2022.3.31 東京公演 後半

《12.Poetry -ヴィスピーにて-》

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天国に一番近い場所を探していた。

僕はどこか海辺の街を歩いていた。

路地裏を抜けて、右へ曲がって、薄く波の音が聞こえ始めた。

植木鉢の影で猫が鳴いていた。夏が終わるように錯覚した。

僕は鳴き声に気を取られて顔を向ける。

しなやかな体を擦り付けるようにして、猫は夏影へと消えていく。

気が付けば後ろに迫っていた自転車が、僕を睨んでいた。

体を退けて、道を譲って、やっと歩いた道のりを俯瞰する。

遙か先、あの坂を上った先の教会で、朝、僕は祈りを捧げていた。

そんなことを思い出している。

僕は、僕自身を悼んでいる。


天国に一番近い場所を探している。

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後半戦最初はスウェーデンのヴィスピーでのことが語られるところから始まる。

この映像は実写ではなく、紙を切り貼りしたような可愛らしいイラスト(?)のものだった。ほとんどが実写の中、数少ないイラストの映像だったので鮮明に覚えている。

「天国に一番近い場所を探している」

が強調されていたような気がする。


《13.踊ろうぜ》

参加した人の多くがそうだと思うが、今回のライブで最推し曲の一つ(言葉の矛盾許して)。

まずポエトリーが終わって聞こえてくるお馴染みのイントロ。ギターのリズミカルなリフが気持ちいい。

イントロの照明の色がまさかのレインボーで、楽しさで溢れた空気が会場いっぱいに広がる。

確かこの曲は、”音楽に踊らされる自分”のことを自嘲するようにエイミーが書いた曲だとどこかで語られていたことを思い出した。

ステージ右端のはっちゃんさんが激しすぎるくらいのヘドバンをカマしている。それも結構長い間。こっちまで楽しくなってそれを眺めていると、今度はキーボードを弾きながら飛び跳ねている。もう何が何だか分からない。笑

そして中央に立つsuisさんをよく見ると、めちゃくちゃ楽しそうに体を揺らして踊っている。しかも表情がとても楽しそうに見える。

こっちも一緒になって身体を揺らす。今振り返ってみると後ろの席のお客さんに悪かったような気がする。

Aメロからのsuisさんの歌声も楽しげ。

そしてサビに入ると再びその破壊力が爆発。原曲以上の声量と声の可愛さにやられる。機材もその歌についていけてない。

サビが終わり、再びイントロと同じメロディの感想が流れ、照明も合わせてレインボーに変わる。

慌てて双眼鏡でsuisさんの表情を覗き込む。

予想通りめちゃくちゃ笑顔で楽しそうだった。

彼女が体を揺らすのに釣られてこっちまで体を揺らす。この時点で客観的に見ると双眼鏡を覗きながら体揺らしてる変なヤツだけど気にする余裕なんてなかった。

双眼鏡で見ていると、ギターの下鶴さんとキタニさんや、下鶴さんとsuisさんが目を合わせて笑っていたのもこの時だった気がする。

「自慢のギターを見せびらかした」

のところでn-bunaさんを見ていた。

ライブ中に(サポート含め)メンバー同士が目を合わせて笑うの大好き。尊い。

とにかく楽しくて幸せな空間が広がっていた。

「浮かばないからさ」の後の2回目のサビ終わりはn-bunaさんがチョーキングしたのち、アーミングでチュゥーンと音を下げてた。この時頭の上でギターを弾いて(?)いてめちゃくちゃ痺れた。

そのデデン!とラスサビに入る流れが気持ち良い。そのままそれまで以上の破壊力でサビを終えると、イントロと同じ特徴的なリフが鳴らされる。それもまたとても気持ち良かった。


《14.歩く》

踊ろうぜに続き、再びアップテンポな曲選。間髪入れずに始まった。

これは確かエルマがエイミーの歩いた道のりを、彼の跡を辿って歩くということが書かれた曲だ。

基本的に音源で聴くヨルシカの曲は静かな方が好きなのだが、ライブだとやはりロックチューンなものが良い。

この曲の間はずっと映像に注目して見ていたので演奏のことはあまり良く覚えていない。

ずっとうわ〜良い曲だな、なんて考えながらぼうとただ聞き入っていた。

少しヘドバン紛いな事をしていた気がする。今でもイヤホンでこの曲を聴くと勝手にアタマガク動く。

ただ一つ覚えているのは

「今でも、エイミー」

で鳥肌が立った。

その時のsuisさんはエイミーのことを想い歌うエルマ以外の何者でもなかった。

バックの映像では、エイミーらしき黒いスニーカーを履いた男性がお洒落な街を歩くその足元がずっと映されていた。


《15.心に穴が空いた》

連続してアルバム『エルマ』からアップテンポな曲。

YouTubeなどにあるMVではスウェーデンを舞台にした人形の映像が印象的な曲でもある。

この頃になるとそろそろ終盤も近いかと意識し始める。

この曲も前の『歩く』と同様にただ呆然と眺めていたのであまり演奏面などは良く覚えていない。覚えているのははっちゃんのピアノが良かったということくらいか。

後ろで流れる映像と歌詞をよく見ていた。

この曲は特にエルマに対するエイミーの根源的な考えみたいなものが全体を通して描かれている。その想いを感じてこのライブで初めて泣きそうになる。

細かい箇所に言及すると、

「忘れたい脳裏を埋めきった青空に君を描き出すだけ」

でここを歌うの難しそうだな、と思い、

「君の人生になりたい僕の、人生を書きたい」

の歌詞にやられ、

「「君だけが僕の音楽」なんだよエイミー」

のsuisさんの叫びに心打たれ、

「穴の空いた僕だけ」

の「け」の吐息混じりの声の余韻に浸る。

この曲の間は終始うるうるしていたが、これはまだ序章に過ぎなかった。

後ろの映像はエイミーやエルマがスウェーデンで撮った写真たちがカメラで撮られ、落ちていくところが延々と流れていた。


追記)YouTubeにて【歩く/心に穴が空いた】のライブ映像が公開されました!

https://youtu.be/OuSFM2l9OaI


《16.inst-フラッシュバック-》

Live前世であったものと近いようなインスト楽曲が流れる。最初に楽器隊が聞き覚えのないメロディを弾き始め、なんだろうと思っているとsuisさんがハァ〜〜ア〜〜と歌い始め、これがinstだと気づく。(一応suisさんが歌っているのでインストと言うかは怪しいが)どれだけ聞いてもやはり美しいsuisさんの歌に思わず目を瞑る。全身で音楽を感じていた。


《17.パレード》

フラッシュバックを挟んだ後のこの曲。

二つのアルバムの中でもトップクラスに好きな曲だ。

まずイントロのギターリフが堪らなく良い。

この部分で後ろに流れているバイオリンは恐らく音源を流したもの。

流れる映像を見て手紙を読み返した時のことを思い出す。この曲の歌詞は他と比べて段違いに少ないのだ。それに比べて尺でいうとむしろ長いくらい。一言ずつ大切に置いていくように歌われるんだなと思いその歌声に浸る。

この曲は演出が印象的だった。

suisさんを円形に囲むように点線のようなスポットライトが当たる。

「一人ぼっちのパレードを」

という歌詞が連想される。

他のメンバーにもリズム良く順々にスポットライトが当たる。

アウトロでの美しいはっちゃんのピアノが琴線に触れる。

バックの映像は満点の星空と煌々と輝く満月に廃墟のようなものが照らされる美しい絵だった。


《18.海底、月明かり》

ここで『エルマ』からインスト曲を一曲挟む。

ここまでsuisさんがぶっ通しで何曲も歌っていたので、休んでくれと思いながら眺めていた。

suisさん、この辺でお水を飲んでいた気がする。

この曲と水中を沈んでいくような映像で、そうか僕らは深い海の底にいるのか、と再認識する。

暗い静かな空間で、目を閉じればそこは既に海底。

この曲が生演奏だったかどうかは分からないが、個人的には音源だったのではないかと思っている。


《19.憂一乗》

ここまでで既に涙腺に来ていたが、ここからが本当の本番だった。(この後も圧倒されすぎて涙は出なかったけど激感動した)

