第二部

第一章 それは運命だから

第1話 新たな生活


 多田ユウ。


 過去に重度の中二病を患い、その時に流行ったアニメや漫画、ゲームの影響を多大に受けて前世の記憶を捏造した過去を持つ。かなり詳細に作られた物語は文字数にすると百万文字を超える大作長編小説ではあるが、残念ながらスピンオフとして作者にそれ執筆をする元気はない。それを書き上げるには情熱と若さが必要不可欠だからだ。作者は残念ながら枯れている。


 すっかり忘れている皆さんのために、枯れてはいるが親切な作者がこれまでのあらすじを解説しよう!


 現在地球は、ようバグという巨大な虫型モンスターの襲撃に合っている。これは本来なら地球は虫の惑星となる予定だったのに、何故だか人間が蔓延はびこってしまい計画通りではない結果になっている事に起因する。宇宙を管理する評議会はそれを是としたが、いかなる手段をもっても予定通りに進めるべきであるという層が存在した。それが秘密結社「屍の惑星」。


 結社は地球の生物に手を加え、本来ならこのように進化したであろう姿を作り上げると、それをもって人類の作り上げた環境の破壊をはじめ、最終的には人間を滅ぼして虫の惑星を作ろうとしているのだ。

 そのような事は許されざるとして立ち上がったのが、評議会メンバーの精鋭たちである。彼らはバディマスコットと呼ばれる地球人に愛される生き物を模した合成生物体に精神を移し、”地球の事は地球に住まう者の手で護るべし”をスローガンとして、結社に立ち向かう勇者を集めた。

 それがマジカルヒーローズである!


 レッド、ブラック、イエロー、ブルーの四名で構成され、彼らはそれぞれの役割を持って、妖バグから地球を守り、結社を壊滅させる事となったのだ。


 改めて、主人公である多田ユウだが。その名は漢字で”夢が有る”と書く。


 数奇な出会いと運命の導きを経て、マジカルヒーロー・ブラックとなった彼は今、トランクス、ブリーフ、ビキニパンツ、ボクサーパンツを干している所だ。

 なぜ四種類あるかというと、それぞれ愛用の下着が違ったからである。共同生活を営むにあたって、下着類を間違えないというのは大変ありがたいと言えなくもないが、誰がどれを装備しているかは想像にお任せしたい。もしヒーローズが六人編成だったら、これにTバックとふんどしが追加されていたのかもしれないが、現状は四人である。刺激の強いラインナップを避ける事が出来て幸いである。


 なお作者が「男性 下着」で検索したところ、「トランクス、ブリーフ、ボクサーパンツ、Tバック(ふんどし含む)」という分類が出て来て思わず考える人のポーズになってしまった事を付け加えておく。

 ついでに言うとどれも注釈として男性機能の低下について触れられており、デリケートな宝物感に再び考える人のポーズになった。締め付けてもダメ、解放してもダメらしい……。


 作者がそんなマメ知識を披露している間に、ユウは洗濯物を干し終えて大きくため息をついた。

 

 色々あって、マジカルヒーローズは現在四人が揃って同じマンションで共同生活を営んでいる。マジカルヒーロー・ブルーこと笹山地球テラの生家は代々医者の家系で、大変な富豪である。当然のごとく一人暮らしをはじめる息子のために部屋数の多い高級マンションを買い与えた。一人暮らし用としては広すぎる4LDK。寝室以外は当たり前に持て余し、空き部屋のまま放置するか倉庫のごとくの扱い。

 そして生来の無精さと怠惰な性格から家事全般は放置気味で、週に一度業者を入れていたのだが、彼の性格的に毎回違う赤の他人が家を出入りする事に耐えかねていた。そこに転機が訪れる。


 マジカルヒーロー達は本業を優先しなければならない縛りがあり、学生であったり働いていたりでなかなか合流がままならない。それならいっそのこと全員がこの家に集まって暮らしてみてはどうかという話になったのだ。

 笹山としては好みの男子である多田ユウ一人でも良かったが、残念ながら肝心の本人が断固として二人きりの生活を拒否したため、全員で、となった。


 レッドこと大江烈人おおえれつとの家は驚きの五人兄弟で、長男の彼が家を出てくれると部屋が空くという事で諸手を挙げての賛成だったし、イエローことジョン・スミスは元々一人暮らしであったし、先日経営するレストランの車を大破させてしまって金銭的に大変らしく、家賃が浮くという事で喜んで賛成した。


 ユウは母と二人暮しだったから無理だと考えていたが。


「なあ母さん、友達にルームシェアを誘われたんだけど、母さんを置いていけないし断わっていいよね」

「あらまぁいい話じゃない! お父さんの転勤が決まった時、ユウに転校させるのも可哀相だし、一人暮らしをさせるのは心配だからという理由でお母さんも残ったのよ」

「え!? そうだったの?」

「お友達と暮らすなら安心だわ。でもどういうお友達なの?」


 どういう友人かと問われて口ごもるユウを見て、ポイラッテが口をはさんだ。


「あちこちに大病院を持ってるお家の一人息子の大学生で、爽やかでとってもいい人なんだよ。ユウに勉強も教えてくれるらしい」

「まぁ……すごい人と知り合いなのね」


 ほう、と母は溜息をつく。ユウとしてはどちらかというと止めて欲しいのだが、とんとんと話は進んでしまい、母は嬉々として父の元に引っ越して行った。

 転校は目立つからしたくないし、妖バグの事を考えるとできれば避けたい。父と母はラブラブで離れて暮らすのがとても辛そうだったから、母が自分のために我慢してくれていたことに申し訳ない気持ちもあり、ユウは笹山達との同居生活を決意したという経緯である。


 食費・光熱費・家賃なしという魅惑の要素の交換条件として、烈人れつとは買い出しや自治会の活動、ジョンは料理、ユウは掃除と洗濯の担当となったのだ。


 明日も四種類のパンツを干す。それが彼の新生活だ。


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