第18話 魔物との戦闘
ダンジョンの攻略を開始した俺たちは、魔物との戦闘の打ち合わせをしていた。
「とりあえず、俺が魔物と戦ってみるか。」
「僕も最初は援護するよ。魔法なら遠距離からリスクなしで攻撃できるから。」
「よし。それでいこう。克人は何か質問あるか?」
「いやないぞ。邪魔にならないようにするから、後で俺にも戦わせてくれよ。」
余程守られているだけの状況が嫌らしい。
まぁ、気持ちが分からんでもない。自分と同じ年齢の奴にただ守られるのは、自分が情けなくなるよな。
「OK。分かったよ。」
「それじゃあ。気を引き締めていこう。」
その後、俺たちは魔物の不意打ちを警戒しながら魔物を探していた。すると前方に鶏の形をした魔物、魔鶏がいた。俺は敵に気付かれないように声に出さず、そのことを優希にハンドサインで伝えた。そして優希が先制攻撃して、俺がその後突っ込むと言うことになった。
ハンドサインで合図を送り、戦闘を開始した。
まず、優希が風属性の魔法を使い先制攻撃を仕掛けた。
「いくよ!」
魔鶏に風の刃が飛んで行く。地面の草が大きく揺れる。魔鶏も音で魔法の存在に気が付いたがもう遅い。すでに魔法は、かわすことができない距離まできていた。
俺は魔鶏に魔法が当たるのを確認する前に木の裏から飛び出した。
相手に反撃の隙を与えずに倒すために。
魔法を受けたことで魔鶏は羽から血が出ている。俺は気にせずに、魔法をかわそうとして体制を崩した魔鶏の首めがけてナイフを振った。ナイフはきれいに魔鶏の首をとらえた。
さらに追撃しようとナイフを突き刺そうとしたが、その前に魔鶏は光を放って消えた。そして、運が良いことに肉をドロップしたようだった。
「良かった。無事、倒せたな。」
俺は、初めてのダンジョン探索から戦闘スタイルを変えた。相手の攻撃を避けることを優先して反撃するスタイルから、相手に何もさせずに攻撃する今のスタイルに変えた。
ダンジョンを探索する上で、魔物に遭遇するたびに回避していたらすぐに体力がなくなってしまうというじいちゃんのアドバイスにもらった結果だ。
盾を持つことも考えたが自分のスタイルに合わないと思ってやめた。それで今の戦闘スタイルに変更した。いつまでも相手の攻撃を見てからかわせるとは限らないし、良い機会だったのだろう。スキル適応の効果もあってか、俺はすぐに今のスタイルに慣れた。
「お疲れ様、真一。問題なく魔物を倒せたようで安心したよ。」
「そうだな。それに肉がドロップすることが確認できた。」
「2人とも凄かったな!特に優希君の魔法には、驚かされたぞ。真一も素早い動きだったな。私も早く戦いたいぞ。」
「OK、次の魔物と戦ってみるか?でも、俺たちも手伝うからな。」
「いいぜ!むしろ援護よろしく頼むわ。」
どうやら克人は一人で戦いたいわけではないようだ。どちらかでいうと役に立ちたいという意思の方が強そうだ。
俺は、優希に収納魔法内にある使っていない盾と片手剣を渡してもらった。克人に使い心地を確認してもらう。
彼は盾や剣を振って動きを確かめている。
「準備はいいぜ。」
「よし、行くぞ。」
しばらく歩いていると、俺たちは魔猪に遭遇した。魔猪は、猪が魔物になったような姿をしており、野生の動物より強く恐怖心を持たないことが特徴である。
まずは、克人に任せて危なくなったら援護することにした。
彼は、魔猪の攻撃を盾で真正面から受け止めると剣で首を斬りつけた。まだ倒しきれていないが、さらに何度か剣で追撃すると光となって消えた。どうやら毛皮がドロップしたようだ。優希にしまってもらう。
「お疲れ様!」
「ナイスだったぜ!」
俺たちが声をかけると、彼は軽く深呼吸を繰り返している。
「おう。ありがとうな。」
「たぶん、レベルが上がったはずだよ。」
「確認しようぜ!ステータスを見たいと思えば開くぜ。」
「あぁ。これがステータスか。」
俺たちも彼のステータスを見せてもらった。
--------------
個体名 源田 克人
種族 人
年齢 15歳
性別 男
職業 学生
レベル 1
状態 正常
HP 130/130
MP 10/10
スキル 不動
盾
称号 不動なる者
--------------
ずいぶん物理に偏っているな。
脳筋みたいな見た目、通りのステータスである。
「これって強いのか?」
「いや、最初のステータスはほとんど変わらない。強いて言うなら、物理と魔法のどちらに偏っているかくらいだな。」
「それよりも称号が気になるね。」
「称号を見ようとしてみてくれ。」
「おっ、おう。」
--------------
称号
【不動なる者】
ダンジョンで初めて魔物を一歩も動かずに倒した者に与えられる。
※魔法の使用は不可。
効果として称号所有者にスキル「不動」が与えられる
--------------
盾を使う者なら誰もが欲しがる称号だな。
効果はまだ分からないが、スキルも強力であろう。
「魔法がダメだと盾専門だな。」
「これは良さそうな称号だね。」
「守れる力が得られたなら、それで良い。」
「そう。それじゃあ、どんどん魔物を狩るよ。」
「OK!」
「了解!」
俺たちは、どんどん魔物と戦っていった。
さまざまな動物が魔物化したものと戦うことになった。優希が先制攻撃して、克人が抑えて、真一が攻撃する。このパターンが上手くいき順調に討伐していった。
しばらくすると開けた場所に出た。
俺たちは、このダンジョンに入る前のこともあったので、罠を警戒していた。
よく見るとそこには、看板が立っていた。
その文字を見ると、こう書かれていた。
ーーーーーーーーーーーー
エリア名:安全地帯
ここはダンジョン攻略を手助けするための場所です。
この場所には、ダンジョンの魔物も罠も存在しません。
また、外から魔物が入ってくることもありません。
管理者によって安全が保障されています。
自由に利用していただいて構いません。
ただし使用制限はありませんが、場所は有限ですので気を付けてお使いください。
ーーーーーーーーーーーー
「どう思う?」
「本当なんじゃない?」
「俺には分からん!」
みんな、この看板に書かれていることが本当なのか疑問があるようだ。これが罠ではない可能性はゼロではない。
「僕たち以外がこのダンジョンに入ったとは思えない。さらに、ダンジョンの罠である可能性も低いと思うよ。」
「なんで?」
「管理者は、ダンジョンを攻略して欲しいのにそれを妨害してくるとは思えない。」
確かにそうだ。攻略させたいのに妨害をする意味がない。
「一応、警戒して入るぞ。」
俺の声に続いて2人も広場に入る。
何か起きるかと思ったが、何もなかった。
「驚くほど何ともないな。」
「そうだな。」
「大丈夫じゃないか。」
安全を確認した俺たちは、そこで休憩することにした。そろそろ日が傾き、空が暗くなる時間帯である。
「丁度良いな。今日はここで寝ようか。」
「良いよ。それじゃあ、焚き木集めてくるね。」
「優希、俺も手伝うぜ!」
優希と克人は、安全地帯の外に出ていった。
俺はその間、安全地帯の中に何か仕掛けがないか探っていた。すると、広場の中央に小さな窪みがあることを見つけた。
「なんだろう?」
あの窪みに、はまりそうな物を持っていない。
2人が帰ってきたときにでも相談しよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます