第007話、冒険者ギルド視点、いよいよ能力覚醒


2022/03/02、修正してます。


ここは冒険者ギルド、受付Aさん、改め『ツルン』は資料倉庫で、治癒師に関する資料を探している "男の治癒師" についての資料なのだが、見つからない、疲れた表情をしている、窓からは太陽の光が刺しており、室内は暑い、額に汗もかいている。



「ん~やっぱり資料は見つかりませんね~」

(受付A【ツルン】:やっと名前が出ました~! 嬉しい~! よろしくです~!)


資料倉庫にはもう一人、男性がいた、この男性こそ冒険者ギルドの長、ギルドマスターである、ただし窓から刺す光により後光がさして顔は見えない、資料倉庫にて男性の治癒師について調査をしているが思うように資料が集まらない、ギルドマスターの記憶にもそれらしき内容は該当なし。


「そうか、やはり無いか… 俺も聞いたことないからな、そのサルナスという男は今のところ問題は起こしてないようだし、人格的にはどうなんだ? 危険な感じか?」


ツルンは資料を探す手を止めないまま、ギルドマスターの質問に答える。


「穏やかな感じでしたよ~、研修を担当したツッチーさんからは "頼まれると断れない性格、あれは将来シリにひかれるね" って報告でした~」



あの研修時の雑な扱いはサルナスの性格判断をするためだったようである、けっしてツッチーの趣味ではない。


「治癒師だから、街にとって害になるようなことはないだろうが…… もう一度ここに呼んで、詳しく調べてみる必要はあるだろうな、なにせ初の"男性"治癒師だ」


冒険者ギルドには特殊な魔法道具があり、水晶よりも詳しく能力の性質や大きさを測ることができる、その道具をサルナスに使おうとしている。


続けてギルドマスターはツルンに伝える。


「いま彼は治癒院だったな、近いうちにギルドに顔を出すよう連絡をしておいてくれ」


「わっかりました~!」



***



一方、治癒院では廊下でサルナスが日光浴を楽しんでいる、今日は患者さんが少なく、暇なのだ。


「今日は穏やかだな~、天気も良いし、ぽかぽかする~、なんか眠い…… さすがに仕事中に昼寝はまずいか、でも眠たいな~… 平和だ~…」


日光浴を楽しむ俺の背後に怪しげな影が迫っていることに俺は気づかなかった。


「眠そうだね」

ムキムキ


「課長っ!?(ビクッ!) ち、近いっす!」


ノミー課長がサルナスの背後にスッと近づき、声をかけてきたのだ、耳元まで近づいて声をかける必要はないと思う。


「おおっ! すまんすまん、気持ち良さそうな顔だったから、つい寄ってしまった(ニカッ!)」


(ビックリした~ 怖ぇーよ! ってかなんで耳元まで近寄るんだよ! 心臓に悪いよ! チビりそうだよ!)


俺のあまりの動揺っぷりに、ノミー課長は苦笑いしている。


「……ものすごい顔してるよ」

ムッキン


「すみません、つい…」

(顔に出てたー!)


「たしかに今日は良い天気だ、だが経験上こんな日は…荒れるよ、心構えはしといた方がいい」

ムキムキ


ノミー課長の意味深な言葉に疑問を感じた、詳しく語ることもなくノミー課長はそのまま去っていった。


「?」



***


それからしばらくして

ざわざわ…… ざわざわ……


俺はノミー課長が去った後、診察室に向かっていたのだが、入り口の方が騒がしい、こんなに騒がしいのは初めてだ。 急いで入り口に駆けつけて見る。


男A「おいっ! 早くしてくれ!」

男B「こっちもだ! 早く!」


「な、なんですかこれは…」


入り口に到着すると、怪我をした人だらけ、押し寄せている、どうやらみんな冒険者達のようだ、俺を見つけたイワ先輩が声をかけてくる。


「あ、サルナス君 こっち来て、早く治療にあたって!」


「イワ先輩、わかりました!」



男C「痛ぇー 痛ぇーよ」


「ケガナオール! ケガナオール! ケガ……  キリがないなぁ、何人いるんだ そもそもどうしてこんなに怪我人が?」


治しても治しても怪我人が減らない、俺は状況説明をイワ先輩に求めた、魔物の仕業らしい、イワ先輩も汗をかきながら治癒魔法をかけまくっている。


「どうも街の外で大型の魔物が暴れてるらしいわ、かなり強いみたいで冒険者も手こずっているみたいなの」


「そんなに強い魔物が!?」


イワ先輩から話を聞いていると、一人の男性が運ばれてきた、連れてきた女性はかなり焦っている、顔の青白い。


女性A「すみません、この人を先にお願いします!」


かなりの重症だ、お腹に大きな傷があり、内蔵も損傷している、男性の意識はなく、呼吸も荒い、傷口からの出血も続いている、口からも血を吐いている。 イワ先輩は青ざめた、これはもう無理だと直感している。


