第7話 おから

前回までのローバード・デュウニュウアーリーは。


「ゆっくり手をあげるんだ!」


「おい! そこの女!」


「あなたは?」


「要するにパラシュートで落下しろと?」


「そう、我々はダイエットをするのだ」



 ローバードは飛行船に乗っていた。それを見ていた盗賊たちが言い争っていた。


「ひとりで戦うつもりだ。舐めやがって」

 

 痩せた男が飛行船をにらみ付けながら言った。その言葉にイラつきを見せながら背の高い男が地図を持ち訴えた。


「奴は南に向かってます」

「じゃあ、お前は東へ回れ。俺は北へ行く」

「水中から襲えば楽勝ですが」

「野良猫じゃあるまいし、そんなことできるか!」

「水中からならスズメの巣を突ける!」

「俺たちはプロだ、なにがなんでも視力検査で戦うんだ!」


 すると背の高い男が首を振って答えた。


「あんたどうかしている」


 それから去っていった。その背中を見ながら痩せた男は言った。


「くれぐれも3時のおやつを忘れるな」


 そうして近くに停めてあった気球にふたりは乗り込んだ。


 ローバードは乱気流に操縦かん奪われながらコーヒーを飲んでいた。するとライアの無線が響いた。


「ローバード、ライアです」

「どうした?」

「見知らぬ飛行体がそちらに向かっています」

「そうか、今着陸する」


 そう言って素早くいくつかのチョコレートをつかんで降下した。飛行船は真下に着陸すると、ネギ畑に置いてあったウサギの置物に小指をぶつけた。


 ローバードは苦しみながらクロールでその場から離れた。その振動で土の中に閉じ込められていた宇宙服を着た男が、近くにいた浴衣男に助けられた。


やぶの中からコントローラを持ってこい!」


 宇宙服の男は唐突に怒鳴った。すると戸惑いながら浴衣男は尋ねた。


「いつのコントローラですか?」

「何でもいいっ! コントローラを持ってこい!」


 浴衣男は急いで藪に向かって走り出し、ゲームのコントローラを持ってきて渡した。


「あの野郎、ふざけた真似しやがって。一匹残らず消臭してやる!」


 ローバードは近くにあった透明な壁に身を隠しながら望遠鏡で地面に生える草を眺めていた。そこにライアからの無線が入った。


「ローバード」

「ああ」

「そこから2ブロック先にヒツジの集会があります。その先にプリンを食べながら歩いている男がいるので追ってください」

「わかった」


 そう言ってローラースケートに靴を履き替えると歩き出した。


 コンビニの街灯を横目に見ながらヒツジの集会場を駆け抜ける。それから水族館にプリンを食べながら男が入って行くのをローバードは確認した。


「おーーい!」と叫ぶ声がローバードの背後から聞こえてきた。それは宇宙服を着た男がコントローラを持ちながら正座をしている姿だった。彼はにらみつけると続けた。


「廊下の雑巾がけじゃねーんだよ」


 ローバードはタバコを吸いながらその男に尋ねた。


「どうしたよ、お昼休憩か?」

「ああ」

「俺はまた安心したぜ、お前が海底6592メートルでたい焼き食っているんじゃねーかって思ってよ」

「ローバードさん。あんたが優しいんだよ。いつもご飯をよそって俺に与えやがって」

「お前もよそり始めたんだろ。このアスファルトの上で」

「ローバードさん!」

「塩と砂糖どっちが上手いかって聞いているんだろが。この王様やろう!」

「ローバードさーん!」


 そう言いながら、宇宙服の男はコントローラのボタンを連射した。


 ローバードは素早くストローを吹いてシャボン玉を作ると横に飛び、射的の景品に水風船を投げつけてその景品を落とした。


 そのまま走り出して水族館に入った。


 ローバードは壁から顔だけを出してライアを無線で呼んだ。


「はい、ライア」

「俺だ。水族館に入った。だれか援護できる奴を呼べ」

「わかりました。近くにストゥーピーがいますのでローバードと合流するように伝えます」

「たのむ」


 それから階段を上がり廊下を進むとエアロビクスをしている男たちに出くわした。部屋の中から怒鳴るような声が廊下のほうへ響いてきた。


「エアロビクスとはなんだ!」


 その大きな声に対して、きびきびした声が続いた。


「はい!」

「よおし、ビッザ言ってみろ!」

「足の裏に刺さったとげを抜かずに歩くことです!」

「そうだ! わかったか!」


 先生が怒鳴ると全員が合唱するように言った。


「はい、先生!」


 ローバードはテニスのネットに身を隠しながら部屋の中をのぞいた。お腹の出ている巨漢の男がエアロビクスの指示を出している。すると無線が入った。


「ああ」

「ローバード、私です。今到着しました」

「ストゥーピーか。よし、屋上に上がって待機をしろ。それからホースで水をまきながら、人生ゲームで使うルーレットを置いといてくれ」

「了解」


 ローバードは銃を構えると近くに置いてあった鈴を手に取った。そして部屋の中に入った。


「手を上げるだ」


 そう言って、男たちに銃口を向けながら鈴を鳴らした。


 エアロビクスをやめた彼らはゆっくりと手を上げた。すると先生と呼ばれている男が恐る恐る聞いてきた。


「どちら様でございますか」

「今朝、この部屋にある冷蔵庫に牛乳が入っているという通報があった」


 ローバードが花壇を調べているとロッカーの所からガタッと音がした。何者かが飛び出てきて走って逃げていった。

 

「待て!」


 ローバードは追いかけながら無線に言った。


「犯人を見つけた! いちごヨーグルトを食べながら逃走中。繰り返す、いちごヨーグルトを食べながら逃走中!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ローバード・デュウニュウアーリー おんぷがねと @ompuganeto

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