カノジョ料理編

プロローグ

 ここは学校法人KADOKAWA学園グループ・私立埼玉カクヨム高等学校の女子寮キッチン。

まだ夕飯時ではないのでそれほど込み入ってはいないフリーなキッチン。


「少年少女が厳しい世の中から自由なスピリットと際限の無いクリエイティビティを守り抜くには、自立した精神と自立による自信がつちかわれていなければならない。オンマイロード!」


というグループ創設者リュウジ・オンマイロードが埼玉カクヨム一期生の入学式で絶叫した名文にのっとり、全寮制となっている代わりに生活に必要な設備は秘宝館とカジノ以外ならビリヤードカフェまで備わっている女子寮の、多分に漏れず用意されたキッチン。

 そこに四人の女子がいる。彼女らはまるでゴールデンのバラエティ番組でたまにある芸能人クッキングのコーナーみたいに三角巾にエプロンで仲良く並んでいる。

彼女ら四人にはよく遊ぶ馴染みのグループであるということ以外に、もう一つ共通点がある。


「はぁ〜い。それでは愛しのカレシクッキングをしたいと思いまぁ〜〜す!」


向かって右から二番目、番組で言うと多分メインMCの立ち位置にいるのはこのみである。甘ったるい声と甘ったるい喋り方でいつもニコニコニコニコ、ポケットを叩かなくても存在がビスケットなお菓子女子である。


「そこだけ聞くと『テメェなんざ軽く料理してやるぜ』的な流れに聞こえますね」


向かって左端、番組で言うと多分普段からこのコーナーの司会進行をしているアナウンサーの立ち位置にいるのは澪である。一人だけ薄い手袋まで装備した本格お料理仕様なのに、周りの子同様マスクは着け忘れる天然さんだったりする。


「えっ、今回そんなヤンキーな集まりだったんかい?」


向かって左から二番目、番組で言うと多分ゲストのアイドルとか役者さんの立ち位置にいるのは理湖である。一際背が小さく頬が赤い容貌をしており、訛りが愛らしい。


「No, no, not like thatいやいや、違うよ. 恋人をイメージした料理を作るとかだったよね?」


向かって右端、番組で言うと多分料理を教えてくれるシェフの立ち位置にいるのは紡である。咄嗟に口から出るのが英語なのは父親がイングランド人と香港人のダブルだからだったりする。


「そうだよぉ。だからも安心してね〜」

「つまりヤンキーなタコ殴りとかは無いんだ。むしろsteadyに愛を込めるんだよ」

「安心したんだわ」

「もっとも、ジャンキーな料理は出るやも知れませんが」

「じゃあ早速始めちゃいましょ〜、せ〜の!」

「「「「おー!」」」」


そう、彼女らの共通点。それは全員カレシがいるということだ。一名を除いて。

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