第13話 ダンジョン福祉施設化計画の第一歩
「我が内なるマナよ、百の炎となりて敵を燃やしつくせ。ケントゥリア・イグニス!」
「我が内なるマナよ、火の玉となりて敵を燃やせ。イグニス!」
「我が内なるマナよ、点火せよ。インフラマラエ」
「我が内なるマナよ、命の水となれ。アクア・ヴィテ」
☆
ダンジョンの一室を使って白騎士隊の隊長トリスタンさんが魔法を撃ちまくっている。
そして、クルヴェナルさん以下、騎士の皆さんも魔法を使ってくれています。
なんでも、攻撃魔法を使えるのはここでは二人のみらしい。
一人は当然、トリスタンさん。
もう一人は先ほど俺やトリスタンさんに火魔法を撃った人。
名前をブランゲーネ。驚きの女騎士である。ちなみに、入隊してまだ三ヶ月。期待の新人だとか。
いたんだ、女騎士……
俺が今まで気付かなかった事でお分かりだろうが、この異世界では女騎士と言えど皆と同じ鎧を着けてるんですよね。
鎧の胸辺りがちょっと女性らしさを強調してますが、まあそれだけです。
日本のアニメやゲームみたいに水着のような鎧とかないよね。
そう、ビキニアーマー。
いやあ、オカマのダークエルフがエロい鎧を見てこれが異世界の普通かと勘違い。
まあ、そりゃそうだよね。
あんなん、オークやゴブリンにエッチなイタズラしてくださいって言ってるようなもんだ。
普通の世界には有り得ないよなあ。
日本人の俺的にはガッカリしたけど……
そんなことより、女騎士ブランゲーネさんだ。
彼女は十代後半でカワイイ系の女性。
男でも難しい体力テストも楽々パスして入隊したらしい。
当然、頭もいいんだって。
性格も優しく、たちまち白騎士隊のアイドルになったとか。
こんな人があの凶悪な火魔法を撃ったなんて、怖いよ怖すぎるよ異世界。
それ以外の人は何をしてるかというと、生活魔法ってのを使ってます。
ライターの火程度の小さな火を出したり、コップ一杯くらいの水を出したり。
しかし、ショボくとも魔法。
これでもダンジョンではちゃんと魔力が吸収され、ダンジョンポイント(DP)に変換される。
俺はオッサンダークエルフが熟睡中の部屋に移動して、椅子に座りメニュー画面を見ています。
今、手持ちのDPは100を超えました。
すぐに王様献上用のお酒と交換して残りDPは68。
ここで魔力をほぼ使いきった騎士さんたちが俺のいる部屋に帰ってきた。
「アスカ殿、悪いがそろそろ限界だ」
「いえいえ、十分ですよ。こちらに王様への献上品を取り分けてます」
「おお、すまんな」
俺は自分のとなりの椅子に置いた各種お酒をトリスタンさんに見せる。
トリスタンさんは空いた椅子に腰かけると椅子の上の献上品を確認しニヤリと笑ってこう言った。
「王宮へ行くまでに減ってなきゃ良いが」
ジョークのつもりでしょうが笑えませんよ。
目の前のテーブルで寝ている毒舌ダークエルフ共々、呑兵衛のんべえは酒を前にすると理性を失いますからね。
俺のじいちゃんが晩酌の時によく言ってましたよ。『酒は飲んでも飲まれるなよ』ってね。
俺の目の前でちょっとイビキかいて寝ているペトラさんを見ると、こうはなるまいと思う。
その時、山が動いた。もとい、呑兵衛が動いたの間違いでした。
「あらん、アスカちゃんったらいやあねえ。あたしの名前は暗黒神様に付けていただいたペトラよん。ノンベーなんかじゃないわあ。それでえ、アスカちゃん、もう良いのかしらあ?」
毒舌オカマ秘書が起きやがりました。
静かで良かったのに。
「良いって何がだよ? DPなら貯まった。あんたが寝ている間にな」
精一杯の皮肉だ。
ため息を吐く俺を見て、オッサンダークエルフがすまなそうな顔をする。
「あらん、ごめんなさあい。童貞のアスカちゃんのヘタレ具合を見くびっていたわあ。てっきりい、あたしの睡眠中に手を出しているものとばかりい……じゃあ、もう一度眠るからあ今度こそあたしで童貞を卒業してちょうだあい。奥手なのもほどほどにねん」
「できるかー!」
何を言ってんだ、このオカマ毒舌秘書は?
こいつ、絶対にエロいわ。
ダークエロフだ。ダークエロフ!
そもそも、俺はそっち方面はノーマルだ。
しかし、いいタイミングで起きてくれたのも事実だ。
コキ使ってやろう。
「ペトラさん。起きたんなら魔法を使ってくれない?」
「あらん、またパジャマが欲しくなったのん? アスカちゃんの裸もワイルドで良いのにい」
はい、俺のパジャマは騎士のブランゲーネさんに撃たれた火魔法のせいでボロボロです。
でも、今欲しいのは別の物だ。
俺の野望を実現する必需品とでも言おうか……
「違うよ。俺が欲しいのはベッドだよ」
「まあ、ついにあたしを手込めにするわけねえ! 嬉しいわあ」
「いや、しないから。つーか、できんから」
ペトラさんの魔法を食らった今だから言える。
こいつには勝てん。絶対にな。断言する。
魔法ってほんとズルいよ。
ついでに言えばオッサン相手に立たない。いや、マジで。
「あらあら、じゃあ、イゾルデを使うのねえ。分かるわあ。ヘタレの童貞エロマスターはまず人形で練習したいというわけねえ?」
「童貞言うな! いや、そっちの性癖も今んとこないから安心しろ」
俺が初めてDPを使って出したマリオネット型ゴーレム『イゾルデ』は人間そっくりなエロい体はしてるんだけど……やっぱり意志があるからさ。
ラブドールみたいな人形だったら危なかったかも。
ナース服で胸元がパカッと開いてミニスカートでパット見は人間にしか見えない。いや、よくよく見ても俺の好みのドストライク看護婦さんなんだけどね。
「アスカちゃんったら、我慢は体に毒よう。さあ、イゾルデ。エロマスターにご奉仕をしなさあい!」
「イエス、ペトラ」
ずっと、部屋の隅に立っていたナース服ゴーレムが俺に抱きついてきた。
す、すげえ力だ。
勝てねえ。
俺はこいつにも絶対に勝てねえ。
そして、オッパイもけっこうデカイ。
ちょ、俺をお姫様ダッコしてどこに行くの……
さっきまでオッサンダークエロフが寝ていたテーブルかよ。
そこに俺は寝かされると。
ああ、ベッド代わりね。
アダルトビデオで見たことあるよ。
テーブルの上に寝かされてセックスするやつ。
俺たちの場合は男女が逆転してるけどさ。
エッチなナース服マリオネット型ゴーレムには心引かれるものがあるが、周囲の視線がすごく気になる。
ボロボロだったパジャマがあっという間に剥ぎ取られていく。
ええっズボンも脱がされた。
どこ、握ってる!
これはヤバい。手つきが気持ちよくて後ろ髪引かれるが……
ここはお預けだ。
「イゾルデ、ダンジョンマスターとしての命令だ。待て!」
「ノー、マスター」
うそ……拒否されたぞ!
「ちょ、待て、マスター権限は俺にあるんじゃ無かったのかよ?」
「ぐふふふ、アスカちゃんったらやあねえ。名付けしたモンスター。つまり、ネームドは飛躍的に能力が向上するのよう。体力もだけどう、知力も上がるのう。普通のモンスターにはない圧倒的な知恵が付くのよん。もちろん、それには性的な方面も含まれるわあ。イゾルデは、今エッチなご奉仕をエロマスターが望んでると判断したわけなのよん」
こいつも心を読むのかよ!?
待て、いくらなんでも衆人環視の中じゃ嫌だ。
俺は思わず叫んだよ。
「助けて、トリスタンさん。イゾルデに犯されるー!」
そしたら、じっと俺たちを観察していたトリスタンさんがこう言ったんだ。
「アスカ殿、これが福祉か? 子供やお年寄りには少々過激では?」
これは福祉ではありませんよ。
風俗です。
何でもいいから、とにかく助けて!
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