第9話 アイテムを初ゲット

 性悪オカマダークエルフのイジリに心が折れそうになりながらも、俺は何とか平静さを取り戻しメニューからスキル画面を開いた。

 そこには召喚の文字。

 その召喚を押すと召喚可能モンスターと召喚可能アイテムの文字が出てきた。

 当然、召喚可能アイテムを押す。

 すると今度はアイテムの一覧表が出てくる。


 最初は武器や防具。

 次に宝箱用アイテム。

 世界樹の葉とか不死鳥の羽とか溶岩の結晶とかゲームで見たことあるようなファンタジー感溢れる名前が並ぶ。

 それから家具や日用雑貨ときて飲食物のコーナーになる。

 お、さっき確認した酒がちゃんと出てきた。

 ウイスキーは20ダンジョンポイント(DP)のまま。

 良かった。

 俺はトリスタンさんと頷き合うとウイスキーボタンを押した。

 さあ、いよいよだ。


 あれ、召喚できなかった。

 何故って?

 はい、画面が切り替わり色んな銘柄が出てきたからです。

 おお、選べるんだ。ちょっと感動。

 そして、全部がDP20で交換できるのね。

 分かりやすくていい。

 見るとウイスキーにも色んな品がある。


 例えばよく聞くサ〇トリー 山崎12年とかニ〇カフェモルトとかジョニーウォ〇カー黒ラベルなんて物もある。

 あと、聞いたことあるような無いようなウイスキーも。

 例えばマッカラン1946年とかグレンフィディック1937年とか……

 さて、悩むところだが王様に献上するのだ。美味しいものが良いだろう。

 俺は飲んだことあるウイスキーでウマイと思ったキ〇ンビール『富士〇麓』をチョイスした。


「じゃあ、トリスタンさん。俺が美味しいと思ったこのウイスキーで良いですかね?」

「ああ、すべて任せる」


 俺は富士〇麓を押した。

 すると数量はと聞かれたので1を押す。

 手持ちのDPは全部で109。何個も交換したら他のが手に入らなくなる。

 すると、今度は送り先の選択画面が。

 アイテムボックスと直接入手の2項目。

 何だこれは?


「何だこれは? と聞かれたからにはお姉さんがお答えするわあ。有能秘書として。うふふ。まずう、アイテムボックスとは暗黒神様が発明された私物等を亜空間に収納できるスキルのことよん。ダンジョンマスター特有のチート能力ねえ」

「ちょっと待って。さっきメニュー画面のスキルのとこにアイテムボックスなんて無かったけど?」

「ああ、それはレベル不足よん。愛するアスカちゃんは低能、もとい能力が低いのよう。だからあ、使えないスキルなのう」


 言い直す必要あったか?

 あっ、良く見たらスキルのとこにアイテムボックスって書いてある。でも、字がすごく薄いわ。これって、まだ使用できないって意味か……

 俺は念のためアイテムボックスのところを押してみた。

 反応なしだ。


「もう、アスカちゃんったらあきらめ悪いんだからあ」


 毒舌ダークエルフのペトラさんが実に良い笑顔を見せてくれる。

 うん、こいつドエスのオカマだな。


「まあ、アスカちゃん! あたしたちの相性は最高ねえ。すぐに結婚しましょうよん!」


 うん、俺はドエムだからね。って、違うわ!

 俺は秘書を無視して直接入手の文字を押した。


「おお、アスカ殿。何か光ってるぞ」


 トリスタンさんが地面に出来たピンク色の魔法陣を指差し驚いている。

 俺もさっきマリオネット型ゴーレムのイゾルデを召喚したときにビビりましたよ。

 このピンク色が怪しい感じなんですよね。

 あ、でもイゾルデの時より魔法陣が小さいな。

 召喚した物の体積に合わせてるのかな?

 俺はチラリとペトラさんを見るが、オカマはニヤリと笑っただけで何も答えなかった。

 こいつ、いつも俺の思考を読んでいるわけじゃないのか?

