第19話 さつきは、六月?

  旧月名と、今の月名で、季節感が一番おおきく変わるのが、「五月」……梅雨つゆの季節です。


 現代の「ごがつ」は、新緑の、晴れやかな季節です。

 ところが、古典の「さつき」は、梅雨時つゆどきの、暗くじめじめした季節のこと。

 現代の、六月のことです。


 (……細かいことを言うと、年によって日が変わってくるのですが、アバウトに六月でいいと思います……)



 古典では、化け物や妖怪が出るのは、五月(さつき)と、相場が決まっています。

 源頼政よりまさのヌエ退治も、五月(さつき)でした。


 暗い、湿度が高い……

 こうした要素に加え、気温が高くなって「物が腐りやすくなる」という要素があります。

 冷蔵庫のない、昔の食環境では、食中毒も多発したことでしょう。

 こうしたことから、五月(さつき)は、別名、「毒月」とも呼ばれます。


 筆者はいつも、旧暦カレンダーを見て、五月(さつき)に入ると、お米を炊くときに酢を加えたりして、食中毒対策をはじめます。


 昔の人は、食中毒も、化け物のしわざと思ったことでしょう。





 そういうわけで、五月(さつき)に関する言葉は、誤解しやすい単語が多いので、ピックアップしてみますと……



五月雨 【さみだれ】 …… 梅雨のことです。


五月晴れ 【さつきばれ】 …… 梅雨の合間に、めずらしく晴れ間がのぞき、少し湿気を含んだような、雨に洗われたような、きらきらした晴れ模様のことです。


五月闇 【さつきやみ】 …… 梅雨時の厚い雲に覆われて、月が差さない、暗い闇夜を言います。



「さつき」は、六月。


……ちょっと複雑な考え方ですが、古典を読まれる方には、季節感の一致のために、ひと月ずらして覚える方法をおススメしています。

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