第6話 


 翌日、蓮はアイビーに電話した。


 プルルルル


「はい」


「アイビー?ちょっと相談があるんだけど時間作れない?」


「まぁいいけど」


「今どこ?」


「調査に出てる」


「近くまで行くから待ってて」


「お、おぅ」


 蓮は電話を切るとアイビーの所に向かった。



「なんだよ相談って」


 周りを見渡すと、人がいないのを確認する蓮。


「実は‥‥」


 蓮はあんずのとの事をアイビーに全て話した。


「はぁ」


 アイビーがため息をついた。


「こんな事言えるのアイビーしかいなくて‥‥」


「当たり前だろ!絶対誰にも言うなよ!」


「うん」


「で、お前はどうしたい」


「俺はあんずさんの事守りたい」


「守りたいとか言いながら一人では何も出来ねーのかよ」


「悔しいけど、俺には考える頭も行動する勇気もないよ。でもあんずさんを思う気持ちはある」


「はぁー、分かったよ。こっちはこっちで調べるから、お前はその子の側にいてやれよ」


「アイビー‥‥ありがとう!」


 思わず抱きつく蓮。


「や、やめろ!」


「ごめん、つい」


「そんなに‥‥好きか」


「うん、こんなに胸が苦しくなるなんて思ってなかった」


「‥‥‥」


「アイビーがいてくれて本当よかったよ」


「まぁ、何か分かったら連絡するわ」


「よろしくね!」


 アイビーは蓮と解散すると事務所に戻る。


「潮田さん、ちょっといいですか」


「ん?なに?」


「昨日自分らが調べようとしてた事なんですけど」


 アイビーは蓮から聞いた事を話した。


「へー。俺が見覚えあったのは昔調査してたやつの娘だったからだ。これは一筋縄ではいかなそうだね」


「そうなんですか?」


「まずその子の親の尻尾を掴む事は無理だな。だけど、ボランティアをやめるだけなら出来ると思うけど」


「なんで無理なんですか?」


「平気で人殺す連中だよ、もしバレたりしたらみんな終わりだよ。危険すぎる」


「マジかよ」


「本当は関わらない方が身のためだけどね、どうする?」


「蓮に言ってみます」


「うん、分かった。それと約束して欲しいんだけど」


「はい?」


「蓮君が何と言おうとアイビーは関わっちゃダメだからね」


「何のことですか?」


「アドバイスはしても、アイビーが直接動いたらダメだよ」


「どうしてですか?」


「大事な仲間だからね。万が一でもアイビーに何かあったら俺は蓮君の事許さないから」


「潮田さん?」


「約束な?」


「わかりました」


「よろしい」


 そう言って潮田は笑った。


 アイビーはすぐ蓮に電話した。


 プルルルル


「はい!」


 蓮は待っていたかのように出る。


「話がある、うちにこれるか?」


「すぐ行く!」


 アイビーは家に帰り、蓮の事を待つ。



「お待たせ!」


 息を切らして蓮はやってきた。


「まぁ入れ」


「うん」


「簡潔に言うぞ」


「うん」


「その子と関わるのはやめろ」


 アイビーは考えた結果、蓮にもあんずと関係を続けるのをやめてほしいと思ったのだ。


「何言ってんの?」


「潮田さんの昔の調査対象だったらしい、その子の親が。関わるのは危ないって言われた」


「そんな大袈裟だよ!」


「人も平気で殺す連中だって」


「そんな‥‥」


「だから別れてほしい」


「無理だよ‥‥離れないって約束したもん」


「頼むよ」


 アイビーは深刻な顔をしている。


「いくらアイビーでもそんな事言うなんて酷いよ。俺がどれだけあんずさんの事好きか知ってるでしょ?知っててよく言えるね」


「お前を危険に晒すわけにはいかないんだよ」


「アイビーがそう思ってるように俺もあんずさんの事守りたいって思ってる」


「頼むから」


「俺はあんずさんと居る」

 

「お前が組織の事知ってるってその子が親に言ったら?」


「あんずさんはそんな事言わない」


「でも親だろ。お前と親どっちを取るかなんて分かんねーだろ」


「分かるよ、信じてるから」


「その自信はどっからくるんだよ」


「アイビーには分かんないよ。俺の気持ちなんて」


「分かんねーよ、この分からず屋が!」


「分からず屋はそっちだよ!」


 蓮はアイビーの家を飛び出した。


 (あんずさんは俺が守るんだ!)



「クソ!クソ!クソッ!!」


 アイビーはもどかしくて仕方なかった。


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