第51話 薔薇咲く庭で愛の喜びを知る
母の薔薇が咲き始めた庭で
私は今年も新しい苗を下ろす。
母の色の中に少しずつ、
私を溶け込ませて世界を広げる。
私というものを育んでくれた人が、
微笑んでくれることを祈って。
私というものを包み込んでくれる人が、
喜んでくれることを願って。
薔薇はいつまで生きるのかしら。
こぼれ落ちた言葉に兄が首をかしげる。
そうだね、
長く咲き続ける花もあるからね。
きっとお前が望み、
花も望めば続いていくんだろう。
誰だって、想い想われて花開きたい。
すべてが思うようにいかなくても、
愛される喜びは格別だから。
だからその時命は輝いて、
見るものを魅了するのさ。
兄が新しい土をどっさり運び、
私がきれいな水をたっぷり与えた。
寸分の狂いもなく、
形通りになるものなどないだろう。
予定は未定なんてあまりにも当たり前。
だけど想いは届く。
きっと届く。
届かなかったように見えるものもすべて
きっと届いて深いところへと染み込んでいく。
だから
ありふれたものさしでそれを図ることなく
ただ、命の限り輝けばいい。
ふくよかな香りの中で
私は初夏の空を仰ぎ見る。
花を抱きしめる様に、
日々深くなっていく青。
心の中に輝き続ける青に
その色をそっと重ねながら、
私は愛しい温もりの中で微笑んだ。
薔薇の様に万人を魅了できなくてもいい。
たった一人、
想う人に届いてくれれば
それ以上に素敵なことはないだろう。
過去と未来と花咲く荒野 クララ @cciel
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