暗い空間から一転、月明かりが差し込む。

suisさんがステージ中央右の階段に座り込む。

その隣のベンチにn-bunaさんが足を組んで腰掛ける。

二人が互いの背中を預けるような体勢で演奏を始める。

Aメロ、suisさんの歌とアコギだけの弾き語りスタイルで始まる。

どこまでも美しくて優しい音が会場いっぱいに広がる。

この曲の前半に余計な楽器を入れず、歌とアコギだけというアレンジに思わずはあ、天才っ、、!と声に出そうなくらいに思った。

「ずっとずっとずっとずっとずっと」

のところの透明感がエグい。

その直後、

「君を追っている

からストロークになるのだが、そこも良い。

ずっとこの時間が続けばいいのに、と思う。

そして入ってくるベースやドラム、ギター。

キタニさんの弾く優しいベースが心にスッと入り込んでくる。

楽器隊がフェードインしてきた後もその美しさと優しさは変わらず、本当に幸せな時間だった。

n-bunaさんがこの曲はプールの底から見上げた時の美しさを描いた曲と何かのインタビューぇ言っていたことを思い出す。自分も少し前にプールに行って、鼻をつまんでプールの底から水面を見た。その時は屋内の黄色いライトだったが、確かにその淡い光は月光のようで美しかった。

「また君の歌が聴きたい」に感極まる。

後ろの映像は黒字に白い文字で、大きな薄い三日月が文字を囲むように出ている。

「逃げよう」など強調するべきところでは文字が大きくなっていた。

この曲の最後はアコギの音が余韻として残っていたのだが、このライブ中ずっといたフライング拍手野郎がここでは特に早く拍手をしていてイラっとした。その人について周囲の人たちも渋々拍手をしていた。曲の音が完全に消えるまで聴くのがマナーではないのか、と強く思ったが、もうどうすることもできなかった。

ヨルシカのような形式でも、ライブというのは観客とアーティストが一体になって作るものなのだと実感した。

演奏は本当に良かったのだが、後味の悪いまま曲が終わった。


《20.ノーチラス》

suisさんが冒頭を階段に座ったままで歌い出す。

この曲が始まってから、いよいよ終わりが始まったなと思う。この曲を歌ってしまったら、この後に歌われるのは『だから僕は音楽を辞めた』しかない。終わりを意識せざるを得ないまま、曲に聴き入る。

歌が原曲通りの美しさでびっくりする。

「喉が乾くとか」

でピアノ以外の楽器がフェードインしてきて、それも原曲通りでめちゃくちゃ感動する。

あの曲が、目の前で演奏されてるんだ、、!と今更ながら思ったのだ。

若干前の曲の悪い余韻を引きづりながらだったが、その音に浸っていた。

サビ部分、

「さよならの速さで顔を上げて—」

で涙する。

そして最初のサビ終わりの

「何度だって描いているから」

を歌い終わるとsuisさんが階段を下り、最後の一段をピョンと飛び降りた。一連の仕草が可愛すぎた。

「裸足のままなんて」

の歌詞でsuisさんの足元を見る。いつもの通りに裸足だ。

2番のサビはもちろんのこと、落ちサビのアコギと歌だけになる部分の音の綺麗さが半端じゃなく、その音に浸る。

そしてラスサビでも感極まって、最後のギターソロに圧倒されてこの曲は終わった。

この曲の映像はシンプルに黒地に白い手書きの歌詞が流れてくるもので、より歌詞を意識しながら聴くことができた。


追記)YouTubeにて【ノーチラス】のライブ映像も公開されています!

https://youtu.be/m2xmJFdYfJw


《21.Poetry -走馬灯-》

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頭の中で歌が響く。メロディが鳴っている。

胸が苦しい。息が出来ずに踠く。

海抜0mを越えて不鮮明な視界が揺れている。

桟橋の隙間から入り込んでいる光が水面から差す月光みたいに輝いている。

僕は深い海の底にいる。

僕は深い海の底にいる。


そうか。

ずっと見えていたこの光は。

景色は。

思い出は。

雨のカフェテラスは。

夜紛いの夕暮れは。

富士見通りは。

天国に一番近い場所を探す道程は。

メロディは。

音楽は。

長い夢を見ていたようなこの時間は。

あの日の景色は。


全ては、僕の見る走馬灯か。

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ノーチラスが終わり、すぐに次の曲が始まるかと思いきや、再び暗転してポエトリーが読み上げられた。それもこのライブで一番重要なものといっても過言ではない内容のものだ。

