10点目 「警察犬サキ、見参…?」     【3/29(火)】

 今回のお話は、もう全力で下世話な話です。お覚悟のほどを…。

 いや、もう先にお詫びしておきます。

 ご不快な思いをさせてしまった方、本当に申し訳ありません。

 でも、これが腐男子と腐女子の生態なのです。

 さすがに他の方の耳に入らないように、我々の間でしかこういったやり取りはしておりませんので、何卒寛大なお心でお読み頂ければと思います。

 これは、とある日の勤務終わりのお話。

 交代の店員と引き継ぎをして、バックヤードに下がってきた時のこと。どの店舗も大して変わらないと思いますが、こういうお客様に見えない場所に店員のロッカーや休憩スペースが取られていることが多いのです。

 「はぁー、お疲れ様」

 「タカハシ君もお疲れ」

 退勤の処理が終わって制服から着替え、とりあえず二人とも吸い寄せられるように近くにあったイスに。座るなりぐでーっとイスの背にもたれかかり、もう完全にスイッチを切った状態です。お仕事中は座れませんからね。

 「ねぇ、さっきレジ対応した男女カップルのお客様わかる?」

 「あー、30分ぐらい前にいらした方だよね。覚えてるよ」

 「多分同棲してるよ」

 「は?」

 相変わらず、この子は突飛なことしか言えんのかい(笑)

 「お二人とも同じシャンプーの香りした」

 「え、待って、サキちゃん、嗅いだの⁉」

 「いや、フツーにレジ対応してたら分かんじゃん」

 さも当然のような顔をするサキちゃん。

 いや、あんたは警察犬か(笑)

 「あーのねぇ、フツーはそんなに嗅覚よくないのよ。てか気づいたとしても、そんなお客様のこと口に出さないの」

 「いや、タカハシ君だってイケメンの匂いの話してるじゃん」

 「うっ、それは……」

 「それにもう勤務終わって制服脱いでるし。ここなら誰も聞こえないって」

 「いや、それはそうなんだけどね。いや、倫理的にマズいと言いますか…」

 「いやいやいや、タカハシ君にそれ言われても説得力ないから!」

 それは…、そうなんだよなぁ…。悲しいことに。

 「俺のは、あれは故意じゃないというか、たまたまといいますか…」

 「いや、同じでしょ」

 「俺が分かるのはせいぜい香水とか柔軟剤の匂いぐらいなんで。どこぞのの誰かさんみたいに髪の匂いまでは嗅ぎません」

 「タカハシ君だけには言われたくないな。そう言ってどうせ嗅いでるくせに」

 「いや、やっぱりね、推しは別格と言いますか何と言うか…、って俺はそんなことしないから!」

 「とかいってー」

 なぜか勝ち誇った顔をしているサキちゃん。

 何かその顔腹立つんだよなぁ。

 「うるさいなぁ。俺サキちゃんが昔『残り香するー』とか言ってイケメンが歩いた跡で深呼吸してたの忘れてないからね」

 「いや、だって、実際あれいい香りだったじゃん」

 「それはまぁ、そうだけど」

 「私も勤務中にお客様相手にはさすがにそんなことしないから」

 「してたらもはや犯罪よ」

 「わかってるって」

 「でもさぁ、真面目な話、そういうお客様の使ってらっしゃる香水で流行の匂いみたいなのわかるよね」

 「それはそう。あと柔軟剤ね」

 「ね。マジで最近の柔軟剤すごいから香水と区別つかない」

 「それはタカハシ君の鼻が鈍感なだけ」

 「いや、警察犬みたいなことしてる人に言われてもねー」

 「わたしゃ犬扱いかい!」

 「コンビニよりも税関とか空港行ってきたら?」

 「あっ、それいいかも。あーゆーお仕事の制服見るの好きなんだよなぁ。変な意味じゃなくて」

 「ホントサキちゃんもブレないねぇ。あ、そうそう、お会計してる時にタバコの匂いすると、タバコお買いになるかもなって予測しながらレジしてる」

 「あーそれはあるかも」

 「数少ない平和利用だね」

 「そんな悲しいこと言わないでよ」

 「いや、それが現実だからしょうがないから」

 「はぁー、何か虚しいね」

 こうして腐男子と腐女子の低俗な夜は更けていきまして…。

 いや、まさしくロッカールームトーク。

 お目汚しなもの、大変失礼いたしました。

 今日のお話はこのへんで。

 明日は真面目なお話にします。

 

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