「うっ! これはっ! ……残念ですが傷が内臓まで達してます、ここまでの状態となると私たちの魔法でも無理です」


そばには男性の奥さんが付き添ってきていた、奥さんは号泣している、涙や鼻水で顔がぐちゃぐちゃだ、俺たちにすがり付くようにお願いしてくる。


怪我人の奥さん「そ、そんな主人を助けてください! お願いします! お願いします!」


イワ先輩はとても悔しそうな表情をして、声を絞りだし、奥さんへ伝えた。


「…………残念ですが」


俺は傷の状態を見ながら考えていた、イワ先輩は優秀な治癒師だ、判断に間違いはないのだろう、けれどなんとなく治せるような気がする。 俺はある本に書かれていた内容を思い出していた。


(無理なのか…… そうなのかな? 内臓…… たしか『あの本』で読んだけど、こんな感じの方法があったよな、だったら)


「イワ先輩、俺に治療させてもらえませんか?」


イワ先輩は俺の言葉に驚き、怒りだした。


「なに言ってるの? 無理よ、こんな状態から治すなんて無茶! 治癒師として家族に期待だけもたせるのはかえって残酷よ!」


俺は確信はないが、出来そうな気がした、初めてイワ先輩に反発した。


「でも、やれそうなんです! お願いします!」


イワ先輩と俺が話していると怪我人の奥さんが頭を下げてきた。


「お願いします、なにか、少しだけでも可能性があるならお願いします、夫を助けてください」


奥さんの言葉にイワ先輩は迷っている。


「ほんとにできそうなの?」


「…はいっ!」


イワ先輩も覚悟を決めたようだ。


「わかったわ、サポートするからやってみて」

「ありがとうございます」



***


治療開始!!


俺はイワ先輩に傷の状態を見てもらいながら治療を開始する。


「まずは出血が多いから、傷口にケガナオールを途中までかけて傷口の表面だけを固める、、、 よし、血が止まった、それから内臓の損傷部位に"再生魔法"をかけて内臓を修復、造血機能を魔法で活性化して、、、 顔色が良くなってきた、最後に傷口のケガナオールを追加でかけて傷をふさぐ、よーし治った!」


俺はみるみる、傷を修復していく、そばで見ていたイワ先輩の表情は固まっている、身体も固まっている。


「えっ? ちょっと待って "再生魔法"ってなに? それにその後の魔法は? そんなの知らないわよ」


イワ先輩は混乱している、目の前で起こった出来事が理解できない様子だ。 俺はイワ先輩に説明する。


「えと、本で読みました、きちんと勉強してますから、魔法って凄いですよね、思い出して良かったです」


俺はどや顔をして、勉強を頑張っているアピールをする。 イワ先輩は疑問を俺にぶつけてきた。


「いやいや、どこの本よ! この治癒院の図書館にもそんな本は無いわ!」


「えーと、たしか路地裏で拾った魔道書です、古い本でした、タイトルは『治癒っちの大冒険』」


その本にはイワ先輩も心当たりがあったようだが、俺とは違う認識だった。


「それってたしか子ども向けの本よ! 空想の本! 現実の話じゃないの! しかも内容がエグいから販売禁止になったのよ」


イワは呆れたような表情をして俺を見ている、俺はあの本について、絵も描いてあるし、内容もわかりやすくて、良いものを拾ったという認識だった。


「でも治りましたよ、良かったですね」

ニゴッ


「あ~ 頭痛いわ……そんな本を読んで治療するなんて」


イワは困り顔をしている、まさか子ども向けの作り話を信じて実践するとは思ってなかった、けれど実際には治してしまった、どう報告したものか頭を悩ませている。


「ありがとうございます! あなたは恩人です、ほんとにありがとうございます」


怪我人の奥さんがとても喜んでいるのを見てイワ先輩は、よしとした。


「これは院長に報告しないと、でもなんて説明しようかな、はぁ~」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る