第24話 トリスタンとイゾルテ
石井アスカの王宮前ダンジョンをあとにした白騎士隊のトリスタン隊長。彼は王宮にある自分の部屋にいた。
もちろん、アスカに借りたマリオネット型ゴーレム、イゾルデも一緒にだ。
奇抜な衣装のため王宮をすれ違う皆にジロジロ見られはしたが、誰もゴーレムとは気付かない。
何故か王宮内の噂スズメたちに、イゾルデはトリスタンの愛人扱いになっていたが……
まあ、仕方あるまい。
イゾルテは日本のコスプレイヤーが着るようなエロかわいいナース服なんだから。
しかも、ダンジョンポイント(DP)でネームド(名付けのこと)にしたせいで、人間そっくりになってしまった。
誰が見ても愛人である。
さて、そのトリスタンは今、仕事机に向かい書き物をしている真っ最中。
巡回中に出くわした世にも不思議な新しいダンジョン。
先ほど帰ってきたばかりのアスカダンジョンの報告書を書かねばならないからだ。
トリスタンはこれから起こるであろう未来を想像する。
王都にダンジョンが出来た。ただそれだけで大騒ぎするであろう木っ端役人。
モンスターの襲撃の結果、更なる経済の悪化を恐れる大臣たち。
ダンジョンマスターを倒し、手っ取り早く名声を手に入れたい将軍共。
彼らにダンジョンの有効性を知らしめ、未来ある管理体制を築くにはどうすれば良いか……
全てが彼の報告書に掛かっていると言えた。
トリスタンは羽ペンを持つ手を休めるとため息を一つ吐く。
「やはり、常駐する騎士が必要だな」
いつ、ダンジョンマスターが心変わりするかもしれない。
普通はそう思う。
王宮前でモンスターの暴走、スタンピードを起こされでもしたら手におえぬ。
なにせ、ダンジョンマスターは魔王と同義語。
監視の目がなければ連中は不安に思うだろう。
トリスタンとしてはお人好しのアスカを信じているが、こればかりは直接会ってみなければ分からない領域。
何枚かの報告書で説得できるものではない。
だから、ある程度の騎士たちを常駐させることで不安の払拭を図りたいのだが……
それはすなわちダンジョンマスターであるアスカに対する不信感を露にする事でもある。
あの人が良い彼なら受け入れてくれる可能性が高い。
しかし、トリスタンとしてはあまり揉めたくないのだ。
アスカと揉めるくらいなら、王宮の有象無象どもをぶん殴って言うことを聞かせたいくらい。
それほどの信頼をアスカに寄せていた。
へそを曲げて伝説の『日本の酒』が手に入らなくなるのも辛い。
八割がたこれが理由だが。
さて、どうしたものか……
唯一の救いは最高権力者が理性的かつ大胆不敵なあの人である事だ。
ティド・エネアス・バーセル・カルトロイア三世。
十三年前に起きた隣国との戦争をなんとか勝利に導き、現在は経済の復興に力を入れる賢王である。
実はカルトロイア三世は三年前に王位についたばかり。
父王と二人の兄王子を立て続けに戦争で亡くし、あとを引き継いだ新米国王だ。
それまでは放蕩王子として自分の気に入った騎士を連れ回し、ダンジョン探索に精を出していた変わり者。
そのお気に入りの一人が白騎士隊の隊長トリスタン。
実は飲み友達でもある。
酒に目がないあの方ならば間違いなくアスカのダンジョンを受け入れる。
それどころか、その有効性に惹かれ大いに協力するだろう。
ちなみに、献上品として持たされた日本の酒はすでに国王の侍従達に引き渡した。
今ごろは毒味でもしている頃だろう。
酒も魅力だがアスカのダンジョンはさらに重要な意味がある。
人間のダンジョンマスターであることだ。
この国、いや、世界中探してもこんな事など有り得ない驚愕の事実。
さらに、あの秘書のようなダークエルフが言った言葉。
『ダンジョンはもともと、世界神様が地上の魔力枯渇現象を憂い暗黒神様に解決を依頼したのが始まりです。暗黒神様は生物が持つ魔力に注目され、これらから魔力を回収し強制的に世界へ循環させるためのシステムを考案なされたのです。それがダンジョン。方法としては生物を殺すこと。または魔法を使わせること。強い感情にも魔力が発散されるので恐れ戦かせることが挙げられますね』
これも本当であれば、驚天動地の新発見である。
過去、ダンジョンの研究は色んな国々で行われてきた。
正直、ほとんど分かってないのが現状だ。
アスカのダンジョンを受け入れれば、こうした研究も驚くほど進む。
さらに、彼は一般庶民、特に貧乏なお年寄りや戦災孤児のためダンジョンの力を分けてくれるという。
長い戦争で苦しんだ庶民には救世主的存在になり得る。
まさに良いこと尽くめだ。
何としても、国王を説得してみせる!
