第11話 相談

 竜也が病室に入ると、たまたま同じ病室に居た男性が竜也を見つけ、竜也を病室の外まで連れ出す。


 「お前また新しい女を連れ込みやがって……今、お前のベッドで待っているのは何人目なんだ?」


 竜也はベッドの前で待っている人影を見て、それが女性だと気付く。


 「全く知らない人だよ。何で僕のベッドの近くにいるのか……こっちが聞きたいよ」


 「ほぉ……そうか、じゃあ……あの女を俺が頂いても文句は無いだろ?」


 「それは……チョット」


 「何だよ、貴様は何人も女を相手しているだろ、1人くらい俺が貰っても別に構わないだろ?」


 「え……と、それは……」


 竜也が口ごもる時に、後方から病室に居た女の子の姿が現れる。


 「失礼ですが……村石さんと話をしたいのです、宜しいですか?」


 女の子は自分よりも身の丈の大きい男性に向かって言う。


 「やあ、可愛い子ちゃん、俺と一緒にならない?たくさん良い事してあげるからさ……」


 「そうですね……性的関係を要求しない、人としてのモラルを一脱しない、こちらの要求は全て受け入れる。あと…女性に対しての恥辱行為はさせない……と、言った事を全て受け入れて戴くのであれば、少しは考えてあげますよ」


 「何だよソレ、イチャイチャは無しって遠回りに言っているのと同じじゃないか?」


 「そうですよ……貴方の様な人とは肉体関係を一切求め無い、その上で私の要求を全て聞き入れてくれれば少しは考えてあげますよ…あくまでも考えるだけですけどね。交際するとなると、更に別の要求を求めますけどね……」


 女の子は相手を見下す様な笑みで男性を見る。


 イラついた男性は竜也押し倒して「クソッ!」と、声を荒げて病室に戻って行く。


 「大丈夫ですか?」


 「うん、ありがとう」


 「良ければ、待合室で話をしませんか?」


 「はい」


 竜也は見知らぬ女の子と一緒に待合室へと行く。そこで2人は飲料水を購入して、テーブルを挟んで向かい合った形で椅子に座り話を始める。


 「初めまして。私は漆畑梨花(うるしばた りか)と言います」


 「初めまして、自分は……」


 「あ……大丈夫です。貴方の事は存じ上げていますので……」


 梨花は竜也の自己紹介を遮った。


 「そうですか……」


 「はい」


 梨花は、そう言って少し竜也から離れる。


 「すみません……貴方と距離が近いと私ドキドキしてしまいます。私には恋人がいるので……その方と将来も約束しているの。貴方との個人的な関係はしない方向で話をしたいと思います」


 それを聞いて竜也は安心した。これ以上女性との関係を増やしたくは無かったから……。それ以上に、もし……今、この場で他の女の子達に見られたらどうしようか?と言う不安もあった。


 「分かりました。それで話とは何ですか?」


 「私の妹を助けて欲しいのです」


 「はい?」


 梨花は顔を俯かせて話を始める。


 「私には少し年下の妹がいます。名前は玲奈(れな)と言います。彼女は、昨年の夏に友人と一緒にバスツアーで旅行に出掛けたのですが…バスが崖から転落して、乗客の半数近くは助かりましたが…残りの半数は帰らぬ人となるほどの事故でした。玲奈の友人は運良く助かり、玲奈も命は助かりましたが…打ち所が悪く…事故以来ずっと眠ったままの状態です。現在もこの病院にいます」


 「そうなんですか……ちなみに何故、僕に……そのような話をするのですか?」


 「実は……貴方と関係を持った女の子達が、皆……元気になり、病からも回復していると噂を聞き、もしかしたら妹も助けられるのでは?と思って話をして見ました」


 「僕にそれ程までの奇跡が起こせるとは思えないけど……。だいたい貴女は、僕が関わった少女達の事は知っているのですか?」


 「私は知りません、しかし貴方の噂は私の耳に届く程、院内では有名になっていますよ。だから……僅かな期待を込めて貴方に会って見ました」


 「悪いですけど僕は神様では無いし、何処かの新興宗教の宗主でも無いので…そんな神秘的な事には自信はありません……」


 「そうですか……残念です。妹は元気なら今年で中2になります……姉として短い中学時代を素敵な人と楽しく過ごさせてあげたいと思いましたが……」


 その言葉に竜也はピクッと反応した。


 「中学生ですか……」


 「はい、ちなみに私が言うのも何ですが……妹は結構美少女ですよ。姉の私も嫉妬してしまうくらい可愛いくて、トップアイドルも顔負けじゃないかと思っています。まぁ……でも、貴方に一握りの期待を求めた私が間違いでした……忘れてください」


 残念そうな表情を浮かべながら梨花は椅子から立ち上がる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る