第6話 オカピ

前回までのローバード・デュウニュウアーリーは。


「時間がない、どけぇ!」


「すみません、バレました」


「やめろ! 俺がやって来た2分50秒をムダにする気か!」


「おい、そこのパーティー男、俺を援護しろ!」


「……できるだけ長く頼む」



 勢いよく自動ドアを開けると、中にチェーンソーで木を切っている細身の男と車を運転しているパンク女。白いお化けの格好をした女がそれぞれの筐体きょうたいで遊んでいた。


「ゆっくり手をあげるんだ!」


 そう言いながら銃を向けると細身の男はチェーンソーを地面に置いて手をあげた。お化けの格好をした女は手をあげてふらふらしている。


 バンク女だけはまだ筐体で遊んでいた。

 ローバードはその方向に銃を向けながら呼んだ。


「おい! そこの女!」


 パンク女はカチャカチャと格闘ゲームで肩を動かしている。


 ローバードはパンク女のところまで行こうとして、近くに飾ってあったスケートボードを取り、そいつをボーリングのように走らせた。


 スケートボードがパンク女の足に当たるとギロリと振り向いた。そのままにらみつけると、ツカツカとヒールを鳴らしながら歩いて来た。


「なんだよ、おっさん」


 ローバードは銃をパンク女のあごに狙いを定めながら言った。


「あそこのドアに早く入るんだ」


 指をそのドアに向けながら、ほかの者にも目で合図を送る。


 3人はドアを開けて向こうの部屋に入って行く。


「おい! パンク女は止まれ!」


 パンク女は手をあげずにローバードをにらみつけた。そのあと胸ポケットからガムを取り出してくちゃくちゃと食べ始めた。


 それを見たローバードは銃をしまうとパンク女に聞いた。


「あなたは?」


 ローバードの問いかけににんまりするとパンク女は近くのベンチに座った。それから誘う様に手招いた。


「座って」


 辺りの様子をうかがいながらローバードは言われるがままベンチに腰を下ろした。


「あなたがここに来るのはわかっていたわ」

「どうしてわかった?」

「今朝、洗濯機に電源を入れて、終わったら洗濯物を干していたわね」


 ローバードはタバコを吸いながら渋い顔で黙っていた。ひとつ微笑むとパンク女は続けた。


「何でもわかるわ」

「じゃあ、俺が今からすることもわかるのか?」


「いいえ、わたしは未来を予言できるわけではないの。そうやって質問すると、わたしが誰かというところに戻ってくる」


「戻ってくるだと?」


「ええ、あなたはベランダに置いてあるミニトマトを一粒上空へ投げたら、枕が降って来たわね」


 そう言ってパンク女はまたガムを咬み始めた。


「食べる? わたし、このガムを食べないと砂時計の時間が動かないのよ」

「なぜ、彼らは俺を狙っているんだ?」

「それはイチゴジャムとピーナッツジャム、どっちがいいかってことよ」

「要するにパラシュートで落下しろと?」

「選択するのはあなたよ」

「彼らはいったい何者だ?」

「ビーチバレーをときどき楽しんでいる者かしら」


 パンク女は椅子から立ち上がるとローバードに言った。


「時間があったらまた会いましょう」


 そうしてゲーセンを出て行った。


 ポンッポンッと白いボールが弾みながらローバードの前を横切った。


 銃を構えながらローバードは席を立った。


「これはこれはローバード君」


 旅人の服を着た男が水差しを持ってそれをコップに注ぎながら歩いて来た。


 男はそのコップの水を自分の履いている革靴にかけた。


「私は考えたのだ。お前をここで葬ればそこに寝そべっているネコの目を覚ますことができると」


 ジッポーライターでタバコに火を点けながらローバードは彼の言葉を聞いた。


「私はお前がいたからここに来たのだ。私が呼ばれたんじゃない、お前が呼ばれたんだ」


「お前は俺がやっつけたはずだが……なるほど、ネコに猫じゃらしをして朝ごはんを用意してやるのか」


「確かにわたしは一度やられた。だが、おかげで玉焼きを黒焦げにすることができるようになった」

「おめでとう」

「ありがとう」

「それで俺を斜めにしか見えない町並みに置く気か」

「操作するのは我々のほうだ」


 するとほかの旅人の服を着た男が別のドアから次々と現れた。


「我々は砂糖を食べる」

「我々は食塩水を試験官に注ぐ」


 男たちはローバードを囲った。


「そう、我々はダイエットをするのだ」


 そのときローバードの携帯電話が鳴った。


 彼は携帯を取り出してそれに出ようとした。が、男たちが一斉にケーキのロウソクに火を点け始めた。


 ローバードは走り出して階段を上がって行った。


 それから飛行船に飛び乗ると操縦をし始める。


 飛行船は浮いてすごい勢いで自動ドアを通り抜けた。そのまま赤信号を止まり、次の青信号を左に曲がった。


 ローバードは鳴り続けている携帯電話に出た。


「俺だ」

「ローバード、衛星を乗っ取りました」

「そうか、今からおもちゃのアヒルを泳がせるからそいつを追ってくれ。色は透明だ」

「了解」

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