決意を新たにする騎士隊長。
だが、肩が凝る。
トリスタンは知性的で人格者であるが本職は騎士という肉体労働者。
事務作業はやや苦手である。
彼が首をコキコキ鳴らし肩の凝りをほぐそうとしてると、ナースゴーレムのイゾルデが話しかけてきた。
「ミスタートリスタン、お疲れですか?」
短い言葉だが、完璧に近い発音だ。
「ああ、少しな」
「では、肩を揉みましょう」
イゾルデはそう言うと返事も待たずにマッサージをはじめた。
「お、これは……凄くいいな」
弱すぎず、強すぎず。広範囲を柔らかな手のひらで押してくれる。
これは至福だとトリスタンは思う。
このゴーレムも国王陛下を説得する材料に十分なる。
「そういえば、アスカ殿は君を介護人として使いたいと言ってたな。他にも出来ることはあるのかい?」
「実践してみましょう。ミスタートリスタン、そこのベッドに仰向けで寝てください」
「了解した」
彼の部屋には簡易ベッドがある。
騎士隊長として王宮警護の仕事柄、時間が不規則になることが多い。
仮眠用ベッドは必須なのだ。
「これでいいか?」
「イエス、ミスタートリスタン。では、寝た切りのお年寄りの排泄物処理の方法をお見せしましょう。まずは小水から」
「お、おう」
いきなり難易度の高い技だが、自分でお願いしたことだから仕方ない。
トリスタンはイゾルデにズボンを剥ぎ取られた。
「小水は普通、尿瓶(しびん)と呼ばれる、瓶の形状をした排尿用の容器で採取します。横になっていて起き上がるのが困難な高齢者や病人が、寝ながらにして排尿する目的で多く使われるものです。ただし、今は無いので私の口で代用しましょう」
「え、ウソ……」
トリスタンはエロかわいいナース服姿のイゾルデにムスコをくわえられた。
良い子は絶対に真似してはいけません。
チュパチュパといやらしい音をたてながら、排尿? のお手伝いをするイゾルデ。
一方、トリスタンはムクムクと起き上がり、カッチカチに固まったムスコが暴発しないよう堪えるので精一杯。
まずい。まずいぞ。
イゾルデの舌使いは絶妙。
あっという間に登り詰めた。
「あっ、あっ、あっ、すまん」
ううっ!
イゾルデの喉に濁流となって流れ込む白い液体。
看護婦ゴーレムは何事も無かったかのように白濁液を飲み込むと微笑んだ。
「┅┅御馳走様でした」
「あ、ああ、ありがとう」
全ての処理が終わりトリスタンは福祉って良いかもと感じていた。
むしろ、ダンジョン福祉って素晴らしい!
そんなことを考えていた時だ。
「わっはっはっは! 入るぞトリスタン。ワシじゃワシじゃ。うまい酒を見つけたのう。話を聞かせてく……」
好事魔多し。
彼の部屋に入って来たのは国王、ティド・エネアス・バーセル・カルトロイア三世その人であった。
そして、イゾルテはその美しい唇から少し白濁液を垂れ流し、トリスタンはまだズボンをはいていない状態……
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