第9話 少女二人②

 可愛いらしい2人の女子児童に見つめられて……どちらが好みなのか?……等言う質問に責められるのは、竜也にとっては人生初の甘くて悩ましい選択だったかもしれない。


 「どちらも……可愛いくて、とても良いよ」


 「それは答えになっていません」


 雫が頰を膨らまして言う。


 「コトミはお兄ちゃんが……今、この場で裸になれって言えば裸になるわ。お兄ちゃんがコトミとイチャイチャしたいと言えば、しても構わないもん。勿論決して他の人には絶対に言わない覚悟は出来ているもん」


 「私だって、そのつもりよ。竜也さんが困る様な事はしないつもりで、関係を求めているのだから……」


 2人の真剣な思いに竜也は迷っていた。この上は……竜也はあまり乗り気では無かったが、最後の選択肢として竜也は2人に向かって言う。


「じゃあ……2人同時にイチャイチャして良かった方を選ぶ、と言うのはどうだ?」


 そう言うと2人は「分かったわ」と、声を揃えて返事をする。そして待っていました……と言わんばかりに、その場で衣服を脱ぎ始めようとする。


 「コラ、ちょっと待て!」


 竜也が2人を呼び止める。


 「何かしら?」


 「2人共、気持ちは分かるが……周りを良く見てみろ」


 そう言って2人は周囲を見回す。


 「ココは屋上で……長い時間、雨風に晒されたりして、人が手入れしていないのだぞ、地面は汚れているし…、この場でしたとして、周囲の建物から人が覗く事だって考えられるのだぞ、その辺を考え無ければ……」


 「そうね……」


 雫は衣服を着た。


 「ベッドと横断幕になる物用意すれば良いのね」


 琴美が言う。


 「出来ればね……」


 これで、諦めて二人共退院まで待ってくれれば……そう思って竜也は、一旦引き下がろうとした直後だった。


 「ウチに連絡して見るわ」


 「え?」


 琴美は置いてあったポシェットからスマホを取り出して電話をする。


 「あ……もしもし私……こんにちは叔父さん。今ね病院の屋上なのよ。至急ベッドと横断幕になる物を用意して持って来て……それから用心棒も数人お願いね」


 琴美は電話を切ると


 「作業が始めるから中で待ちましょうか?」


 と、2人を階段の方へと連れて行く。


 しばらくしてヘリの音が聞こえて来る。


 階段下から迷彩服を着た人達が上って来て屋上へと行く。


 その1人が琴美に向かって「お嬢様こんにちは」と、挨拶をする。


 数分して迷彩服を着た人達が戻り始める。


 「お嬢様、ご要望に沿った準備が整いました。あと……あちらが用心棒の方達です」


 そう言って迷彩服着た人が手を差し伸べると、そこには体格の大きいサングラスに黒スーツを着た男性が2人立っていた。


 「こんにちは、お嬢様」


 と、彼等は挨拶をする。


 「ありがとうね」


 そう言うと、迷彩服を着た人は頭を下げて去って行く。


 「私が合図するまで、誰も屋上には入れないでね。あと……貴方達も覗きは禁止よ」


 「かしこまりました」


 「じゃあ、行きましょうか」


 彼等をドアの向こう側に置いて、琴美は竜也と雫を屋上に連れて行く。


 屋上に戻ると、そこには四方を白いカーテンに囲まれた物が出来上がっていた。


 琴美が進んで行き手前にあるファスナーを開けると、その中にはホテル並の設備が整っていた。天井は通気性と盗撮防止用に整えられた網目状の物が施されていた。


 「君の家って、凄い金持ちなの?」


 竜也が唖然としながら言う。


 「そうかな?あまり考えた事無いわ……」


 3人は高級ベッドへと行く。3人が入ってもまだ余裕がある大きなベッドだった。


 「準備も出来たし始めましょうか」


 「凄い物を準備してくれて礼は言うわ。でも……悪いけど魅力は私の方が上だからね」


 「そんなの、して見なければ解らないでしょ?」


 少女達と一緒に竜也はベッドの上に居た竜也は少し困惑していた。それを見たことみと雫は不思議な表情で竜也を見る。


 「どうかしたの?」


 「君達に謝らなければいけい事があって……」


 「?」


 彼女達は不思議な表情で竜也を見る。


 「どうも……事故の後遺症があるらしく、突然……自分が何かしてしまう事があるらしんだ」


 「そうなの……?」


 「だから……その、僕とは絶対にキスとかしないで欲しい。多分……君達とキスしてしまうと……て、オイ!」


 それを聞いた雫が後ろに回って、竜也の両手を掴む。


 「コトミちゃん、今よ!キスしちゃって!」

 

 「分かったわ、ごめんなさい、竜也さん」


 琴美が竜也の唇に、自分の唇を重ねる。


 チュウ。


 その直後、ビキッと何時もの感覚に彼は襲われる。


 何が起きたのか、自分でも解らな状態が始まり、しばらくして竜也は、ハア……ハア……と、息が上がっていた。


 「あ……あれ?」


 自分が知らない間に服を脱いでいた。目の前の二人の少女も同じだった。


 「あ……竜也さん、ダメよ、まだ目を覚ましちゃ」

 

 髪を振り乱したような雫が近付いて来た。


 「お……お前達、何を……」


 「ごめんなさい、もう少しだけ楽しみたいから。眠っていてね」


 そう言うと、雫が竜也に口付けする。再びビキッ……と頭痛に襲われ彼は意識が遠のく。


 次に目を覚ました時、彼はベッドの上で、両側に少女を抱き抱えながら、布団を被った状態で目を覚ました。


 「ねえ、雫ちゃん……今回は引き分けにしない?」


 「私もそれを言いたかったわ。竜也さんに抱かれたら、私達もう何も言えないからね……」


 二人はウットリとした表情で彼を見る。


 「次は退院した後で楽しみましょう」


 「ええ、そうね……次こそ彼のハートはコトミが戴くから」


 「私もそのつもりよ!」

 

 それを聞いていた竜也は、退院したら何処か見知らぬ国に逃げたい……と、本気で思った。

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