第12話 期限切れ

「そうか、夫婦そろって金が払えないって言うのなら体で払ってもらうしかね~よな。なにが良い?選ばしてやるよ?変な趣味の貴族に売り飛ばされたいか?それとも死ぬまで過酷な労働をするか?あぁ、確か最近は人肉を欲しがっている貴族もいたな?そいつになら高く売れるんじゃないか?」


男の異常ともいえる選択肢に二人は体を震わせ始めてしまう。しかし、アルフレイは突然名案を思い付いたと、笑い始めるのだ。


「ははははっ、そうだ!これで助かるぞ!」


「何だ、あまりの恐怖に頭でもおかしくなったのか?」


「何を言っている、この僕がおかしくなるわけがないだろう。バカなお前たちは知らないだろうが、天才な僕は知っている!いいか、よく聞け、相続は放棄というものができるんだ!つまり、借金である遺産は放棄を行うことで全部チャラにできるんだよ!」


アルフレイは高らかに叫ぶがそのバカさ加減にシーラは我慢できず、笑い出してしまう。


「ぷっ、あははっ、あはははははっ。」


「な、何がおかしいんだ!無礼だぞ!」


「だって、まさかここまでバカだとは思わなかったんですもの。それに、そこまで自信満々に言ったのであれば知っているはずですよね?遺産の放棄はお父様が亡くなってから3か月以内にしか行えないと。」


「まさか、まさか、まさか!おい、お前の父親が死んで今日は何日目なんだ!」


アルフレイは何かを理解してしまったのか、すぐさまタニラに確認を行う。


「へっ、い、いえそんなことは気にしていないので分かりません。」


「分からないだと!自分の父親の死んだ日が分からないのか!」


「今日でそいつの父親が死んでから3か月と7日だよ。もうわかっただろ、俺たちが何で今日になってお前たちに取り立てに来たのか?」


男たちが取り立てにやってきた理由など一つしかないのだ。彼女たちが借金があることに気が付いてしまえば最悪は遺産放棄でチャラになってしまう。だからこそ、放棄が行えない3か月の期限が過ぎてから彼らはやってきたのだ。


いくら頭がお花畑の二人でも、ここまで言われてしまえば気が付いてしまう。ようやく気が付いたのだ、自分たちがどうにもならないところまで追いつめられているということを。


「そ、そんなの卑怯だぞ!無効だ、こんなのは無効だ。」


「そうよ、こんなの詐欺だわ!い、今すぐに遺産は放棄するから借金はなしよ!」


そんな自分勝手な言い分だけを述べる二人についには男はキレてしまう。


「黙って聞いてりゃ、なんだおい!俺たちのやっていることが詐欺?いまさら遺産を放棄する?俺たちのやっていることは合法だし、遺産の放棄は無理なんだよ!いい加減現実を見ろや!


知らなかっただと、だから何だ!法律っていうのはみんなを守るためにあるんじゃないんだよ、法律に詳しくないやつは守ってくれないんだよ!分かったらさっさと、自分の何を売るのかを選べ。」


先ほどまでは威勢が良かったタニラでさえも男の恐ろしさに泣き出してしまうのであった。

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