こえで語る（声劇フリー台本集）

羽化 ～旅立ちの時～ (フリー台本)

あらすじ

　脱皮した蝉が飛んでいくまで

場所

とある一戸建ての庭

登場人物

母　：小学生と三歳児の母親

子ども　：三歳（性別は自由）

ミンミン　：蛹から羽化したての蝉（性別は自由）

ジンジン　：蛹から羽化したての蝉（性別は自由）

注意)　母と子どもの会話は状況説明のためなので、遠くで聞こえる程度で。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

音　（遠くで）

　　目覚まし時計のベルが鳴ってすぐ止まる

　　カーテンを開ける音

　　雀のさえずり

母　：（遠くで）ほら、お兄ちゃん。起きなさい！ラジオ体操行くんでしょ！

音　（遠くで）ぐずる子どもの声

　　軽い子どもの足音　　

　　ドアの開閉音

子ども　：（遠くで）お兄ちゃん、いってらっしゃい。

　　　　ママぁ、シャボン玉するぅ。

音　雀のさえずり

　　遠くに蝉の声

　　モソモソと「殻」を脱ぐ音

ミンミン　：うん！うーん！

　　　　えいっ！はぁ、ふう。

ジンジン　：ミンミン。

　　　　　大丈夫？うまく脱皮できた？

ミンミン　：うん、ジンジン、ありがとう。

　　　　　もう大丈夫。

ジンジン　：ねえ、これ何だろう？

ミンミン　：わぁ！大きい、綺麗な玉。

　　　　　朝日にキラキラ七色に光ってるね。

ジンジン　：あ、空を見て！

　　　　　同じものがたくさん飛んで行くよ。

ミンミン　：本当だ！みんなどこに行くんだろう？

ジンジン　：羽がしっかりしたら追いかけてみようか。

ミンミン　：うん。

音　パンと薄い風船が弾けるような音

ミンミン　：わっ！

　　　　　ビックリした！

ジンジン　：あー。玉、消えちゃった！

ミンミン　：残念、もっと見ていたかったのに。

　　　　　あ、ジンジンの羽、大きく伸びたね。

　　　　　さっきの綺麗な玉みたいな色になってきたよ。

ジンジン　：ミンミンの羽も、薄い水色で綺麗。

　　　　　ずいぶん伸びてきたよ。

　　　　　早く固くなって飛びたいね！

音　木々のざわめき

　　ミンミン蝉の鳴き声(だんだん大きくなる)

ジンジン　ああ、仲間たちが呼んでるね。

ミンミン　：うん。

　　　　　あんなに上手に鳴けるなんて、ずいぶん練習したんだろうか？

音　ミンミン蝉の声

ミンミン　ねえ、ジンジン。

　　　　　今までいたところは暗くて静かだったけど、外って賑やかで眩しいね。

ジンジン　：うん。賑やかでワクワクする。

　　　　　今までミンミンがずっとそばにいてくれたから、退屈せずに楽しかった。

　　　　　ありがとう。

ミンミン　：やだな。照れくさいよ。

　　　　　ジンジンも、小さい時からそばにいてくれてありがとう。

　　　　　たくさん足があってモソモソしているときにジンジン出会えてよかった。

ジンジン　：うん。

　　　　　暗くて湿ったところを冒険して歩き回るの、楽しかったよね。

ミンミン　：今度はこの広いところを飛び回るんだね。

ジンジン　：この羽が固くなったら出発だ。

ミンミン　：そうだね。

　　　　　また会えるかな？

ジンジン　：会えるさ。

　　　　朝日が七回上るまでにはたくさん時間があるもの。

ミンミン　：見て！

　　　　　また綺麗な玉が飛んできた！

ジンジン　：ああ！綺麗だなぁ。

　　　　　ミンミン。先に行くね。

　　　　　どこかでまた会おう！

ミンミン　：うん！

　　　　　すぐに追いつくよ。

　　　　　ジンジン、またね！

音　蝉が飛び立つ羽の音

　　蝉の鳴き声(最後まで聞こえている)

子ども　：（遠くで）

　　　ママぁ、シャボン玉、見てぇ！

母　：（遠くで）

　　上手ねぇ。シャボン玉、たくさん出来たねぇ。