 役たたずめ。


「違うわよん。ただ気分がのらなかっただけよん。役たたず? とんでもないわあ。あたしほどアスカちゃんをストーキングする有能な秘書はいないわあ。会議の調整。会食手配。出張管理。性欲処理。全てあたしにお任せよう!」


 うん、まだ一度もしてもらった事ないね。

 ていうか、ストーキングすんな! だいたい、出張管理ってなんだよ。俺、ダンジョンから出たら死ぬんだよね? ひでえな、このオカマダークエルフ。

 そうこうしてるうちにピンク色の魔法陣が消え、代わりにウイスキー『富士〇麓』がダンジョンの床に鎮座していた。

 しかも贈答用の箱つきだ。これは嬉しい。


「おお、本当に出てきた。ダンジョンマスターの力はスゴいな」

「じゃあ、トリスタンさん。他のもどんどん出しましょう」

「よろしく頼む」


 俺は次に梅酒を押した。

 DPは5。いいね、経済的だ。

 しかも梅の実入りで六本入り。

 これにしよう。

 さらりとしててウマイんだよなあ。

 こちらもピンクの魔法陣から贈答用の箱つきで出てきた。

 まるで通販の超便利バージョン。

 異世界に来て良かったのかも。


 さて、俺は最後の献上品になるビールを押した。

 DPは10。

 ウイスキーに比べてちょい高くね?

 あ、でも詰め合わせだ。

 それでもまだ高いよな。

 こうなりゃ、一番量があって高そうなのを……


 これなんて良いんじゃねえか?

 ご当地ビール飲み比べセット、48本入り。

 うん、これにしよう。

 すると、その時、ペトラさんからこんな提案が。


「でもう、これが本当に人間の王への献上品にふさわしいかあ味見したいわあ。ねえ、アスカちゃん、あたしたちの味見用にビールの数量は2でお願いしたいわあ」


 いや、ペトラさん。飲みたいだけだよね?

 俺が半目でダークエルフを見てると意外なとこから彼女の助っ人が登場する。

 そう、騎士隊長のトリスタンさんだ。


「王に献上する時は王宮所属の毒味役がいるので大丈夫なのだが、私もダンジョンマスターの力を説明する時のために何か試飲したいものだな」


 なるほど、一理あるね。

 実は俺も飲みたいんだ。

 この部屋、さっきの魔法で暑いしね。

 あ、でも、冷えてないビールはちょっとなあ。


「あらん、ビールってお酒は冷やすと美味しいのねん? なら、簡単よう。ボタンを押すときアスカちゃんが望めば冷えたビールが出て来るからあ!」


 オカマがソッコーで言ってきたな。

 よっぽど酒が飲みたいんだろう。仕方ない……


「じゃあ、ビールは二箱で。一つは俺たちの試飲用にキンキンに冷えたやつ」


 俺はご当地ビール飲み比べセットを押した。

 出てきた、出てきた。

 ピンクの魔法陣から大きめの箱が二つ。

 一番上の箱はひんやりしてる。


「ねえ、アスカちゃん。立ったままも嫌だからあ、イスとテーブルも出しましょうよう!」


 にこやかに笑って言うペトラさん。

 こいつ、本格的に飲みたいんだな。

 でも、福祉施設を始めるなら、ベッドとかパジャマとか他にも色々必要だろうしね。椅子と机も必要か。

 そう考えてた俺だが、ふと、自分の状況に気付いてしまう。

 燃えたパジャマ。辛うじて下半身は隠せてるけど、油断するとヤバい状況だ。


「それより、俺の服が先だろ!」

「いやん、アスカちゃん。今のワイルドな姿もお似合いよん。それにい、飲むのに服は必要ないわあ。でもう、イスとテーブルは絶対に必要なのう。だからあ、パジャマは後にしてちょうだい!」


 目が怖い。俺、あんたの魔法のせいで半裸なんだけど。それに、パジャマ限定? 今後を考えるとパジャマ以外の服も欲しい。


「絶対にイスとテーブルが先よう。アスカちゃんのパジャマはイスとテーブルのあまりでおなしゃす!」


 ダメだ。オカマに勝てる気がしねえ。俺はまたしてもダークエルフに押し切られた。

 まずイスとテーブルを出し、その後で服をチョイス。

 ちなみにイスとテーブルセットは、ペトラさんが強引に豪華なやつを主張して60DPである。

 残りDPは4。


 服を探すと何故か防具の所にあった。

 けっこう高い。

 選択肢は一つしかない。

 それは、4番目に安い服。

 パジャマだ。


 ちなみに一番安い服はゴブリンの腰巻き1DP。

 次に安いのがオークの腰巻き2DP。

 その次に安いのがオーガの腰巻き3DP。

 誰が着るんだ、こんなもん?


「ゴフリンの腰巻きもアスカちゃんに似合ってたかもう。ワイルドなアスカちゃんも素敵なのにい」


 やかましいわ!

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