X日目

第32話 グラウンド


 雲なき澄み切った青い空。

 さんさんと輝く太陽の元、緑の整った芝生のサッカーグラウンドには、活気づいた声が飛び交っていた。


「いっけっー! 決めろっ!」


 グリーンフィールドのベンチ傍で声を上げるのはそこでボールを蹴って試合を行うチーム監督。

 応援席では父兄たちが大きな声を出して、チームを応援する。

 そこにはヨウスケの家族もいた。


「パス!」


 ハヤトはチームメイトから受け取ったボールを蹴り、向かい来る敵を見事なボールさばきでかわしていく。

 そしてここだというポイントで、思いっきり蹴りこんだ。

 まっすぐ宙を切ったボールは、キーパーの指先をかすめてゴールへと吸い込まれる。


 その途端歓声が沸き上がるのと同時に、試合終了を告げる笛が鳴った。

 ハヤトは息を切らして膝を地面につく。


「うおおおおおおおおおお!」


 今までに出したことのない雄叫びをあげると、チームメイトたちがハヤトを囲んだ。


「やったよ、ヨウスケ……俺たちの優勝だよ……」


 ベンチには、ヨウスケが着る予定だったユニフォームとヨウスケが写った写真が置かれている。

 それに目をむけて、ハヤトは一筋の喜びの涙を流した。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る