ポエトリーの文言が

深い海の底にいる」

から

深い海の底にいる」

に変わっている。これにはどんな意図があるのだろうか。

前半の映像は深い海の底のもので、水面から月光が射し込んだいる。

そして後半、これまでの映像を切り抜いた写真が表示されると共にここまでの景色が思い出される。

そして最後の台詞で気づく。ここまで見てきたものはエイミーの見る走馬灯だったと。


《22.だから僕は音楽を辞めた》

n-bunaさんがポエトリーを読み終わると共に

ドン、ドン、ドン、ドン

と心臓に響くバスドラが鳴り始める。

はっちゃんが滑らかに美しいピアノのメロディを奏でる。このフレーズがとても好きだ。

そして直ぐに入ってくるsuisさんの歌。既に他の曲とは違うものを感じる。

後ろで流れている映像が、ここまでの走馬灯を全て振り返るようなもので目頭が熱くなる。

「考えたって分からないし

青春なんてつまらないし

辞めたはずのピアノ机を弾く癖が抜けない」

ここでもドラムとピアノが気持ち良く、その後にフェードインしてくるギターのリズムが小気味良い。

suisさんがエイミーの歌を歌うエルマに見えてくる。その歌には魂が篭っている。

そして迎えるサビ。マイクを破壊するのではないかという声量と迫力で思わず圧倒される。n-bunaさんのハモリも相まってエイミーの心の叫びのようなものを感じる。

間奏、エルマが身体を揺らす。

「いつか死んだらって思うだけで

胸が空っぽになるんだ」

声が泣いている。彼女は何を思い歌っているのだろう。

エイミーの弾くギターのフレーズが激しさを増していく。

2番サビ、1番よりも更に破壊力を増した歌声で歌い上げる。

2サビ後の間奏、はっちゃんが滑らかに鍵盤を弾く。美しくも激しい旋律が奏でられる。

ギターが静かに鳴らされ、ベースがぬるりと入ってくる。

「間違ってないだろ

間違ってないよな

間違ってないよな」

一回ずつ歌い方が違う。自分に確かめるようにも、言い聞かせるようにも聞こえる。

ラスサビ、ここまでの2回よりも更に熱量があがった歌が会場を突き抜けるよう。

命を削って歌っているんだなと感じる。

そして1番の見せ場と言っても過言ではないシャウト(あぁ〜〜〜〜〜というところ)。

本当に倒れてしまうのではないかというほどの声量。それでも声は美しい。

その部分だけでもう曲が終わったような満足感に浸っていると、最後の

「僕だって信念があった

今じゃ塵みたいな想いだ

何度でも君を書いた

売れることこそがどうでも良かったんだ」

から始まるフレーズで追い討ちをかけられる。

ピアノとギターのリフが同時に鳴らされる。いよいよ、残り数秒で終わってしまう。

そして最後は

「だから僕は音楽を辞めた」

の一言で美しく締められた。

エルマがエイミーの人生を歌い切ったのだ。

そして再び暗転する。


《23.Poetry -生まれ変わり-》

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今更になって思う。

僕はどこまでも自分勝手だった。

最後まで考えるのは音楽のことばかりだ。

エルマ、この旅で書いた僕の手紙と詩は、君にちゃんと届いてくれるだろうか。

君はそれを見て、何を思うだろう。

ちゃんとわかってくれるだろうか。

わかってくれないだろうな。


今更だ。

今更君に会いたいと思った。

もう一度だけ、その泣いた顔が見たいと思った。

僕は行かなきゃ駄目だ。

早くそこへ行かなきゃ駄目だ。

早くそこへ行かなきゃ駄目だ。

生まれ変わってでも、僕は君に会いに行かないと駄目だ。

生まれ変わってでも、僕は君に会いに行かないと。

生まれ変わってでも、僕は君に会いに行かないと。

生まれ変わってでも。


生まれ変わってでも。


今見たものは、聞いた音は、きっと走馬灯だ。

月光のように優しい、波の走馬灯だ。

瞼を閉じる。道の先に何かが見える。

丘の前には誰かが立っている。君の顔が思い浮かぶ。

僕はゆっくりと歩き出す。

深い、夏の匂いがしている。


僕は今、瞼の裏に光を見ている。

夜しか照らさない、夜明けにも似た光。

薄く眩しく、淡い光とはとても思えない、月光を。

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最後の曲が終わり、n-bunaさんとsuisさんを除くメンバーが舞台から掃け、ポエトリーが読み上げられる。

