだよ?」


 何かを狙っているのか、雪ちゃんにパスした杏子は祈りを捧げていた。


 雪ちゃんが僕の駒を進めると、子供のマスに止まった。


「やった!おたくん♡双子が生まれたよ?」 


「うん良かったね?」


 普通ならお祝いが貰えるらしいけど、僕たちは家族なので貰える人はいなかった。


 僕の番がやってきて駒を進めると、クラスチェンジと給料が貰えるマスで止まった。


 僕はビジネスマンだから、条件次第で出世が出来るという訳だ。


 条件は……1か10が出たらクラスアップって、条件酷くない?何この無理ゲー?


「がんばれ!お父さん!」

「しっかり、出世して楽させてね?おにいちゃん♡」


 杏子と雪ちゃんのプレッシャーで、ルーレットを回す手が震える。


 ……ルーレットを回して出た数字は………………、1だった。


「やったぁ!出世おめでとう!今日はパーティだね?」

「おたるんは、やれば出来る子って信じてたよ?」


 出世したので職業カードを裏返すと、なんと資産家企業グループ社長だった。

 給料も破格の500万円だ。えっと多すぎない?


「給料500万円だって……あはは」


「すごーい!凄いよ?おたくん!これで高級マンションの購入資金も借金も無くなったね?」


「さすがに……想定外の出世ね。これ以上お嫁さんは増やさないでね?海外に愛人もだめよ?」


「いや、浮気はしないよ?愛人も作らないよ?」


 杏子の顔が僕に迫ってくる。近い近い!


「本当?」


「……うん」


「じゃ……キスして?」


 えっと、これゲームしてるんだよね?え?どういう事?


 僕と杏子の顔が重なり、口が触れ合った。


「ん……んん……んあ♡……ちゅ♡」


「ちょっと杏子ちゃん?ずるい~!」


 雪ちゃんも横から割り込んできて、杏子とキスしている僕の顔を掴んでくるっと回した。


 すると雪ちゃんの顔が僕に近づいて来て……雪ちゃんにもキスされた。


「んむぅ……んん♡……んんんちゅ♡……ちゅ♡……ちゅ♡……ちゅぅ♡……ちゅちゅ♡……」


「ちょっと?ゆきよん長すぎ!私だってそんなに長くなかった!」


 杏子は、僕から雪ちゃんを引きはがした。


「ああん!……だって、あれ禁止されてるから……欲求不満なんだもん……」


「キスまでは、禁止してないわよ?」


 禁止はされているけど……キスはいいんだ?

 なんか基準が良く分からないよ?


 それから、ゲームは続けたけど……結局、ぐだぐだになって、子供はまた増えるし、大きな買い物をするし、海外旅行で贅沢の限りをつくして、僕達の家族が優勝した。


 これ優勝の意味あるのかな?






読者様へ


ここまでお読みいただきありがとうございます。


レビュー☆☆☆にコメント、応援♡を頂けたらとても嬉しいです。


今回はゲーム回でした。

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