第5話 清彦の身の丈
「二日町~。二日町~」
いつの間にか電車は乗り換えの駅に到着していた。
感傷にふけっていた清彦は慌てて電車を降りた。
あの時の綾子の笑顔が、忘れられない。
今までで一番綺麗で、強かった。
きっと、今彼女は夢に向かって一心不乱に努力していることだろう。揺るぎない気持ちを持って。
それに比べて、俺は……。
清彦は気持ちを切り替えるように大きく首を回した。骨の鳴る音がした。
あの頃の自分の甘さが身に沁みるようだ。
結局、東京に出なくてよかったのかもしれない。
中途半端な気持ちで東京に行っても、主体性の無い自分のことだ、飲み込まれてしまうに決まっている。
大人しく、親父の言う通りにこっちの大学へ進学して、将来の牧場経営に備えて農業を学ぶ。
それがきっと、身の丈に合った道なのだ。
清彦はゆるやかな足取りで歩き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます