第14話 ダンジョンにトイレは必要ですか?

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異世界でダンジョンマスターになったので、のんびり福祉の仕事をしたいと思う

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サブタイトル編集

ダンジョンにトイレは必要ですか?

本文編集


 俺はなんとかマリオネット型ゴーレムのイゾルデを引き離してもらえた。ちな、エロナース服着用。

 騎士隊長のトリスタンさんと騎士の皆さんに感謝だ。

 俺では歯が立たなかったからね。

 見かけは華奢な女性なのにパワーだけはレスラークラスじゃね?

 でも、戦闘力はないという。


「なぜ、マスターは喜ばない?」


 あれ、イゾルデって結構しゃべれるのね。まずそこに驚いたよ。なぜかキョトンとした顔。

 人間そっくりだけど、こういう所は分かってないな。

 喜べるか普通、あんなもん!

 衆人環視の中で手込めにされて楽しめるとか、どんだけマゾヒストなんだよ。

 そんなやつがいたら見てみたいわ。


「了解したわん、アスカちゃん! 我が内なるマナよ、大きな鏡となりて愚者を映し出せ。マグヌス・スペクルム!」


 なんかいきなりオッサンダークエロフが魔法の詠唱を終えましたけど……


「これなに?」

「鏡よん。マゾヒストのアスカちゃん」


 うん、俺の目の前の壁が一面鏡張りになったね。


「何でいきなり鏡を?」

「あらん、ドがつくMを見てみたいって言ってたじゃなあい」


 どれどれ、あ、ほんとだ。俺が映ってる。あははは……

 さてと。


「リアクションが薄いわねん! そんなことじゃあ、リアクション芸人の巨匠、出〇先生に追い付けないわよん?」


 どんなに頑張っても〇川さんの真似は無理だし、そもそもお笑い芸人を目指してねえし。

 でも、この鏡は良いな。

 介護施設にはリハビリ用の道具も必要。

 この大きな鏡はそんな場所に最適かもしれない。

 俺がそんな事を考えていると、騎士隊長のトリスタンさんが話しかけてきた。


「アスカ殿、それでは私は王宮に向かう。少し時間はかかるだろうが、必ずや王を説得してみせよう」

「ありがとうございます、トリスタンさん。よろしくお願いします」


 両手で献上用の酒を持ち笑顔で俺に別れを告げる騎士隊長。

 うん、不安だ。

 そうだ、見張りを付ければ良くね?

 俺はダンジョンから出ると死んじゃうし、補佐官のペトラさんは……

 一緒になって飲む未来しか見えねえ。

 そうだ、イゾルデはどうだろうか。

 聞いてみよう。


「なあ、イゾルデ。トリスタンさんの手伝いとかできるか? 荷物代わりに持ってあげたりとか」

「イエス、マスター。問題ありません」

「おいおい、アスカ殿。この程度の荷物は私一人で十分だぞ」

「あ、もちろん、心配してるのはそこではなく……」


 あんたが献上用の酒に手を出さないか心配なんだよ。

 とは言えないので、俺は別の心配を指摘する。


「王様がダンジョンのゴーレムにお年寄りや子供の世話をさせることに不安を覚えないかなと。このイゾルデならパッと見は人間ですし説得力が増すかと思いまして」


 俺の提案にトリスタンさんは少し考えたあと同意してくれた。


「うむ、いいかもしれんな。では、数日お借りするがよろしいか?」

「ええ、お願いします。イゾルデもそれでいいか?」

「イエス、マスター。みごと、大役を果たしてみせます!」


 こうして二人はダンジョンの階段を上り、王都ローエングリンの王宮へと歩いていった。

 いいなあ、王宮。

 どんな所なんだろう?


 二人の背中を見送りながら、俺はふと日本の出来事を思い出す。

 じいちゃんに連れられ皇居を見学した時の事を。

 ちゃんと予約すれば一般人でも見学できるんだよね。

 懐かしいな。


 まず、桔梗門入り口前で色々チェックされたあと、普段入る事の出来ない『吹上御苑』とか『西の丸』とか見たんだよなあ。

 江戸城跡の富士見櫓とか宮内庁とか宮殿東庭とか、普段テレビでしか見れない場所も見学できた。


 お土産もじいちゃんが買ってくれたなあ。

 俺にはカステラ、じいちゃんは日本酒を選んでたっけ。

 こっちの異世界でも一般参観とかあんのかな?

