第23話 ダンジョン一日目終了

 俺は何故か毒舌秘書のペトラさんと一緒に寝ることになった。

 原因は俺がダンジョンポイント(DP)で出したベッドである。

 キングサイズ以上の大きさを誇る全てがピンク色の豪華絢爛天蓋付きベッド。

 これに寝てみたいとダークエルフが譲らなかったせいだ。

 冒険者のウィリアムズさんもピンクはちょっと恥ずかしいと身を引いた。

 いや、俺も恥ずかしいけどもう一つのベッドはシングル。


 男二人はキツイ。

 俺は異世界転生にあたって十代半ばくらいに若返っているようだが、それでもそこそこの体格はある。

 加えてウィリアムズさんは冒険者だけあって大きい。


 さすがに無理。

 じゃあ、もったいないけどもう一つベッドを出すかとなった時、女性(ただし、片方は心のみ)二人に猛反対された。

 まず一人は女騎士ブランゲーネさん。


「そんなことに私のDPは使って欲しくありません!」


 いや、あの、ダンジョンマスターは俺なのですが。

 そして、DPはいちおう俺の物……

 でも、仕方ない。彼女は日本のトイレに惚れ込んでしまい、白騎士隊の詰所にダンジョントイレを造るため奮闘中。

 ダンジョンでたくさん魔法を使ってDP集めに貢献してくれた実績がある。

 その意見を無碍には出来ない 。

 もう一人はペトラさん。


「アスカちゃーん、ベッドを造るならお酒をちょうだあい!」


 もう、アルコール中毒の領域だよ。

 まあ、いいか。

 本人も良いと言ってるし、不思議とこの人は俺に無理矢理迫ることは無いだろうって気がする。性的欲情を感じないオカマさんだ。

 まあ、間違いは起こらないでしょう。

 こういう理由で俺たちは同衾 (どうきん)することになったのだ。



 ドキドキする。

 心臓が破裂しそう。

 性的欲情を感じないというのは嘘だった。


 何故こうなった?

 俺があっち方面に目覚めた?

 違う。俺はドノーマルだ。

 じゃあ、何故?


 だって、オカマオッサンだったダークエルフのペトラさんは……

 ベッドに入った途端に女性。しかも、美人ダークエルフに変貌したんだ。

 しかも、今、下着のみなんですよ!

 スゲーよ異世界。

 スゲーよダークエルフ。


「うふふ、驚いたあ?」


 はい、超驚きました。

 妖艶な笑みを浮かべて俺を見るペトラさん。

 こ、これって異世界では普通の事なのか?

 何かこういうの物語で読んだ気がする。アラビアンナイトだったっけ?


「違う😃わん。あたしは暗黒神様にトリックスターとして創造された特別な補佐官なのう。単調な仕事の多いダンジョンマスターを喜ばせるために色んな事が出来るのよん」


 ま、まじか?

 しかし、リアルにすげえな。女性のダークエルフ。

 オッパイもけっこうあるし、腰のクビレもすげえぞ。童貞の俺には刺激強すぎ!

 寝る時はあのエロい鎧を脱ぐのは当然としても、パジャマくらいは着てほしかったよ。

 一方のペトラさんは堂々としたもの。

 晩酌用に出したカルーアミルクと梅酒を、ベッドに寝ながら飲み干しやがった。

 ちょい、おっさん臭いけど美人だから妙に絵になる。

 俺も、ドキドキしながらベッドイン。

 ペトラさんと向かい合う。あっ俺のほっぺにペトラさんの手が……

 誘ってる?

 ねえ、誘ってる?

 返答は無し。

 俺はボロボロになったパジャマをDPで交換してる。だから、パジャマは新品です。ただ、股間の所が突っ張ってきた。やべえ、室内なのにテント張っちゃってるよ。

 何とか心を沈めねば。

 俺はギュッと目を閉じた。

 すると……


「マスターアスカちゃん、あなたは本当に不思議な方なのねん」


 横からペトラさんの静かな声。


「不思議……俺が?」

「ええ、あたしは暗黒神様に創造され、これまでにアスカちゃんを含め七人のダンジョンマスターの補佐官を勤めてきたわあ。その中でもアスカちゃんは初めての事だらけよう」


 アスカちゃんは本当に不思議な方だわあ、とペトラさんは消え入るような声で呟いた。

 しかし、へえ、そうなんだ。俺以外に六人ってことね。

 ベテランだね、ペトラさん。


「今まで内緒にしてたけどう、暗黒神様はあたしにスキル・読心術を与えてくれたわあ。ダンジョンマスターは人語が使えないのも多かったしい、このスキルは意志疎通のために必要不可欠なのう」


