エピローグ トーマの始まり

 アリスに送り出されて――否、再会を約束して早々、何事もなかったかのように即座に始まる何事か。


「トーマ! 私と――」


「妾とお風呂に――」


 粗末な作りのベッドを軋ませながら俺にのしかかる二つの重み。

 目の前にあるのは絶壁二枚。

 二枚のまな板の上にあるのは二房の綺麗なさくらんぼ――。

 下は見ない。目線は下げない。見たって綺麗に締まった一文字しかない。無毛の恥丘しかない。

 いや、マオは子供らしさ全開のツルとっしたものだが……。

 ユノはなぜそこだけ救世の聖女ではないのかと言いたくなるほど、成熟が早いご様子。もっさもさである。


「――とりあえず、服を着ろおおおおおぉぉぉぉぉぉぉッッ!」


 アルバを探す旅の道中。

 泊まった宿には翌朝、騒音を立てた迷惑料として決して少なくない額を払う羽目に……。

 俺は今日から未来永劫無神論者である。


「あだっ」


「何ぼけっとしてんのよ! 『賢者』と『聖騎士』探すんでしょ? アテなんてからっきしなんだから急がないと!」


「ユノちゃんの言うことも分かるがのぅ。妾の勘が正しければ、トーマのおかげで魔王の力も半減。しばらくはアルバの身体を借りて養生しておろう。であるならトーマ! 次の都市で妾とでーとしてたも!」


「は? いや――ぐはっ」


「妾の言うことが聞けぬと申すか!? この痴れ者! 大うつけ!」


 ユノの影響か、はたまた潜在のものか。

 マオの愛情表現も過剰なものになり、すわ反抗期かと嘆きたくなる。


『――トーマッてやつァ難儀だなァ』


 三十二歳の平民よろしく安穏と暮らしたい欲求と闘いながら歩く道すがら。

 次の目的地をユノ、マオ、そしてジェニトと共に目指す最中。


 相棒の手痛い指摘に思わず見上げた空は、物語の序章に相応しい暗雲に立ち込めていた。









―――――――――――――――――――――――――――――――――


ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


初投稿作、いったん完結いたしました!


続きそうな終わり方をしてしまいましたし、実際描きたい、書きたいお話はあります。


しかし、次回作の構想も練っていてそちらも新しく書きたいので、ラノベ発アニメの1期みたいな終わり方で落着させております。


続きを書くなら、最初も改稿したいところです……手が足りませんね……。


次回作はまだ書き溜めている段階なので、すぐに載せられそうにはありませんが、こんな感じで本1冊分くらいのお話を作れればと考えております!


また興味を持っていただければ幸いです!

ではではー。

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非業の死を遂げた勇者は神様の気まぐれで、転生ではなく生き直しを余儀なくされる~二周目なのに全然上手く立ち回れないのだが? ZONO @s-nishizono

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