第9話 おらさ、サイズとか相性とか、わがんね

 とりあえず、高薙さんが雨に降られたままでは可哀想だったので。

 俺は彼女に家のお風呂に浸かって行ってよと強引な感じで引き留めた。


 彼女が風呂に入っている間、俺はレンの部屋に向かった――コンコンコン。


「レン、俺だけど」

「なんだ竜馬? おら、今はちょっと元気ねぇから」

「高薙さんのフォローは俺に任せろ、それだけ言いに来た」

「……竜馬、おめえもしかして高薙に惚れたとか、そういう話じゃねぇべ?」

「舐めるな、とだけ言っておこう」


 きっと恐らく、俺が本当に好きなのはレンだった。今までしてきた恋のような感情は、劣情とかよくわからない不純物が混じってて、恋だと断言できない代物だが。きっと俺の好きな人はお前だと思う。


 よかったよ、お前との同居生活に恋愛禁止の約束を設けておいて。


 これでしばらくの間、俺はレンへの気持ちを見つめ直せる。

 気持ちが変な方向に向かっていたら、その時は失敗して、再度レンを見詰め直すのだろう。


「あら、貴方確か」

「……高薙志穂と申します、この度は将門くんのご厚意に甘えさせてもらってます」

「志穂ちゃんね、覚えたわ。それで、何か遭ったの?」


 その頃一方、どうやら母と高薙さんがお風呂場で遭遇していたらしく。

 俺は自室で気持ちの整理をしていると。


「竜馬ぁー!!」

「わぁい、びっくりするだろうが!」


 母さんが俺の部屋を襲撃し、ついついわぁいなどと言ってしまったよわぁい。


「高薙志保ちゃん、彼女も今日からこの家に住むことになったからね」

「……な、に。どうしてそうなったんだ?」

「言えないけど、彼女の家庭の事情も中々にシビアそうでねぇ、放っておけなかったのよ」

「確かに高薙さんのご家庭は訳ありっぽいけど、どんな訳があるんだ?」

「聞きたかったら、直接本人に聞きなさい。まぁ聞かない方がいいと思うけど」


 ううむ、今朝なんとなしにピキーンと振って来た予感は正に的中していたな。

 レンのみならず、高薙さんまでも家に居候するのか。


 でも、余ってる部屋がないじゃないか。


「高薙さんの部屋はどうするの?」

「レンちゃんと一緒の部屋よ」

「ちょっと待ったぁ――――――――――――――――――ッ!!」

「何? あんた結局誰狙いなの?」

「母さん、あのね?」


 と、そこで母さんに高薙さんが家にやって来た経緯を伝えた。

 母さんは真剣な表情で耳を貸してくれたけど、最終的にはこう言い放つ。


「ガキが本物の恋を語るのなんて、十年早いわね」

「あーもう幻滅でしかないよこのババア」


「でもその気持ちに真摯に取り組んで、考え抜いた先に何が待っているのか、母さんも興味ある。答えが出たら真っ先に教えてね竜馬」


「うぃ、でも高薙さんとレンを一緒の部屋にするのは最悪だと思うんだけど」


 俺の予感は的中したようで、レンの部屋は絶叫マシーンのようにうるさくなった。遠くからでもレンが「なしてぇ!? なしておらがお前と一緒に住まなきゃいけないんだべさ!」と早くも高薙さんに攻撃している。


 はいはいはい、俺が止めるしかないんですよね。


「ちょっと待ったぁ――――――ッ!」


 と、豪快にレンの部屋に登場すると。


「っ、将門くん!?」

「ば、見るな竜馬!」


 部屋の中にいた高薙さんは何故か全裸だった。

 痩躯だけど、着痩せするタイプなのか、お尻の形が素晴らしい。


 俺、初めて同年代の異性の裸身を見たよ、だから――オっハヨー!

 と軽快に愚息が挨拶することは止められないことだった。


「見るなって言ってんべ!!」

「うん、そうだね。ごめんね。うん、そうだね。うん」


 したら大激怒したレンがずんずん近寄ってきて下から上に拳をフルスイング。

 それは俺の顎に見事に命中し、不肖将門竜馬はあえなく撃沈となったのだ。


「……ねぇ、レンちゃん、志穂ちゃん」

「な、なんでしょうか?」

「竜馬のアソコのサイズって、このくらいでいいの?」

「オラ、サイズとか相性とか、わがんね」

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