あとがき

あとがき(1) みかん

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 昭和の短冊物語、いかがでしたでしょうか。

 奇数章担当のみかんです。


 この小説は、ゆうきさん(※原文ママ。天上のことです)と交互に書いたリレー小説となっています。その誕生秘話を少しだけお話したいと思います。


 きっかけは、ある小説指南本でした。

 その本にはたくさんの実践課題があり、リレー小説もその一つだったのです。

 二人とも同じ本を読んでいたので、六月中旬のある日、私は思い切ってゆうきさんを誘ってみました。女子中学生が友達に、一緒にトイレに行こう、と誘うような気分でした。

 断られるかな、と思ったのですが、ゆうきさんは快諾してくれました。

 それから、いくつかテーマの候補を挙げ、書く順番のくじとともに、ゆうきさんに引いてもらいました。

 結果は、「七夕」と「最後」。

 つまり、私が最初に書くことになってしまったのでした。


 七夕というと、安直にも織姫と彦星がすぐに思い浮かび、「リアル織姫と彦星」という設定にしようと考えました。

 でも、携帯やインターネットなどのコミュニケーションツールが発達した現代ではこの設定は生かせないと思い、物語の舞台を昭和三十年代にしてみたのです。

 そして、一章の最後で清彦を少しだけ出して、ゆうきさんにバトンを渡しました。

 すると、ゆうきさんは、実家が牧場の清彦、という素晴らしい設定を考えてくれました。

 それからどんどん、バトンの受け渡しのたびに物語が回り出しました。

 ゆうきさんが次はどんな展開を書いてくれるのだろうか、と毎回とても楽しみでした。

 この小説で三作目という、超ヒヨッコの私をゆうきさんは毎章、巧みな筆致と展開で引っ張ってくれました。


 ところで、小説を書き終えて推敲段階に入っていた日、世紀の天体ショー・皆既日食が見られました。

 綾子と清彦の若き日は実は、昭和三十八年と設定していたので、この年が前回の皆既日食の年と知り、この偶然の一致にわくわくしました!


 そして、この小説の時代考証のためにいろいろ調べていくうちに、私は昭和三十年代が大好きになっていました。あさみと同じように、行ってみたいと思うようになっていたのです。

 戦争の傷から少しずつ立ち直って、明るい未来を目指して、人間も社会全体も前を向いてどんどん進んでいた、高度経済成長の時代。

 もちろん、良いことばかりではなく、その影には公害や労働災害など悲惨なこともたくさんあったと想像します。

 でも、そこには、人々の温かさ、優しさ、まごころ、純粋さ、ほがらかな笑いといった古きよき日本の姿があったのでしょう。


 そんな雰囲気を少しでも感じていただけたら、幸いです。



2009年7月25日  みかん

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