第22話 テントから

 時間は1日飛びまして、ダンジョンの探索。あのあと起きたら後輩ちゃんに「なんで起こしてくれなかったんですかぁ!!」と叫ばれてそのまま土下座して反省してた。と、つまらない話は置いておいて今日の概要についておさらいしておこう。


 今日向かうダンジョンはつい先日できたらしい。メガロタワーで異世界との扉が開きそのままメガロタワーがダンジョンに変貌してしまった、ということを聞いている。

 今回の探索はダンジョンの分類、構造の把握、そして救助らしい。……まぁ5日前にできたらしいダンジョンに生存者がいるなんてことはなさそうだが。

 支部長曰く、救助隊を向かわせた(ダンジョンができたに日に)ようだが、そのまま連絡が取れなくなったらしい。そのおかげで危険度が高いことが分かり、僕のように生存が可能の見込みがある探索者が向かうことになったらしい。

 説明終了。


 今僕はメガロタワーの前にいる。黄色いテープが張り巡らされておりメガロタワーに近づけなくなっている。

 近くにいる探索者協会の職員に、どこに他のがいるかを聞く。

 もちろんダンジョン探索はパーティで行うぞ。後輩ちゃんもパーティに入っており、後輩ちゃんはというと、もうネットの中に入り既に着いているらしい。

 職員さんからメガロタワーの入り口部分にテントが張っておりそこにいるとのことだ。

 ……今思ったが後輩ちゃんに場所を聞けばよかった。

 

「おっちゃらまき〜〜〜」

 テントの前で一人の少女が、その体と同じような大きさを持つキャンディを片手に持ちながら挨拶をしてきた。

 服装は僕が上からコートを被り少しだけ肌寒い空気から身を守っているにも拘らずに、その少女、と呼ばれる少女は日曜の朝から始まる夢見る少女御用達のアニメのような格好をしている。要は魔法少女のような姿をしているのだ。

「おっちゃらまき。今回はキララも呼ばれたのか?」

「そ〜だよ。きょうのダンジョンはいちにちでおわらないってしぶちょーがいってたからわたしがきたの」

 キララ。苗字は知らないがこれまでに何度か一緒に探索をしてきた、近接戦闘において右に出るものはいない12歳の少女である。

「そっか、分かった。他に探索者はいるか?」

「えっとね、なるみちゃんと、ががくんがいるって。ひふみちゃんもいていまおしごとちゅう」

「おっけ。ありがと」

「うふふ〜どういたしまして」

 話が終わるとキララはどっか行き、僕はそのままテントに入る。そこまで大きくないテントなので中に入ると誰がいるのかがすぐに分かる。

 簡単な椅子とテーブルが並べられ、隅にはきょうの探索で使う道具が一式。奥の方に椅子に座っている支部長と、目を包帯で覆っている女性の姿。パソコンの前で何か話をしてる足まで届くほどに長い髪の毛の男がいた。

「あぁ、やっときたか」

「時間よりちょっと早いぐらいだぞ」

 支部長が立ち上がりタブレットを持ってくる。

「ほら、これがここのダンジョン内の設計図だ」

「一二三さんは仕事が早いな」

「うふふ、ありがと」

 ダンジョン内の構造が知れて助かる。

 村瀬 一二三。目を包帯で覆っているのは、能力に関係しているため。

「やっぱり、中の構造は外から見た感じより圧倒的に広いわ。そしてちょこちょこ。環境変動型のダンジョンね」

「それは面倒臭いな。他に探索者は入ったりしたのか」

「いや、入れていない。言わなかったか?」

「いや、確認だ」

「じゃあ私は仕事が終わったから帰るわね」

 そういうとテントから外に出て行った一二三さん。戦闘能力はないからな、これ以上ここにいる意味なんてないだろう。

「外にいるキララとは出会ったか」

「出会ったぞ、いつも通りだったな。で、僕とキララと峨々で探索か。一つのダンジョンにしては豪華なメンバーじゃないか」

「……異世界人の少女のことだ。あの子がここから出てきたとなると、他の知的生命体がいる可能性があるからな。もしもの時に皆殺しにできるように、と上から言われてな。当初はお前とキララだけの予定だった」

「峨々が入ったのはそのためか」

「そのため」

 と、峨々がパソコンごとこちらに持ってきた。パソコンには後輩ちゃんが映っている。

「早くダンジョンに入らない?鴻海さんに話すことは話した」

「私も準備万端っすよ」

「じゃあ外にいるキララを呼んでくる」

 そういい支部長がテントから出ていく。

「元気にしてたか、峨々。えらい久しぶりに感じるぞ」

「だいたい一年振り」

「もうそんなに経つのか」

「ちょっと、お二人さん。久しぶりの再会にほのぼのするのは雰囲気が締まりませんよ」 

 いつの間にかパソコンからタブレットに移動している後輩ちゃん。

「誰も死なないから平気」

「そうだぜ後輩ちゃん、雰囲気なんて初めからないような連中だからな、僕たちは」

「ダンジョンはいろ〜」

 外からキララの呼ぶ声が聞こえ、外に出る。

 峨々は折り畳みのテントを持ち、僕は近くにおいてある食料品の入ったバックを背負う。後輩ちゃんは僕のスマホに移動したらしく、キララは手元のキャンディを舐めている。さて、探索開始だ。

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