第23話 第二次スコル戦役 経過1 急転
戦況は日増しに悪化していた。
当初、スコル大公国は優勢であった。レイオス大帝の率いるオリオウネ帝国、近衛騎士団が国境を越えて進撃してきたが、森にひそんで待ち伏せていたアンタレス大公の手勢が強襲する。
レイオスとアンタレス、仇敵同士が顔を突き合わせての戦いとなったが、その戦闘でレイオス大帝が負傷しオリオウネ軍は国境付近のカゼル砦(※オリオウネ側の国境の守り)まで後退した。
ところが、両軍にとって想定外の事件が起きた。
カゼル砦で療養中のレイオス大帝が内部の者に惨殺されてしまった。暗殺ではなく惨殺という結果になったのは、相当の恨みを抱く者の手にかかったのだ。看病をしていた女に刺されたというが、犯人は未だわからない。
ただ、参謀ライムという男の提案で、レイオス大帝が亡くなった理由は、アンタレス大公によって受けた手傷が原因ということにされてしまう。内情に詳しい一部の側近以外はそれを信じ込まされてアンタレス大公への復讐に燃え士気を高めていった。
オリオウネ軍の勢いが増し、帝都からも援軍が次々と出立してきた。そのなかには、帝国の緊急時にしか出陣しない切り札として温存されてきたサイフォス公の率いる軍勢もあった。
リカルド・サイフォス公爵は若くして宰相の地位にあるオリオウネきっての逸材であった。レイオス大帝の甥であるだけで出世をしたわけではない。剣の腕はふつうの騎士よりも少し上程度ではあったが、知恵者であり政治方面に能力を発揮していた。
このような有事であるため、軍の指揮をとることになった。
サイフォス公は麾下の精鋭たちを前進させ、国境付近のスコルの守りの
「シャウラ城塞が落ちるとは。もはや一刻の猶予もない、すぐにルカニオスを呼べ」アンタレス大公は叫んだ。
オリオウネの総掛りの攻撃によってスコル大公国は窮地に陥ると、傭兵騎士団ラグナロクも招集された。騎士団長のルカニオスから、ストーンにも声が掛かった。
だが、ストーンがそれに応じることはできなかった。
ルカニオスからの知らせが来るのと一足違いで散歩に出てしまっていた。
もう日も暮れていたというのに、ストーンが出かけた理由は曖昧なものだった。少年の頃に聞こえた風の精霊の声はもう今は聞こえない。だが耳ではなく、頭の中に直接、響いてくるものがあった。
「誰かが……いや、何かが俺を呼んでいる。港の方角か……」
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