神社 ~神様の約束~ (フリー台本)

あらすじ 参拝者と、そのお願いをとりあえず聞く神様


舞台 地方の神社


登場人物 

美佐 :参拝者。 30才くらいの女性(男性でも可、その時は名前は自由に変更)

神様 :竜神・女性(年齢は自由)

AI神主 :性別、年齢、自由。しゃべり方は平坦に


*****************************


音 風にそよぐ木々の枝の音

  鳥のさえずり

  蝉の声(ちょっとうるさめに)

  少し遠くで、手水で手を清める水音

  石畳を近付くスニーカーの音

  賽銭箱に小銭が落ちる音(硬貨三枚くらい)

  大きくガラガラと鈴を鳴らすうるさい音


神様 :(寝ているのを起こされたように)

   え?

   なになに?


AI神主 :参拝者です。


音 パンパンと柏手を打つ音


神様 :あービックリした。

   OK、カンヌシ

   誰?


AI神主 :中村地区、屋号・裏藤屋うらふじやの森本陽介が次女、美佐、32才。

    盆休みで帰省中。


美佐 :チケットが当たりますように!

    チケットが当たりますように!


神様 :OK、カンヌシ。

   チケットって何?


AI神主 :チケットとは、美佐が行きたいライブの入場券のこと。

    超高倍率で、ここのところ外れ続けています。


美佐 :チケットが今度こそ、今度こそ!当たりますように!

    お願いします!

    当たりますように!(大きい声で数回繰り返す)


神様 :そんな、力一杯お願いされても。

   私さ、水の神なの。

   ここさ、貴船神社の末社だよ。

   雨乞いならともかく、賭け事とか芸事とか範囲外なんだよねぇ。


美佐 :いや、神頼みっていうのもアレだよね。

    チケット、当ててみせる!

    チケット、当ててみせる!

    (力強く)当たる!当たる!

    チケット、絶対、当たる!


神様 :うん!

   いい心構えだ。

   欲しいものは、自分から取りに行かないとね。

   そーいうところにこそ、「運」は舞い降りるってもんだよ。

   OK、カンヌシ。

   勝負事の担当部門に美佐のこと伝えてあげて。


AI神主 :かしこまりました。


美佐 :当たったら、お礼参りに来ます。

    お賽銭も弾みます!

    絶対当ててみせる!

    神様見守っていてください!

    よろしく!


神様 :うん。

   わかった。

   当たるといいよね。


音 石畳を遠ざかるスニーカーの音。

  風の音  

  木々のざわめき

  鳥のさえずり

  雪を踏み締める足音

  人々のざわめき

  (ぼんやりと聞こえる新年の挨拶など)

  ザワザワとした中で、何度も鳴らされる鈴の音・柏手の音、賽銭が落ちる音


神様 :(少し機械的な感じで)

    はい、明けましておめでとう。

    はい、好きになってくれますように。

    はい、良い年になりますように。

    はい、受験頑張ってね。

    はい、いい人が見つかりますように。

    はい、家内安全。

    ふぅ。

    OK、カンヌシ。

    ちょっとお神酒ちょうだい。

    喉が疲れちゃった。


AI神主 :清水しみずの方がよいのでは?


神様 :いいの!

    お神酒な気分なの!

    一年分の「お願い」受けて立ってるんだから、お神酒でも飲まないとやってられないわ。


音 ごくごくと液体を飲む音

  鈴の音 

  柏手の音


美佐 :明けましておめでとうございます。

    お盆の時はありがとうございました!

    神様!

    チケット!当たりました!

    ありがとうございました。

    約束通り、お賽銭弾みます。


神様 :あ、あの時の。

    当たったんだ!

    よかったねえ。

    気合入ってたもんねぇ。


AI神主 :賽銭、一万円入りました。


神様 :あら、本当に弾んでくれた。

    ありがとうね。


美佐 :でも…。(少し泣き声で)神様。

    当たった公演、コロナで、中止になってしまって。

    やっと、やっと当たったのに…。

    でも、当たったらお礼参りするって約束したから。

    神様、ありがとうございました!

    来年また初詣にきます。

   

神様 :律儀ないい子だね。

    水関係なら何とかしてあげられるんだけど。

    担当外でごめんね。

    OK、カンヌシ。

    美佐のこと記憶しておいて。


AI神主 :かしこまりました。

     記憶期限はいつまででしょうか?


神様 :美佐の願い事を一つ叶えるまで。

    美佐の代で無理なら、その子孫もずっと有効よ。

    何か水にまつわる願い事をしてくれるといいんだけどな。


音 人混みをかんじさせる音  

  鈴の音、柏手の音、賽銭が落ちる音

  参拝者が願い事を呟く声

  (健康でいられますように、とか

   就活うまくいきますように、とか)

  ぼんやり聞こえる新年の挨拶


    

  


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る