第17話 シスコン登場

 白騎士隊の女騎士ブランゲーネさんの紹介で、彼女の兄であるウィリアムズさんに来てもらった。

 初めて見る冒険者。職業は戦士らしい。

 戦士ってだけあって体格いいよ。

 ちなみにDランク冒険者だと聞いた。

 ブランゲーネさんによれば、Dランクは中堅クラスの冒険者なんだって。

 本当はもっと上を目指せる実力が有るそうだが、趣味にかける時間が多すぎてランクアップに興味が無いんだとか。

 ほう、仕事人間が多い日本人から見るとうらやましい話だ。

 そして、妹思いなお兄さんらしいよ。

 期待が持てるね。


「はじめまして、ダンジョンマスターをやらされている石井アスカです。アスカとお呼びください」

「ブランゲーネの兄のウィリアムズだ。妹が世話になっている」

「いえいえ、こちらこそお世話に」


 和やかな雰囲気。ただ、そこにオカマ性悪ダークエルフが加わるとこうなる。


「あらん、あなたが女騎士ちゃんのお兄さん? 可哀想にい。あなたの妹ちゃんはあたしと同じくこの童貞エロアスカちゃんの性奴隷よう。朝はお目覚めフェラからの強制ファック。昼は衆人環視の中で種付けセックス。そして、夜は壊れる寸前までアナル攻めよう。あたしはともかくう、この女騎士ちゃんはまだ小娘だからあ、もう可哀想で可哀想でえ……さあ、日本のお酒は諦めて妹を連れて帰りなさあい」

「な、なんだと貴様! それは本当か? 俺の大事なブランたんに何をしてくれとんじゃ、ゴラー!」


 ブランたん……ええっと……シスコン?

 あ、ちょ、待って。

 す、すごい力で首閉めないでー。

 マジで死んじゃうから。

 ていうか、何を言ってんだあのダークエルフは?


「な、なにもしてませんよ! だいたい、童貞なのに性奴隷がいるとかおかしいでしょう。全部あのオカマの嘘ですから!」

「ダンジョンマスターの言う事など信じられるかあ!」


 いや、本当ですって。あの毒舌オカマ秘書のペトラさんは俺が困ることなら何だってしますよ。

 大嘘つきです。

 しかも、ドエスなんです。ドエス!


「そして、アスカちゃんはドエムなのう」


 やかましいわ。


「お兄ちゃん、いい加減にシスコンやめてよね。ほんと、はた迷惑な趣味を持っちゃって……家族のみんな、心配してるんだよ!」


 あ、妹のブランゲーネさんが間に入ってくれた。

 マジでシスコンなんだ。

 そして、趣味ってこれかよ。

 初めて聞いたわ、趣味シスコン。


「だいたい上に先輩騎士の皆さんがいるのに、いかがわしい事が出来るわけないでしょ!」

「……それもそうか」


 俺はようやく解放された。

 嘘つきダークエルフのせいで地獄を見ましたよ。


「すまない。妹の事にはすぐ反応してしまう癖があって」

「こちらこそ。うちの毒舌オカマが嘘ばかりですみません」

「はて、あたしは生まれてこのかた嘘を吐いた事などございませんわよう?」


 すでにそれが嘘じゃねえか。

 少し黙っててくれる、ペトラさん?

 後で梅酒みたいに甘くて美味しいお酒を出してあげるから。


「ほ、本当なのん? 嘘だったらアスカちゃんの口の中であたしのベロチューが火を噴くわよん!」


 ハリ千本飲ますより怖いよ。


「黙ってたらね」

「承知なのよん」


 あれ、マジで黙っちゃった。そんなに飲みたいのかよ、お酒。

 まあ、今のうちに話を進めよう。


「もうお聞きになったかもしれませんが、ウィリアムズさんにはこのダンジョンで魔法を使って欲しいのです」


 俺がそう言うとウィリアムズさんが少し申し訳なさそうな顔で言った。


「ブランたん……いや、妹のブランゲーネの頼みだから喜んでやるが、俺は生活魔法しか使えんぞ」

「全く問題ありません。お礼は美味しいお酒ということで良いでしょうか?」

「ああ、それで良い。最近は酒も高くなってな」


 おお、異世界にも物価の変動があるんだ。リアルって感じがしてきた。

 俺はウィリアムズさんをダンジョンの一室に連れて行き魔法を使ってもらった。


「我が内なるマナよ、百の灯火となって闇を照らせ。ケントゥリア・ルシオラ」


 ウィリアムズさんが魔法の詠唱を終える。

 すると、薄暗かった室内が仄かな光に満たされた。

 まるで、百匹のホタルが一斉に光り出したような感じ。


「これ一回で使用マジックポイント(MP)は5だな。約10分くらい持つ。これを続けて放つから、この部屋はしばらく明るすぎて眩しくなると思うが良いか?」

「いえいえ、全く問題ありませんよ。むしろ、ありがたいです!」

「ならば、続けよう」


 こうしてウィリアムズさんは立て続けにホタル魔法(俺が命名)を30回ほど放ってくれた。


 俺が見ているメニュー画面はDPがどんどん増えて260程になる。

 もう一息!


「すまん、MP切れだ」


 ウィリアムズさんの自己申告。

 あちゃー、もう少しだったのに仕方ない。

 無理はさせられないよね。

 そんな時、俺の肩をたたくオカマのダークエルフ。

 何かな?


「……あのう、アスカちゃん。あたしのお酒は?」


 小声で言ってきたペトラさんに俺は即答したよ。


「トイレができない以上、おあずけだね」


 ジト目で睨んでもダメだよ。

 すると、ペトラさんは俺にこんな要求。


「じゃあ、あとはお姉さんが何とかするわん。だからあ、MP回復ポーションをアスカちゃんに出して欲しいのう」


 おい、待て。なんだ、その素敵アイテムは?


「減ったMPを回復するポーションだけどう、それが何か?」


 早く言えよ!

 俺はメニュー画面を開きアイテム召喚を確認する。

 あったよ、ありましたよ。

 ポーション各種。

 なになに、一番高いのでなければ全回復しない?

 つまり、この10DPするやつだな。

 ええ、毒舌秘書に言われるがまま買いましたよ。

 だって早く欲しいもん、トイレ。

 召喚の時はブランゲーネさんとウィリアムズさんが驚いてました。

 分かります。

 このピンクの魔法陣から品物がニョッキリ出てくるのは少し不気味なんですよねえ。

 俺は出てきた小瓶を手に取る。

 へえ、ポーションって青いんだ。

 俺はすぐにペトラさんに渡すと彼女はこんな事を教えてくれた。


「ヒットポイント(HP)回復ポーションは赤いのよう」


 ふーん、材料が違うのかね。

 ペトラさんはすぐにポーションを飲み干すと手を壁にかざす。

 ええっもう撃つの?


「撃ちますとも! あたしのお酒のためにい!」


 いや、トイレのためな。

 こうして、ダンジョンマスターの俺は350ものDPを短時間で手にしたのであった。


「さあ、梅酒より甘くて美味しいお酒を出してえ、アルチューマスター!」


 誰がアルコール中毒じゃ!

 むしろ、それあんただ。

 そして、お酒はトイレのあとな。

 そんな涙目で見てもダメだよ。

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