第3話 清彦の手紙

 綾子さんへ


 前略、お手紙ありがとうございました。

 仙台は先日入梅したばかりで、毎日雨が降り続いています。たまに止んだかとおもうと、薄暗い梅雨空でチェルシーはご機嫌斜めです。


 風邪はもう大丈夫ですか。

 知恵熱を出すほど、職人の世界は厳しいものなのですね。

 見様見真似で覚えるなんて、大学受験時代、教科書と参考書で暗記ばかりしていた自分には、とても想像がつきません。

 でも、職人の世界へ自ら飛び込んで行ったやる気あふれるきみだから、いつかきっとできるようになるはずだと僕は信じています。

 君が女性だからというわけではありませんが、それでもやはり遠い街の職人の世界に飛び込むなんて、僕にはできないことですから素晴らしいと思います。

 どうか、頑張ってください。


 大学生活は思いのほか自由です。

 しかし、熱心に研究している学生が多く、自分も早く研究テーマを見つけたいと思っています。

 岩手出身の友人ができたのですが、彼は毎日学食でカレーばかり食べている変な男です。


 七夕祭りに誘ってくれて、ありがとう。

 僕もできれば綾子さんに会いたいと思っています。

 牧場のことで話したいことがあるのです。

 君のおかげで、活路が見えてきました。詳しくはその時、話します。


 梅雨時は冷えるので、ご自愛ください。


 草々

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