第45話 めぐる季節の色が結びつけるもの
空の色が一段と深くなって
新しい季節の色を刺そうと、
私は二つ向こうの駅へ足を運んだ。
大きな本屋で海外からの図案を買い、
ショーウインドウに並ぶ新色の中から
こっくりと深い糸玉をつまみ上げる。
慌ただしい時間の中にいると
移りゆく美しさにまで気が回らない。
丘の家に戻ってきてようやく
私は世界に再び向き合えたような気がした。
大切な人がいるから。
温もりが、微笑みが、声が。
小さな変化を分け合いたくて、
嬉しさを二人で何倍にもしたくて。
言葉では追いつかないこの気持ちを
選んだ色や形に託して
そう思って顔を上げたら、
改札向こうのベンチに座る
大好きでたまらない人の横顔が見えた。
一人なら飾って眺めるだけだった喜びを
今は頬を寄せ合って二人で覗き込む。
足りない言葉はみんな
必要な場所にちゃんと結び付けられた。
舞い落ちる紅葉の輝きの中へ
私は笑顔で駆け出した。
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