第006話、治癒院 三日目、ノミー課長 濃いなぁ


2022/03/02、修正してます。


「ん? なんか治療院が騒がしい?」

「るせー! 邪魔すんなや! どけやっ!」


出勤すると、治癒院の入り口で男が騒いで暴れている、よく見ると前に足の怪我で来院してた女好きの甘え男だ、あの時よりも興奮した顔で怒鳴っている、止めに入ろうか迷っているとヨネーさんが飛び出してきた。


「あれって、この前きてた…… あっ! ヨネーさん」


「大人しくしなさい!」


ヨネーさんは男を捕まえようとするが、男はもがいており、うまく捕まえられない、ますます興奮しているように見える

、目つきが危ない感じだ。


「うるせー! なめやがって、バカにしてんのかっ! バカにしてんだろ? 切るぞテメー!」


男は酒に酔ってるのか? 顔が赤い、それに動きもフラフラと落ち着きがない、服装もだらしなく乱れている、男はヨネーさんに向かって腰にある剣を抜こうとしている。


(あ、危ないっ!)


そう思った瞬間、1人の男性が現れて暴れている男に声をかけて素早く捕獲する。


「まぁまぁ落ち着いて、そう大きな声を出してはいけないよ」

ムキムキ


男性は体格が良い、肌は少し茶色く、筋肉はムキムキしている。


(ん? 誰かな? 知らない男の人だ、凄い筋肉! 暴れてる男を簡単に捕まえたぞ)


「なんだっコラっ! やんのかっ! あ"あ"っ!」


「お酒の匂いがするね~、朝から飲んでるのかい?」

ムキッ!


「飲んでねぇよ! あ"あ"っ!! 飲んでたらなんだっ? 悪いのか? おうっ! 悪いんかっ!?」


男は酒を飲んでいることを認めている、酔っているためか、言葉が矛盾している。


(いや、飲んでるやん 思いっきり酒に酔ってるやん)


俺は心でツッコむ、茶色の男性は冷静に男を押さえつけている。


「まぁ、飲もうが飲むまいが、本人の勝手だけど周りに迷惑をかけるのは良くないね~」

ムキッ!


(なんでいちいちムキってるんだろ…)


「テメーも俺をバカにするんかっ!」


「ちょっと一緒に奥へ行こうか(ニカッ!) さぁさぁ遠慮しないで、こちらへどうぞ」

ムキッ!


「離せよ! 離せっ! あ、なにケツさわってんだよ! ちょっ! やめっ! なんかキモいぞ、なんだテメー!」


なんか、茶色の男性は男のお尻をサワサワしながら奥に連行していく、男は怖がっている様子だ。


「いいからいいから、話は奥でゆっっくりと聞いてあげるから、こっちにおいで」

ムキッ!



俺はヨネーさんに声をかける、ヨネーさんは腕に怪我をしている、わずかだか血も滲んでいる。


「ヨネーさん 大丈夫ですか?」


「あ~サルナス君、いやまいったよ、男が酔って暴れててね、捕まえられなくて、情けないとこ見せたね」


「そんなことないですよ、怪我してるじゃないですか、見せてください、ケガナオール!」


「おおっ! ありがとう! 凄いね、うわさ通りだ」


ヨネーさんの怪我を治癒して、先程の茶色の男性がについて、聞いてみる。


「ところであのムキムキした茶色の男の人は?」


「ああ、うちの課長だよ、補助員のノミー課長、僕の上司だ」


茶色の男性は噂のノミー課長だった、なるほどたしかに濃い、なんか怪しい雰囲気もする、お尻をさわってたし。


「あの人が…… たしかに濃い人ですね」


「あはは(苦笑い) 良い人なんだよ、部下に優しいし、ちゃんと話を聞いてくれるし」


男は奥の方に連れていかれたけど、注意でもするのかな、俺は気になってヨネーさんに聞いてみた。


「あの暴れてた男の人はどうなりますかね?」


「ん~ 出禁? どうかな~、ちゃんと反省するなら…… 今までも暴れた人はいたけど、なぜか課長が奥で説教すると、だいたい大人しくなるんだよね、課長が説教する時は、誰も中に入れないから、どんな説教かは知らないんだけどね」


(……なんか想像できるような、…考えないほうがいいのかな)




***



その後はトラブルなく午前中の診療おわり、俺は休憩室へ向かう、休憩室に入るとノミー課長がいた。


「君がサルナス君かい?」

ムキムキ


「初めまして、治療師のサルナスです、ノミー課長ですよね、よろしくお願いします」


俺は挨拶をする、ノミー課長は不思議そうな顔をした、ちゃんと腕の筋肉も反応している。


「ん? 僕を知ってるのかい?」

ムキッ!


「あ、ヨネーさんに聞いて… 朝も活躍を見させてもらいました」


「ああ、見てたのかい、たまにいるんだよね~暴れる人、治療師さんは女の子ばかりだから、男がしっかり守らないとね」

ムキムキッキン


ノミーは腕に力を込めて筋肉を見せつけてくる、自信があるのだろう、ちとムキムキがうるさい感じもする。


「ところでサルナス君もなかなか良い筋肉だね~、僕とジムにでも一緒にどうかな?(キラッ!)」

ムキムキ


白い歯を輝かせて、俺をジムに誘ってくる、ジムには行ったことがなく少し興味はあったが、ノミー課長の笑顔が妙に色っぽいのが気になった。


(なんか目つきが… まさかね…)


「あ~… えと~… 機会があればよろしくお願いします」

「ははっ 楽しみにしてるよ、じゃあね」


ノミー課長は休憩室を出て、仕事へ戻った。


「たしかに良い人そうだけど、目つきが気になるな、あとムキムキがちょっとキツい」



***



午後の診察室より、イワ先輩が俺の治療について複雑な表情で考え事をしている。


「ん~、サルナス君の治療魔法ってなんか違うよね」


「イワ先輩、なんか間違えてます?」


俺はなにか失敗したいるのか、不安な表情になる。


「そうじゃないんだけど… 効果が良すぎるような… 私たちが治療したときより治りが早いのよね、それに傷跡がきれい」


「そうなんですか? 自分じゃよくわかりません」


イワ先輩は真面目な顔で説明を続ける。


「例えばね、傷の治療だけど、私たちの治療では少しだけ傷跡が残るの、うっすらだけどね、でもサルナス君の場合は傷が無かったように治ってるの」


「たしかに傷跡はありませんね、それが当たり前だと思ってました」


「今までいなかった男性の治癒師だし、私たちとはなにか違うのかもね、前例の情報がないからわからないわ」


「そうですね、気にはなりますけど、効果が良いのならそのまま続けてみますね」


「そうね、冒険者ギルドにでも聞いてみましょうね」



***



帰宅する、今日は朝から凄かったけど無事に1日が終わった事を俺は喜んだ。


「今日も終わった~、ノミー課長は聞いてた通り、なかなか濃い人だったな~、奥の部屋での説教が気になるけど… あと目つきが…… ヨネーさんは慕ってるみたいだったな、暴れる人は時々いるみたいだから俺も鍛えないといけないとな」


ムキッ! ムキッ!


俺は鏡に向かい、自分の筋肉を確かめる、ノミー課長と比べるとまだまだ足りない、それから治癒魔法について考察してみる。


「俺の治癒魔法ってどうなんだろ、効きが良いのは良いことだ、俺自身もあまり疲れないし、他の治療師さん達は治療の後はけっこう疲れてるもんね、やっぱり何か違うんだろうな」


うーーん、と考えてみるが答えは出ない。


「今日も筋トレしてから寝ようかな」


ムキムキ~っと夜はふけていく。


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