後ろの映像にはその詩が金冠月食のときのような月の上に映し出される。

エイミーのエルマに対する想いを知る。

「わかってくれないだろうな」

そんなエイミーの言葉に悲しくなる。違うんだよ、エイミー。

「もう一度だけ、その泣いた顔が見たいと思った」

聞いていて胸が苦しくなる。

その後繰り返される「生まれ変わってでも」。

もしかして……?と思う。

「今見たものは、聞いた音は、きっと走馬灯だ」

ここが読み上げられると同時に、suisさんがステージ上の階段を登り始める。

語りと同時に、一歩ずつ登っていく。

「深い、夏の匂いがしている」

鳥肌がブワァッと立つ。

やはりそうか。ここで確信した。これは盗作の話と繋がっているのだ、深い夏を描くあの物語へと。

そして詩も終わりに近づく。

「僕は今、瞼の裏に光を見ている」

自分も一瞬目を閉じる。ここまで見てきた走馬灯が浮かぶ。

「夜しか照らさない、夜明けにも似た光」

ここでバンド名(作品名)と同じ言葉が読み上げられ、再び鳥肌が立つ。

薄く眩しく、淡い光とはとても思えない、」

瞬きすらせず、ただその光景を目に焼き付ける。

「月光を」

このライブタイトルでもある三文字が環状の月光の中に映される。

圧倒されて身体が動かない。

そしてステージに残っていた二人が月光に照らされ、客席を見渡した後にほぼ同時に深いお辞儀をして、ステージを去っていく。

suisさんは階段上の高くなったところを右袖へ。

n-bunaさんは階段の下から左袖へ。

その姿は地上と水中で離れ離れになったエルマとエイミーを彷彿とさせた。

会場内が徐々に拍手で包まれていく。

それに気づいて我にかえり、力一杯、出来るだけ大きな拍手を送る。

これまでこの公演で拍手は積極的にしてこなかったが、今こそその時だと言わんばかりの拍手を叩いた。


《24.エピローグ》

終わってしまった、と思い呆然としていると再び何かの映像が映し出される。

注意してみると、それはドアとドアノブだ。

誰かがドアを開く。雨とカプチーノのMVでお馴染みのエルマだ。白いワンピースを着ている。そしてその手には何やら箱を持っている。

机に箱を置き、段ボールを開くと木箱が出てくる。

木箱を開く。

そこには紙が入っており、一言。

「エルマに」

と書かれていた。


再び割れんばかりの拍手が会場を満たす。

力の限りに拍手をする。この拍手が終わったら、この幸せな時間が終わってしまうと思い、いつまでも拍手を続ける。一度少し弱まったが、自分は辞めずに叩き続けた。

しかし終わりはやってくる。

会場内が明るくなり、終演のアナウンスが流れてしまう。拍手は必然的に鳴り止む。

『月光再演』が、終わった。

エイミーの走馬灯を描いた90分はこの瞬間幕を下ろした。


呆然とする観客、ひっきりなしに流れる規制退場のアナウンス、無数になるシャッター音。

すべてが身体を通り抜けていく。ステージを眺める。しばらくはその幸せな空間に浸っていた。


外に出ると雨がパラパラと降っていた。空を見上げ、傘をささずに歩き出した。まだ脳内には幾つもの音楽が流れている。


その音楽を止めないためにこれを書いている。

これを読めばまたいつでも、あの空間に戻れるように。


《セットリスト》

01.Poetry-海底にて-

02.夕凪、某、花惑い

03.八月、某、月明かり

04.Poetry-関町にて-

05.藍二乗

06.神様のダンス

07.夜紛い

08.Poetry-雨の街について-

09.雨とカプチーノ

10.六月は雨上がりの街を書く

11.雨晴るる

12.Poetry-ヴィスビーにて-

13.踊ろうぜ

14.歩く

15.心に穴が空いた

16.Inst.-フラッシュバック-

17.パレード

18.海底、月明かり

19.憂一乗

20.ノーチラス

21.Poetry-走馬灯-

22.だから僕は音楽を辞めた

23.Poetry-生まれ変わり-

24.エピローグ



《最後に》

ここまで長々とお付き合いいただきありがとうございました。

このライブに行った方、少しでもあなたの思い出が、永遠のものになるように書いたつもりです。またいつでも戻ってきてください。


このライブに行かれたかった方、実際に行くのと行かないのとはやはり違いましたが、少しでも場の雰囲気や出来事が伝わり行った気になって貰えていたら嬉しいです。


本当にありがとうございました。

次回のヨルシカのライブでお会いしましょう。



追記)やはり映像作品『ヨルシカLIVE 月光』がDVD/Blu-rayとしてリリースされましたね。まだ手に入れていない方は、ご購入されることを強くお勧めします!

公式サイト↓

https://sp.universal-music.co.jp/yorushika/gekko/

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ヨルシカLIVE TOUR2022月光再演 ライブレポ SAM-L @sam-l

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