恭くんのヘルシーボリュームサンド
「じゃあ私から〜」
言い出しっぺの法則、と言わんばかりに鍋を引っ張り出したこのみ。彼女のカレシは一つ歳上の白鶴拳部エース、恭である。
そんな二人に馴れ初めなんてものは無い。二人の両親は二人が生まれる前から仲の良いお隣さんだった。だからこのみの人生には生まれた時から常に恭が存在していた。それはこのみにとって全然嫌なことではなく、いつだって太陽があり星があるように当然のことだった。
なので実ははっきりどちらから「付き合おう」と言ったことも無い関係だったりはするが、二人はお互いがお互いのものであると自認している。
「恭くんは白鶴拳というを中華拳法をやっているアスリートなので〜、今回は『恭くんのヘルシーボリュームサンド』にしようと思いま〜す」
「……何故サンドイッチなんでしょう?」
「そこは普通中華料理にするしょや?」
「だってサンドイッチって何かの片手間で食べる為に作られたんでしょ? だったらお稽古しながら食べられ……」
「あれはせいぜいトランプしながら食べられる程度だから、コンバットは無理じゃないかな……。そもそも食事の時くらいゆっくりさせてあげた方が」
「そもそもボリュームのあるものを食べてすぐ運動だって厳しいんですから、食べながらなんて」
「はぅ……」
コテンパンに言われて弱気な声を出しながらもこのみは作業を止めない。鍋に湯を沸かすと、
「笹身と大豆茹でます……。白鶴拳だからチキンさんです……。低カロリー高タンパクでもあります……。その間に厚切りの食パンをトーストします……」
「テキパキしてるべさ」
「トーストしない方が好きなら焼かなくていいよぉ。これは私の好みだから!」
「急に元気になった」
茹で上がるまでの間、レタスとトマトをカットする。
「トマトは贅沢に厚切りで〜」
そして具材が茹で上がる。
「笹身も大きめにカットして〜、大豆は潰します。マッシュマッシュ」
ボウルで大豆を潰し、茹で汁とレモン汁で伸ばしてペーストに。
「あとはトーストに粒マスタードとペースト塗ってぇ、具材挟んではい、どーん! 『恭くんのヘルシーボリュームサンド』完成で〜す!」
「ぶあっついんだわ」
「栄養たっぷりですね」
「狐色のトースト、赤いトマト、緑のレタス、黄色いマスタード、白いチキン。サンドイッチって綺麗だね」
ザクっとトーストに歯を立てると、
「確かにボリューミィ! 食べ応えがあるね!」
「味もトマトやレモン汁の酸味やマスタードの辛味が大豆でまったり角が取れてますね」
「でも味付け自体はしっかりしてて淡白な笹身が美味しく食べれるべな。茹でてあるからパサつかないし」
「これなら恭くんも喜んでくれるかな〜」
「そう思いますよ。彼、大体なんでも美味しく食べますから」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます