続4話 ともだち
今日は保健室で友達になった雨宮さんと遊ぶ約束をしていた。
雨宮さんとは色々とあったけど、(番外編2参照)連絡先も交換してこうして友達として遊べるようになった。
雨宮さんは、黒髪眼鏡にボブカットが可愛い女の子で、眼鏡を外せば絶対に可愛いと思うんだけど、外した所はまだ見た事は無い。
僕は男の子になる宣言をしてから、学校以外では男の子の格好をする様にしていたけど、薄着になるとブラのラインが見えてしまう。
衣替えが来て夏服に変わったのでラインが目立つのは尚更で、僕は一旦着た服を脱いで、空色のワンピースに着替えることにした。
杏子と雪ちゃんには、友達と遊びに行くことを伝えてある。杏子と雪ちゃん以外では、初めての友達となるのでちょっと楽しみでもある。
でも、友達って何をするんだろう?
雨宮さんと待ち合わせしているのは、最寄りの駅の近くにある小洒落た喫茶店で、僕はその喫茶店に着くと、周りを確認してから中に入った。
外にはいなかったから、中で待っているのかもしれない。
喫茶店の中に入ると……手招きする雨宮さんと目が合った。
「こっちだよ?吉田さん!」
雨宮さんに促され、ファミレスの様な向かいのソファーに座ると、店員さんが水を運んで来てくれた。
雨宮さんはボブカットが可愛いメガネっ子で、黒い髪は手櫛で触りたくなってしまうほどサラサラだった。
メガネを取ってみたいけど、まだ取った所を見た事は無い。
「えっと、吉田さんは何か飲む?」
「どうしようかな……」
「私は、リンゴパフェがいいかなぁ」
雨宮さんにメニューを渡されたので迷っていると……。
「何でも頼んでいいよ?ここ、わたしの家なのよ?」
「え?そうだったの?」
「吉田さんはお友達だから特別サービスしちゃうよ?」
「そうなんだ……ありがとう!」
待ち合わせって言うから、一般のお店だとばかり思っていたけど、まさか雨宮さんの家がカフェだとは知らなかった。
「ミルクティーにしようかな?」
僕は無難にミルクティーを頼んだ。お友達とはいえ、あまり値段の高いものは頼めない。
「遠慮しなくていいのに」
「遠慮はしてないよ?」
「パンケーキは好き?」
「え?うん……」
「じゃ、一つ頼むから分けて食べよう!」
あれ?雨宮さんパフェも頼んでなかった?
パンケーキも食べるの?
雨宮さんがカウンターに行って帰ってくると、もう注文して来たようで飲み物を自分で持ってきてくれた。
「どうぞ?アイスミルクティーだったよね?」
雨宮さんは、持ってきたアイスミルクティーを置いてくれると、もう一つ同じものを自分の前に置いた。
「うん。ありがとう?」
それから、他愛もない話をしながら運ばれて来たパンケーキとパフェを食べていたら、美味しいよ?食べる?って言いながらパフェのクリームの乗ったスプーンを差し出してきた。
「はい、あーん」
「え?あ、あーん?」
思わずあーんをしてしまったけど……?え?友達だからいいの?雨宮さんのスプーンを使っていたので間接キスになっている事は、この時気付かなかった。
「どう?美味しいでしょ?うちのリンゴパフェ」
「うん、美味しい!」
生クリームかと思ったけど、ちゃんとリンゴの味がして……リンゴのソフトアイスのような感じ?シャーベットのようにシャリシャリとした食感もあって、ついもう一口食べたくなってしまう。
「私ね?この店をもっと大きくするのが夢なんだぁ……」
雨宮さんはスプーンでパフェを突きながら、食べるのを休止して話し出した。
「そうなんだ?」
夢か……今まで考えたことも無かった気がする。僕の夢ってなんだろう?
「ねぇ!吉田さんの夢って何?」
僕には、杏子と雪ちゃんという恋人がいるので、二人を幸せにするって言うのは、雨宮さん的には違う答えだと思う。……僕のなりたい職業か。
僕のお祖父様は大病院の院長で、あんな父でも医者だった。だとすると僕の目指すべきは医者なんだろうけど、僕は父の様な医者にはなりたく無い。でも……お祖父様は僕の目指すべき目標である。
「やっぱり医者……かな」
「お医者さん!?夢としてはいいと思うけどねぇ……今のままの保健室登校じゃ厳しいと思うよ?」
「そうかなぁ」
「お医者さんの大学って、受験も難しいらしいし?お金がたくさんかかるって聞いたことあるし?」
お金は大丈夫だろうけど、問題は学力か……。
◇◇
おたるんに限って無いとは思うけど。今日はおたるんが珍しく友達と遊んで来ると言うので、私は心配でおたるんの後を付けた。
今日は可愛いワンピースを着ていったので、まさか男の子とのデート?って思ったけど……。おたるんが男の子とデートするなんて有り得ない。
おたるんが駅近くのオシャレな喫茶店に入ったのを確認したので、時間を置いて喫茶店に入ろうとしたら、ゆきよんと鉢合わせになった。
「何よ?その格好?」
ゆきよんは、探偵帽子と伊達メガネにマスク姿で、どこから見ても怪しい人だった。
「その声は杏子ちゃん?なんでこの暑いのにコートなんて着てるの?」
どうやらゆきよんも、おたるんを尾行していたらしい。
「尾行と言ったらコートじゃ無い?」
2人で喫茶店に入って、おたるんがよく見える位置を確保すると、とりあえずお勧めを注文して聞き耳を立てた。
相手は女の子の様だった。クラスでは見かけないので別のクラスか先輩だろう。
はたから見ると、仲の良い女の子友達に見えなくも無い。
確かに友達のようね。
そう安心した直後、相手の女の子があーんを始めてしまった。ちょっと、それ間接キスだよ!?
お返しとばかりにおたるんも調子に乗って、女の子にあーんをしていた。
「友達よね?友達だったらそのくらい当たり前?」
「仲のいい友達なら有りえるかも?」
確かにどう見ても女の子同士だし、相手の女の子はおたるんの事を「吉田さん」と女の子扱いをしている。あの距離感は友達だ。
聞いているうちに話の内容が真剣になってきた。将来の夢?そんなの決まっている。おたるんは私達と一緒になるんだから、私が働いておたるんを守ってあげるの。
でもね、おたるんの答えは……お医者さんだった。
今の状況じゃ絶対に無理だと思うけど.……もし、おたるんがお祖父様の跡を継ぎたいと言うのなら、私は出来る限り……おたるんの力になりたいと思った。
「ゆきよん?帰るわよ」
「え?まだ……おたくんは?もういいの?」
おたるんは、いい友達を作ったみたいね。
読者様へ
ここまでお読みいただきありがとうございます。
レビュー☆☆☆にコメント、応援♡を頂けたらとても嬉しいです。
雨宮さんは友達です。
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