 うん、知ってた。

 そういや、ダンジョンマスターは暗黒神の腹心が多いって言ってたね。しゃべれないとか、なんか知能低そうだな。


「たいていのマスターは馬鹿、もとい、単純明快だったわあ。ダンジョンでモンスターを生み出してえ、生き物を殺すだけ。特に人間を誘き寄せ苦しめ止めを刺す 。ほとんどのダンマスはこればかりなのう。でもう、アスカちゃん、貴方はぜんぜん違ったわあ」


 当たり前でしょ。人間なんだから。


「初日から敵であるはずの人間とう、打ち解け仲良くなってえ、逆に守ってもらうまでになったわあ。本当に不思議なのよう。いえ、これはもう奇跡よん。おかげで、あたしの仕事は無くなったわあ。やれる事と言えばマスターをいじり倒すことくらい。うふふ」


 それは仕事なのか?

 ま、まあ、たまたまですよ。最初に来たのが人格者のトリスタン騎士隊長で良かった。


「実はあのイケメン騎士隊長、あたしの前マスターを殺した人間なのう。補佐官であるあたしはマスターが死ねば自動的に消滅再生するのう。だからあ、彼はあたしも殺した事になるわあ」


 ああ、そうだったんだ。あれ、でもトリスタンさんはペトラさんのこと知らない感じだったけど?


「前世のあたしは雌オーガだったわあ」


 種族が変わるの?

 オーガって日本の鬼みたいなモンスターだよね。

 おっかねえ。

 もしかして、ダンジョンマスターに合わせて体を造られてるとか?


「ちなみに、前マスターはスライムなのよん」


 ギャップありすぎでしょ。

 それとも、この異世界のスライムは滅茶苦茶強いとか?


「あのイケメン騎士隊長が投げたナイフで瞬殺したわあ」


 弱すぎ。こんなんで、暗黒神の腹心ができるの?


「おそらくはペット枠かとう」


 ペットを腹心にしちゃイカンだろ。

 ひょっとして暗黒神って友達少ないんじゃ……


「それにい、初日にDPを貯めダンジョン拡張までやってのけたのも貴方だけでよー」


 へえ、普通はどうなんだろ。


「前のマスターは一週間くらい寝てたわねえ」


 ああ、スライムじゃ仕方ないのかな。

 でも食事とかどうしてたの?


「ええ、まずモンスター召喚で角ウサギを出してもらったわあ」


 へえ、それを食べたんだ。

 なるほど、引き籠りでも生きていけるか……


「ううん、角ウサギはあたしが食べたのよう」


 あんたが食ったんかい!

 じゃあ、スライムは何を?


「あたしの排泄物よん」


 おいっ。

 あっ……そういや、この異世界のトイレにはスライムを入れてるんだったな。

 こっちのスライムって排泄物しか食べれないの?


「いえ、何でも食べるのよう。あたしの前マスターもう、角ウサギを食べたそうにしてたからあ」


 じゃあ、食わせてやってよ!


「食べれなくてプルプル震えるのが可愛くてえ、ついつい意地悪しちゃうのよねえ」


 ドエスな性格は元からなのね。


「それに、アスカちゃんは見たことない召喚ばかり。日本のお酒とかトイレとか……本当に面白いお方よー」


 それには俺も驚いた。まあ、今日一日、必死だったよ。


「私は暗黒神様からあ、貴方の命を絶対に守るよう命じられましたのう。それ以外は何もせずとも良いと。でもう、今日のあなたを見て気が変わったわあ。あたしはもっとあなたを知りたいのー。もっともっとあなたと繋がっていたい。だからあ、ダンジョンマスターの補佐官としてえ、あたしの全てを捧げてお仕えしますわあ」


 そう言うとシーツの中でペトラさんがブラを外した。そして、ピトリと俺に近付いてくる。

 上半身裸のペトラさんがだ!

 ああ、俺は今日、童貞を捨てることになるのか。

 じいちゃん、天国で見てるか?

 俺は今から男になる。

 それから、俺にくっついているペトラさんが俺の耳元でこう囁いたんだ。


「さあ、アスカちゃん。御褒美として私の足の裏をなめさせてあげるわあ! これからもっと頑張れば、私のオシッコも飲ませてあげる。もちろん、直接にね! うふっ」


 そして、彼女はベッドの上で立ち上がると俺の顔面に足の裏を乗せてきた。


「ああ、懐かしいわあ。前マスターもこれが大好きだったのねん!」


 オッパイをプルプル震わせながら、グリグリ俺を踏みつける美人ダークエルフ。

 おい、これブラ取る意味あったか?

 嬉しいけども!

 そして、スライムと一緒にすんじゃねえ。

 でも、オシッコの方はお願いします。

 当然、直のやつで!

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