~暗黒城ゴルゴンゾーラに集結する四方の厄災たち~②ラスト
戦闘の中──偶然に四方からコロシアムの真ん中に、互いの背中側を守る形で集まった東西南北の守護者たちが、互いの存在を意識してしゃべる。
肉盛りで、一時的に肉体を得たカキ・クケ子が言った。
「はじめまして……どうやら、あたしは東の守護者らしいです。赤いガイコツ傭兵の『カキ・クケ子』です」
「にゃは♪ 南の守護者、蛮族料理人の『カリュード』だぜ、よろしく!」
「お主たちのコトは聞き及んでおる……西の守護者、大魔導師の『ナックラ・ビィビィ』じゃ」
「わたくしは、北の守護者──魔女皇女『イザーヤ・ペンライト』です。これでも男ですペン」
それぞれの四方向に散らばる守護者たち。
コロシアム内では、結晶洞窟の女魔王『パール・ソネット』が、必殺技名を勝手にしゃべる魔王剣で闘っていた。
《魔王剣! 一撃の極み!》
ソネットを援護する、ラブラド0号の溶解光線が、援護軍団の投石器から発射されて飛んできた石を、空中でドロドロに溶かしていた。
「あたしの溶解光線は、時が経過すれば元にもどります……たぶん」
白ヘビ角の魔王、ソネットの腕に軽い切り傷が生じているのを発見した、弱腰で剣を抜いて闘っている『詩郎』が女魔王の傷の腕にバンダナを巻く。
ソネットが少し顔を赤らめて、詩郎が巻いてくれた、バンダナを眺める。
「こんなのは、かすりキズだ。一応、ありがとう」
「ソネットの体は、今は妹の和歌の体でもあるから……ソネットの身になにかあったら、困るから」
ソネットの頭のヘビ角がフニャと垂れ下がり、ソネットはあどけない表情で詩郎に抱きつく。
「お兄ちゃん、大好き♪」
「和歌、女魔王の中にもどれ! 戦闘中だぞ!」
コロシアムの外では、クィーントンパ・トンパが、城巨人エネルゲイアの拳打で、かなりのダメージを受けていた。
魔獣アリャパンゴラァは、近くにいた身代わり泥土人形のダジィを、頭上に抱えあげると敵に向かって、モノのように投げつけた。
「ダジィィィィィ」
自分の分身を出している間は動けない魔法戦士ヤザを襲おうとしていた敵を、地面から現れた忍者女剣士のリャリャナンシーが鞘に入ったままの日本刀で敵を蹴散らす。
リャリャナンシーに頭を下げるヤザ。
「かたじけない……分身を出しているこの状態になると、拙者は動けん」
「貴殿から地域は違えども、同じ武士道を感じる……異郷の同志だ」
水犬の背後から襲ってきた敵を、エンジェライトがリーダーになっている、北のフェアリー集団『スプライト』が短剣で、ミツバチのように群れて攻撃して敵を撃退する。
「助かったワン」
「気にするな、北のフェアリーは集団で敵を撃破する」
魔法攻撃を反射魔法陣で受けている、邪魔魔女レミファが呟く。
「もっとだ……もっと攻撃してくるぜら」
トイレから帰ってきた、フリュ・ギアが抱えていた。盗賊軍団の『ドロボウネコ』が。
「ぷうぅ~っ」と、小さなオナラをした。
「トラップ発動ぜら! ドロボウネコがオナラした! 全部返すぞ倍々返しぜら!」
次第に守護者側の勢いに押されて劣勢化していく、厄災たちは少しづつ各地域のゲートへと撤退を開始して……厄災を追って守護者たちも、コロシアムからゲートの中へと消えて。
誰もいなくなったコロシアムで、昆虫騎士ピクトグ・ラムは、玉座から立ち上がると軽くストレッチをして体をほぐしながら呟いた。
「一句浮かんだ……〝マンドラゴ、厄災どもが夢の跡〟子供の頃にゴルゴンゾーラ城で出会った、自称厄災を名乗る忍者が『○○どもが夢の跡』って句を呟いていたな……なんて言ったかな? あの忍者の名前? そうそう『ジュゲム・ジュゲム』だったか……やたらと長い名前の忍者だったな」
ピクトグ・ラムがコロシアムから姿を消すと、ラブラド種ではない普通の
メイド長の一つ目メイドが、ブツブツ文句を呟きながら片付けをする。
「まったく、ピクトグ・ラムさまも、厄災イベントを開催したら少しは片付ける方の身にもなってもらいたいもんですね」
メイド長は他の一つ目メイドたちに、指示を出す。
「トンパ・トンパの死骸は、乾燥させて粉砕すれば漢方薬として売れるから……
サイバァ兵の壊れて放置された外骨格フレームは、金属回収者に売るから資源物で……
まったく、東方の援護軍団の人たちは毎回、投石機で投げた石を放置したままで帰るんだから……壊れたコロシアムを直すのだって、お金がいるんだからね……どうせ投げるなら、価値がある宝石の原石でも残していけっつうの」
メイド長は足元に転がっている、壊れた身代わり泥土人形ダジィを足で蹴飛ばして言った。
「これが一番のゴミ……花壇の土にも、使えやしない埋め立てて廃棄」
壊れた土塊から微かに「ダジィ……」という声が聞こえた。
最終章・異界大陸レザリムスよ永遠に……おわり
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます