第26話 3Pから始まるダンジョン二日目

 ダンジョン二日目の朝だ。

 俺の異世界転生二日目でもある。

 昨日は本当に色んな経験をした。

 命に関わる事も多かったなあ。

 だからだろうか。

 俺はかなり冷静だった。

 俺が目覚めたのはダンジョンポイント(DP)で出したベッドの中。

 豪華絢爛な天蓋付き。ピンク色のお嬢様ベッドだ。

 右隣にいるのは超絶美人のペトラさん。昨日、ベッドに入った途端に中年オカマから変身した謎多きダークエルフ。

 気持ち良さげにまだ寝てます。もちろん下着姿。意外にも白色の下着です。

 うん、これは昨日から知ってました。

 そして、さっき気付いたが、俺の左隣には可愛い系女騎士ブランゲーネさん。

 こちらもよく寝ていますね。

 黒の下着姿で……


 ファーーーーーー!!


 落ち着け、俺!

 落ち着くんだ。

 何故、半裸のブランゲーネさんがいるのかは後回しだ。

 今、必要なのは行動。

 それも、物音ひとつ立ててはいけないレベルでの迅速な行動だ。

 もし、ブランゲーネさんの兄、シスコンのウィリアムズさんにバレたらどうなるか……

 想像力を働かせればすぐに分かる。

 死だ!

 そ、それだけは絶対に避けねばならぬ。

 冗談抜きでヤバい。

 今度こそマジで死ぬ。

 深く静かに潜航せよ、俺!

 ゆっくりとベッドを抜け出し、椅子とテーブルを出した部屋に辿り着くのだ。

 これで全てが終わる。

 俺は静かに起き上がると、這いずるようにベッド上を移動した。

 よしよし、何とか抜け出せたよ。

 ペトラさんもブランゲーネさんも起きなかった。

 ミッションコンプリート!

 俺は部屋の入り口でこちらを見ていたウィリアムズさんに親指を立てて喜びを伝えた。

 俺はやれば出来る子だぜ。

 そして、土下座しました。

 何でいますの、ウィリアムズさん?

 あれ、でも、怒ってませんね。

 俺のダンジョンは魔力だけでなく怒りの心も吸収しちゃうのかな?

 違いました。

 ウィリアムズさん曰く。


「ついさっき、トイレに起きたらブランたん……妹が仮眠を取ると言ってきたんだ。そこで俺のベッドを貸そうとしたら、臭いと言われてな。仕方ないのでアスカ殿のベッドにお邪魔させたわけだ。もちろん、俺の監視つきで!」


 あぶねえ。

 自制して本気で助かったよ。

 しかし、よく半裸で俺の横に行くことを許しましたね?

 気になったので聞いてみた。


「妹は子供の頃から下着で寝るのが好きでね。まあ、俺が見張ってりゃあ問題ないし」


 ダークエルフに続き女騎士も半裸族でしたか……

 裸族でなかったのは不幸中の幸いだな。

 しかし、まあ、本当に我慢して良かったよ。

 これで心配事は消え去った。

 さあ、清々しい朝を楽しもう。

 俺はDPで電動歯ブラシと歯磨き粉とコップとタオルを出した。セット販売で三十人分が10DPである。なお、コップはステンレス製の模様。

 お買い得だった。

 何故、電動歯ブラシかと思うかもしれないが、ここは福祉施設にする予定。

 お年寄りはだんだん力が抜けていくから電動がいいかなと思ったわけ。

 くくく、俺は福祉ダンジョンマスターとして色々考えてはいるのですよ。


「なんだこれ?」


 ウィリアムズさんの不思議そうな顔。

 おりょ、もしかして異世界には洗面用具がないの?

 電動歯ブラシは知らなくとも歯ブラシくらいは転生者が伝えてませんか?


「そういや貴族がこんなの使うって言ってたな。あとは金持ちの商人とか教会の聖職者」


 ほうほう、庶民には浸透してないか。ならば俺が教えて差し上げましょう。

 しかし、聖職者さんってことは宗教あるんだ。


「どんな神様の教会があるんですか?」

「そうだな。この国では、世界神ベル・カント様。豊穣の女神アリア様。戦神コロラツーラ様。暗黒神ガラ様……有名なのはこんなもんかな」


 暗黒神キター!

 信者いたんだ。


「暗黒神ガラ様の信者はちょっとおかしいのが多いけどな」

「あ、それ凄く分かります。うちのダークエルフ見てると」


 俺たちは笑いながらトイレにある洗面所に向かった。


「じゃあ、簡単に説明しますね。まずこの電動歯ブラシに歯磨き粉を小指の爪の先ほどの量を付けます。あとはスイッチを入れて歯につけてスライドさせるだけです。この時、水をつけた方が泡立ちは良くなりますが、磨き残しができやすくなると聞いたことがあります。まあ、お好みでどうぞ。口の中がさっぱりして口臭予防にもなりますよ」

「分かった、やってみよう」


 先ほど、妹のブランゲーネさんに臭いと言われたせいか、ウィリアムズさんが念入りに磨いていたのが面白かったよ。

 シスコンも大変だね。

 俺たちは男子トイレの洗面所で仲良く歯磨きし顔を洗ってさっぱりした。

 さて、次は朝飯だな。


「ウィリアムズさん、朝飯のリクエストありますか?」

「ベッドを使わせてもらっただけでも有り難いのに、朝飯までもらっていいのか?」

「もちろん。あっ、こっちの世界の朝食ってどんな感じですか?」

「そうだな。俺たち独身は朝飯を抜く事が多い。ただ、冒険者の仕事中は力が出ないと困るので、干し肉とか固いビスケットとか豆のスープをかきこむな」


 なるほど、シンプルだ。

 女性に聞けばまた違った答えが聞けるかもしれないけど。

 うーん、上の騎士さんたちの分も考えて弁当系がいいかな?

 よし、メニュー画面を開いて考えよう。

 俺はスキル・アイテム召喚を押した。

 あ、エリクサーとかあるぞ!

 異世界って感じだねえ。

 アハハ、マ〇ドナルドもある。

 朝マックとかサラリーマンの定番だ。

 異世界でも人気なのかな。

 ん?

 いや、まてまて。

 はあ?

 何でマ〇ドナルドあるの?

 え、じゃあ、バーガーキ〇グは?

 あった……

 ダンジョンマスターってチート過ぎじゃね?

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