第23話 超巨大自然保護区

 メガロタワーの扉を開けると、異様な光景が広がっていた。

 床は石畳でできており、苔が至る所に生えている。暗くてよく分からないが、蔦も上の方からぶら下がっており、時代が逆行したような雰囲気を醸し出している。

「峨々、カメラ頼めるか?」

 短く頷き、懐からスマホを取り出し撮影を始める。後輩ちゃんは峨々スマホに移り、支部長に状況の説明をしているところだろう。

 僕もスマホを取り出し、ライトをつけて辺りを見渡す。

 本来ここには売店や、エレベーターがあったりしたのだが、どこもかしこも緑。苔、つた、今さっきは見えなかったが、奥の方に2mほどの草が生い茂っている。

 そして、明らかに空間が拡張している。

 向こう側の壁が入り口付近からは見えない。暗さというものもあるが、無理やり空間が捻じ曲がったのだろう。

 キララを先頭に壁に添いながら歩いていく。特にモンスターの気配はせずに、ただ単に別の場所がくっ付けられたようだ。

「黒宮、キララ、支部長が中央に階段があると言う」

「加賀原さん曰く、救助隊が一階を捜索したらしいので、すぐに階段を登っていいそうです」

 スマホに現れた後輩ちゃん。その言葉を聞いたキララが、中央方向に足を向ける。

「じゃあ、かいだんにむかいま〜す」


 中央に向かうと、背の高い草木に囲まれながら、一本の柱を軸に螺旋状に上に向かう階段があった。

「これを登ったら救助隊と連絡が付かなくなったんだな」

 支部長に確認。

『ああ、そうだ』

「じゃあ、モンスターがいるね」

「そうですね、キララちゃん。しっかりスマホを守ってくださいね」

「まかせなさい」

 ふんす、と気合十分なキララ。

「キララ先頭に真ん中に峨々を挟む形で」

「分かった。こちらは能力を発動できるようにしておく」

 結構長い階段を登りながら、おそらく次の階層から襲ってくるモンスターに対しての対応を考えておく。

「一二三さんからもらった設計図を見るに、同じ構造が連なっているようだな。これ、どんどん登っていくのめんどくさいな」

「登るごとにモンスターが凶悪にならないといいですね」

「キララと、黒宮がいればなんとかなる」

 和気藹々と、結構階段を登り2階にたどり着く。全員が二階の床を踏んだ時には、下から続いていた階段は無くなっていた。

「……環境変動型っていやらしいわ」

 上を見ると、柱だけはまだまだ続いているが階段はもうない。設計図を見ても3階にいく階段は書いていない。

「支部長。一二三さんを呼んで。あの人のアシストがないと無理だわ」

 スマホに移した設計図を見ながらとりあえず壁まで進もうと歩いていると、前方から羽音がした。

 それは、夏によく聞き、耳音で鳴るだけでもイライラが止まらないブーンと言う音。僕がスマホで照らすと、3mはゆうに越える蚊がこちらにむかい飛んできていた。

「キララ、よろしく」

「まっかされた〜」

 蚊に向かい、その巨体を超すほどの跳躍力を見せるキララ。

「まーじかる…」

 空中で二回転しながら、飛んでくる蚊に向かい急降下。

「きゃんでぃ〜」

 手に持っているキャンディを思い切りぶつけて、叩き落とした。

「うげ〜、きもちわるい」

「虫が主体、さらに巨大。俺はすることがない」

「だな、峨々は周囲の観察に気を配ってくれ」

 頭から謎の液体を出しながら倒れ伏す蚊。さらに奥の方から多くの蚊がやってくる。

「蚊って、群れるっけ?」

 群れてやってくる様子は気持ち悪い。

「黒宮、右からも何か来てる」

 峨々が言った方向を向くと、何かがきている。それは緑色の擬態する気もさらさらない、殿様飛蝗の群れだった。

「うわ、キモっ」

「キララがかをあいてするから、ほかをまかせた〜」

  蚊の大群に飛び込んでいくキララ。僕は足元にある闇を直線上に殿様飛蝗の群れに突き刺した。

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