第11話 借りたものは返さないといけないよな?

アルフレイが望んでいたはずの彼らは借金の取り立てやだったのだ。もちろん、彼らがこの時期に取り立てにやってきたのには理由がある。


「借金?いったい何の話をしている?そんなもの、私がしているわけがないだろ!」


「まぁ、あんたはしてないわな。そこにいる女の父親の借金なんだから。」


そんな彼らの言い分にタニラは驚きの声をあげる。


「はぁ~、借金。そんなものがあるわけないでしょ!お父様は生前、莫大な財産を所有していたのよ!そんなことがあるわけないでしょ!」


「何を言っているんだ?お前の父親に莫大な財産?そんなものあるわけないだろ、お前の父親にあるのは借金だけだ。」


そう言ってコワモテの彼がタニラに差し出したのは奇しくも先ほど、兵士から奪い取った書類と同様のものだったのだ。


「こ、これはさっきと同じ書類!そんな、じゃあお父様の財産は本当にないの?」


「ふざけるな!おいタニラ、どういうことだ。僕はお前が一生かかっても使いきれない金を手にするっていうから結婚したんだぞ。」


彼らも役所からの書類を用意したことによってようやく二人は財産などないことに気が付き始める。


「なんですって!私と結婚したのはお金の為だったというの!私を愛していたわけじゃないの!」


「お前を愛している?そんなわけがないだろう。誰がお前みたいな性格のきつい女なんて相手にするか!金のためにきまっているだろうが。」


二人は滑稽なことに縄で縛られながらも互いの結婚生活がまやかしであったことに対して喧嘩を始める。しかし、男たちにとっては二人が喧嘩をしていようが全く関係がないのだ。


「おい、お前たちの喧嘩なんて俺たちは見に来たんじゃないんだよ。さっさと金を返せ!」


「そ、そんなのないわよ。お父様の遺産が借金なら、お金なんてあるわけないじゃない!」


「ならお前じゃなくてもいいさ、お前の旦那に返してもらう。」


そう言うと彼はアルフレイに近づき、にっこりとほほ笑む。


「なぁ、あんたらは夫婦なんだから奥さんが困っていたら助けてやるって言うのが筋だよな?というか、夫婦なんだから借金も共有だろ?さっさと金を払えやコラ!」


「ひ、ひっ。そ、そ、そんな金がうちのあるわけないだろ。僕の実家だってかなりの貧乏なんだ。こんな借金は払えるわけがない。」


そんなアルフレイを見て、男は少しだけ考えこむようなそぶりを見せる。しかし、それは男の演技だったのだ。すでに彼らが金を払えないことなど男は知っているのである。金を返せない、そんな彼らが提案することなど分かり切ったことだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る