52点目 「クリスマスの夜」         【12/30(金)】

 さて、今年もいつの間にかもう年の瀬。

 寒い日が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 バタバタしていて、ちゃんと25日に更新しようと思っていたのに、あっという間にもう大晦日直前。

 ということで、時季外れではありますが、本日はクリスマスのお話になります。

 これでこそ、タカハシクオリティ(笑)

 最後までグダグダではありますが、もしよろしければ、本日も最後までおつき合い頂けましたら幸いです。



 さて、クリスマスイヴといえば、年の瀬を前に世間が一段と賑やかになる日。

 ケース屋さんや某赤いチキン屋さんなど、飲食業は大忙しな所が多いですが、コンビニもこの日は大忙し。

 実はコンビニにとって、この日は一年でも屈指のかきいれ時なんです。

 この日は単純に人出が多く、深夜までそれが続くというのも大きな原因なのですが、何よりもケーキとチキンがよく出る日なんです。コンビニでケーキをお買い求めになる方はまだまだ少数派かと思いますが、それでもコンビニのケーキはそれなりに品揃えがあり、割と売れます。

 ホールケーキはもちろん、普段はコンビニスイーツが並ぶ棚にもカットされたケーキがズラリと並ぶんです。

 あと、チキンもよく出ますね。

 この日のフライヤーは終始フル稼働です。その売れ行きは、我々の店舗ではわざわざ販売用の什器がこの日だけ増設されるほど。

 もっとも、クリスマスに全てのコンビニが忙しいかというと、結構差がある気がします。

 店舗の立地、客層に左右されることはもちろんですが、オーナーさんがそういうイベントに積極的でないとただの何の変哲のない忙しい日になりがちです。

 あと、ケーキなどの予約の件数が多いか否かでも結構変わりますね。我々のオーナーは、こういうイベントをガチる人です(笑)

 そして、ケーキの予約件数もこれまた結構多いんですよねぇ。それに加えて、当日売り用にホールケーキも売り場に並べてますから、合わせると結構な量になります。このケーキの検品、タカハシもやったことがあるのですが、結構骨の折れる作業です。

 さて、そんなこんなで迎えるクリスマスイヴ。

 この少し前辺りから、店員はもれなくコスプレをさせられます(笑)

 サキちゃんなど他の店員は基本サンタなんですが、タカハシは全身トナカイの格好をさせられてました。

 この日ばかりはタカハシも「トナカイさんだー」と方々で言われて人気物です(笑) 仕事以外で着たいとは思いませんが、正直子どものお客様にも大人のお客様にも笑っていただけて注目もされるので、まぁ結果オーライなのかなぁ、と思っています。

 イヴ当日はいつもより店員を増員して、店の外でもケーキを売ったり戦場のような忙しさです。

 ありがたいことに、当日はケーキとチキンを食べさせてもらえるんですが、正直時給の方を上げてくれないかなぁ、と思うぐらいの忙しさです。

 それも一段落して、少し客足が落ち着いてくるのが十時過ぎ。

 この辺りからいらっしゃるお客様達というのは、色々と人間模様が垣間見えるようで、店員として考えさせられるような時もあります。



 あれは十時少し前だったでしょうか。

 三十ぐらいの男性の方が、ケーキ売り場の前で何やら探し物をされているようでした。傍にはお子さんが二人。

 先に気づいたのは、私ではなく一緒に入っていたサキちゃんでした。

 「ねぇ、あのお客様ちょっと……」

 そう言ってサキちゃんに目配せをされて、私が様子を見に行くことに。

 「お客様、ケーキをお探しですか?」

 「はい」

 「大体どのくらいの人数でお召し上がりになる予定でしょうか?」

 「子ども含めて、六人かな」

 「それでしたら、五号サイズのケーキがオススメですが……」

 「できれば子どもいるから、上にイチゴが乗ったショートケーキがいいんだよね」

 その時もう既に当日売りの分のショートケーキは売り切れていました。

 「そうなりますと、既にカットされた物でのご用意になってしまいますね」

 「やっぱりそうなるよね」

 お客様の顔を見て、私は直感的に何やら訳アリのように感じました。

 私は、ちょっと上に物に確認してまいりますね、とお伝えしてその場から離れ、結局後の対応は残っていたオーナーにお願いすることになりました。

 その後の結果はオーナーから聞いた話になりますが、このお客様、ケーキを買い忘れて仕事終わりに急いでコンビニにいらしたのだそう。事情を聞いたオーナーの機転で、翌日用の在庫を特別に回して販売することで落ち着いたとのことでした。

 そしてそれから更に二時間後。

 もう日付が変わりそうな時間でした。

 この時間にまでなると、もう普段とそこまで変わらない感じになります。

 サンタのサキちゃんと、トナカイのタカハシは、レジ中で二人揃って作業をしていました。

 店内にはお客様がお一人。四十ぐらいの女性の方でした。

 そのお客様は店内に入るなりかなりお高めのチョコレートケーキのホールをカゴに入れられました。

 その時から二人揃ってお客様の様子を窺っていたのですが、そのまま店内を見て回られ、いくつかお買い物をされているようでした。

 そして、そのままレジへ。

 レジに立ったのはサキちゃんでした。

 横からスキャンしている物を見ると、ケーキの他には、紙皿や紙コップ、飲み物のペットボトルなど。誰がどう見てもこれからパーティーをしようとしてる方のお買い物でした。

 正直あまりそういったことをなさるような出で立ちには見えないお客様だったので、私は内心驚きながらも袋詰めの補助に入りました。

 サキちゃんが最後にスキャンしようとしたのは、十本入りの使い捨てのフォーク。やはりこれからケーキを召し上がるのでしょう。お節介かな、と思いながらも、私はお客様に声をかけさせていただくことにしました。

 「あの、こちらのフォークで宜しければ無料でお付けできるのですが……」

 売り場には十本入りの物しか並んでいません。それでやむを得ずそのサイズをお買いになられたのではないかな、と私はにらんだのです。サキちゃんも私の言いたいことを察知して、それだけはレジに通さずにおいてくれました。

 結果はドンピシャで、結局売り物のフォークは取り消しにし、無料の物をお渡しすることにしました。ついでと思い、お客様にお伺いをして通常の物より二円だけ高いケーキ用の袋でお包みすることに。

 お会計が終ってお帰りになる時、来店された時よりもいくらか明るい表情になられたようでした。

 普段に夜勤でも稀に遭遇しますが、イベントごとがあると、必ずといっていい程こういう何か特別な事情をお持ちであろうお客様に巡り合います。

 そういう時に咄嗟の機転で何ができるか。

 この辺りが、コンビニ店員、ひいては接客業に向いてるか否かの分かれ目なんだろうなぁ、といつも思っています。

 ま、少し大げさかもしれないですけどね。

 さて、いかがだったでしょうか。

 おかげさまで、このお話が今年最後の更新となります。

 皆様、お楽しみいただけましたでしょうか。

 三月から連載をスタートし、遅々とした歩みながらも、ここまでくることができました。

 今年一年のご愛顧、誠に厚く御礼申し上げます。

 願わくば、来年も変わらぬご愛顧のほど、重ねてお願い申し上げます。

 それでは、皆様よいお年をお迎え下さい。

 また来年のお越しを、心よりお待ちしております。

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【一時休止中】『腐男子と腐女子がコンビニ店員になるとこんな感じ』 駿介 @syun-kazama

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