 いつか俺も異世界の王宮へ行ってみたい。

 そんな事を考えていたら白騎士隊の小隊長クルヴェナルさんが話しかけてきた。


「では、アスカ殿。我々はトリスタン隊長のご命令通りこのダンジョンを守るため外で待機していよう。そうでないと一般人や他の騎士が入ってくるやもしれんからね」


 実はクルヴェナルさんたちは一般人の通報を受けて駆け付けたらしい。

 トリスタン騎士隊長が入って結構経つのにダンジョンから出てこない。

 殺されたのではと心配したらしい。

 すいません、みんなで酒を飲んでました。


「何かあった時のため、こちらのブランゲーネを残しておきます。我らに用がある時などは彼女に言っていただければ」

「クルヴェナルさん、お気遣いありがとうございます。それではブランゲーネさん、よろしくお願いします」

「不束者ふつつかものですが、よろしくお願いします!」


 こうして五人の男性騎士がダンジョン入り口付近で警戒にあたり、俺たちはイスとテーブルを出した部屋でしばしくつろいでいた。

 そして、こんな時こそ行きたくなるんだよねえ……


 トイレ!

 やべ、マジで我慢できねえ。

 みんなこんな時どうしてるのよ。


「あらあら、アスカちゃーん、こんな時っていうのはどんな時なのう? お姉さんに詳しく教えてちょうだーい!」

 こいつ、分かってて言ってるな。

 ほら、ニヤニヤしてるし。

 このオカマ毒舌秘書が心を読む事を知らない女騎士のブランゲーネさんが不思議そうに見てるじゃねえか。

 本来であれば女性の前で出す話題じゃないけど緊急事態だ。それにここは異世界で彼女は騎士。つまり、軍人だ。このくらいの話題で恥ずかしがる事もないだろ。

 俺は意を決して話し出す。


「いや、ダンジョンでトイレとかどうするのかと思って」

「キャーー! 女性の前で下ネタとかエッチー! セクハラなのよう。この童貞エロマスターはついにあたし以外の女性にまで手を出すつもりみたーい!」


 おい、やめろ。ブランゲーネさんがドン引きしてるぞ。


「すいません、ブランゲーネさん。このオカマ秘書のダークエルフは少し頭がおかしくて」

「あ、いや、お気遣いなく。それにしても、あなたはダンジョンマスターなのにトイレ事情は知らないのですか?」

「はい、数時間前にこちらに転生したばかりのようで」

「まあ、それは不安ですね」

「ええ、なぜか秘書がこれですから」


 俺とブランゲーネさんは残念ダークエルフを見つめた。

 おい、ここは恥じ入るところであってドヤ顔するところじゃねえぞ。


「私はダンジョンは初めてなのですが兄が冒険者で何度か潜っています。兄の話ではダンジョンは死体や剣や防具に至るまで全て呑み込むとか。当然、排泄物も適当にすますと言ってましたよ」


 ブランゲーネさんの説明に俺は愕然とした。

 いやいやいや、ムリムリムリ。

 小ならまだしも大は無理だ。

 例えすぐダンジョンが呑み込むとしてもだ。


「アスカちゃん、お姉さんに任せてえん」


 おお、何か秘策が?


「ダンジョンマスターの排泄現場は補佐官兼任秘書であるあたしがバッチリ見届けさせてもらうわあ。マスターを心から愛する妻としてねん!」


 妻じゃねえし。

 よし、決めたよ。

 ベッドの前にトイレだ!


「ええっ、アスカちゃんったら童貞なのにいベッドよりトイレでするのが好きなのう? こ、これはお姉さんもビックリな変態さんなのよう。はっ、もしや、あたしは肉便器としか思ってもらえてないってことう? わ、分かったわあ。このペトラ、見事アスカちゃんの肉便器役を務めてみせまるわあ!」


 オッサンダークエロフは黙ってろーー!

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