番外編

ラブラド3号~6号

 南方地域──サブ料理人のラブラド3号から6号が待機をしている、浜に建てられた南国風の高い軒下の家。


 雪女のような和装姿のラブラド3号は、冷えたトロピカルドリンクをストローで飲みながら涼んでいた。

 ハシゴを登ってきた、アイドルのような格好をした黄色い衣装の『ラブラド4号』は、一つ目でラブラド3号を見ながら言った。

「いたいた、もう仕事は終わり?」

「軍隊カニを凍らすだけだったから……あとは、赤い宅配服の6号がアチの世界に運んでいった」

「その6号は? まだ帰ってきていないけれど?」

「知らない、6号はいつも荷物持って、走り回っているから」


 4号が近くに干してあった肉の塊を、胸に抱き締めて言った。

「温めますか」

 抱き締められた肉が、電子レンジの原理で、調理されて柔らかくなる。

 ラブラド4号はマイクロ波を、抱き締めた物体に照射して温め調理するコトができる。

 4号が、柔らかくなった肉を食べていると、ハシゴを登って黒いワンピースを着た、陰キャラっぽい『ラブラド5号』がやって来た。

 ビン詰めのピクルスを差し出して、5号が言った。

「五分間漬け作ったんだけれど……食べる?」

 5号は、自分の体の質量を変化させて、短時間で一夜漬けを作るコトができる。


 ラブラド種たちが、ワイワイガヤガヤやっていると、配達に出ていたラブラド6号が帰ってきて言った。

「東西南北の厄災と、守護者の大乱戦は、もうはじまった?」

「まだだよ、今年は厄災と守護者が揃ったから開催できて良かったね」


 娯楽が少ないレザリムスでは、数年間隔で行われる厄災と守護者の激突は大きな一大イベントだった。

 5号が部屋の隅に置いてあった、一メートル半ほどの呪術鏡を、部屋のよく見える場所に持ってきて表面を布で磨く。

 厄災と守護者の大乱戦の様子は、さまざまな方法で各地域に配信されていた。

 ここ、南方地域は呪術の力で観るコトができる。


 人面バナナの天ぷらが大皿に盛られ、厄災と守護者の激突を観る準備が整う。

「はじまった、レザリムスの一大イベントが」

 自作の守護者推しグッズを手にする、ラブラド娘たち。

 呪術鏡が、ぼんやりと輝きはじめ、厄災と守護者の大乱闘の開始の様子が映し出された。


番外編・ラブラド3号~6号~おわり~

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