第17話 突然のダンジョン攻略
俺たちは、見たことのない森の中に立っていた。さっきまでいた森に比べて不自然なほどに整備されていた。地面はでこぼこしておらず、木の間隔も近過ぎず、遠過ぎずといった感じだ。
「おい!どこだここは?」
「克人、落ち着いて。たぶん、ダンジョンだよ。」
「ダンジョンってあのダンジョンか?」
「おそらく、あの木がダンジョンに繋がっているんだ。」
「真一、今そんなことより不味いことになったよ。」
「なんだよ?」
「帰り道がなくなった。」
「えっ?」
「おそらく、ここはインスタントダンジョンの中だ。」
インスタントダンジョン。
確か、山田さんにダンジョンについて聞いたときに教えてもらったことがある。そのダンジョンは貴重なアイテムを獲られるかわりに、1度しか攻略できない。通常、ダンジョンは攻略されても問題ないが、インスタントダンジョンは攻略されるとダンジョンが崩壊する。
そして最も重要なことは、そのダンジョンは攻略するまで外に出ることが出来ないことである。
「ってことは、攻略するしかここを出る方法がないってことか。」
「そうなるね。」
「おっ、おい!2人ともそれってどういうことだ!?」
「ここがダンジョンであることは伝えたな。本来ダンジョンは入り口から簡単に出入り出来るんだ。だけど、このインスタントダンジョンだけは違うんだ。ダンジョンを最後まで攻略しないと出ることができない。つまり、俺たちが外に出るにはダンジョンを攻略しないといけない。」
俺の出ることができないという発言を聞いて克人は動揺しているようだ。当然だろう。俺たちのようにダンジョンに慣れている人でも動揺しているのだから。
「さらにいうと、助けは期待できないだろうな。」
「どうして!?」
「ここに来た状況を思い出して欲しい。このダンジョンに入るには、おそらくあの木に触る必要があると思う。」
「それに気が付く人がいるとは思えないな。」
動揺する克人に俺と優希が説明した。
「それにしては、真一と優希は落ち着いてるな。」
「まぁ、これでも俺たちはダンジョンによく潜っているからな。」
「その経験がこんなところで役に立つとはね。」
「どうしてダンジョンに入ったことがあるんだ?」
「その説明は後にしてくれ。」
「このインスタントダンジョンは初級だと思うから、そこまで難易度は高くないと思うけどね。そう簡単には、いかないと思うよ。」
俺たちは進まなければならない。このダンジョンを出るためにはその方法しかないのだから。
そのためにもまずは、持ち物の確認だな。
「優希は、何か持ってるか。」
「武器は、大丈夫だよ。杖も魔本も防具も収納魔法の中に入ってる。君のもね。」
「俺が持っているのはナイフ1本だけだ。」
「でも1番の問題は食料だね。水は魔法でどうにかできるけど、食料はどうにかできないからね。」
「優希って、魔法が使えるのか!?」
「克人も魔物を倒してステータスを手に入れたら、僕や真一のように魔法を使えるようになるかもしれないね。」
「今はそんなことより、食料だ。長期戦になればなるほど俺たちには不利になる。克人は何か役に立ちそうなもの持ってないか?」
「俺か?俺は料理した時に付けてた腰の鞄に入っている調味料くらいだな。」
「それってカレールーか?」
「いや、俺が料理に使う調味料が少量ずつあるぜ。最悪だけかが材料忘れても即興で何か作れるようにな。」
「克人、それはナイスだぜ。」
「それは、ありがたいね。これからの食事が味なしは辛いからね。」
とはいえ、状況はかなり悪いな。とりあえず、生活魔法で飲み水は確保できるから良いとして、食料は魔物のドロップに期待するしかないな。庭のダンジョンでは、食料を確保することができなかった。このダンジョンはどうだろうか。食料が取れると良いのだけど。
「真一、まずは魔物を倒して何を落とすか確認しよう。それが食料だったら最悪何日かけてたとしてもダンジョンを出ることができる。」
「そうだな。ひとまず、俺が戦ってみるよ。魔法使いの優希が魔力を消費しすぎたら一大事だ。克人の護衛は任せた。」
「分かったよ。」
「済まない。一ついいか?もし、ダンジョンの魔物が俺でも倒せるようなら俺に戦わせて欲しい。守られるばかりは嫌なんだ。」
克人は、真剣な目をして俺たちに言ってきた。なんとなく、こうなるのではないかと考えていた。
「まずは、魔物と戦ってからになるがそれでいいか?」
「構わない。」
俺たちは、行動する前にダンジョンについて調べることにした。
ふと辺りを見渡すと足元に石板が落ちていた。
拾ってみると何か書かれている。
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ダンジョン名:青木山キャンプ場の特殊ダンジョン
タイプ :自然型インスタントダンジョン
レベル :初級
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ダンジョンのレベルは予想通り、初級であるようだ。そのことだけが唯一の救いである。こんな序盤に特殊ダンジョンが出てきたらダメだろう、管理者さん!!
説明すると自然型ダンジョンとは、周囲の環境の影響を受けて変化するダンジョンのことである。このダンジョンは森の中にあったため、このようにダンジョンの中にも木々が生えて森ができていた。さらに中の明るさは、外の明るさとリンクしていて外が夜になれば中も暗くなるのだそうだ。
しかし、俺たちはその程度のことは問題ない。俺たちが1番心配しているのは、このダンジョンのボスがこの森を徘・徊・し・て・い・る・ことにある。
通常、ダンジョン奥の部屋にボスが待っているわけだが、自然型のダンジョンには部屋が存在しない。しいて言うならこのダンジョン全体が部屋である。そのため、ボスといつ遭遇するか分からない。
向こうの世界でも、初級冒険者が1番嫌うタイプのダンジョンだそうだ。なぜ、新人だけかというとこのダンジョンはなんと魔物がよく食料を落とすことが知られているからだ。つまり、ボスさえ倒せるのなら、稼げるダンジョンとして有名なのだそうだ。
俺たちは、克人にこのダンジョンではボスが徘徊していることを説明した。このダンジョンが俺たちにとって厳しい環境だ。空気が重くなり、静かな時間が過ぎた。
その空気を掻き消すように俺は話し出した。
「まぁ。今はボスと遭遇しないように生き残ることを優先しようぜ。」
「そうだね。まず今日やることは魔物の強さの確認と、長期戦に備えて寝床と食料の確保、最後にできればボスの種族と場所を知りたいね。」
「順番にやっていこうぜ。俺もできることはお手伝うぜ。」
さあ、本格的なダンジョン攻略の始まりだ。
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